16話

 授業の内容が頭に入ってこない。

 

 週明け、学校に行きたくなくて、ズル休みをした。

 いつまでも休んでいるわけにはいかないから、木曜日、つまり今日、仕方なく登校したけど、ずっとこんな調子だ。このままじゃダメだと思っていても、気持ちを切り替えるというのは中々に難しい。


 後悔、諦め、罪悪感、憤り。そんな感情が頭の中をぐるぐるしていた。


「詩音、まだ帰んないの?」


 クラスメイトの声にハッとする。いつの間にか授業が終わり、放課後になっていた。

 

 帰りの支度を整えてからクラスメイトに別れを告げた後、とぼとぼと廊下を歩き、運動部の掛け声が響くグラウンドを経由し、校門へと向かう。


「ダメだなぁ。わたし」


 視界がじんわりと滲んできたから、慌てて目元を拭う。

 辛い。苦しい。誰か、助けて。


「今日の天気予報、晴れって言ってたんだけどな」


 校門を出てしばらく経ってから、唐突にそんな声が聞こえてくる。天気予報?わたしは涙を拭きながら、空を見上げる。雲一つない、これでもかというほど晴れ渡った空が目に映る。


 なんだ、天気予報当たってるじゃないか。

 そんなことを思いながら声がする方を見ると、そこにいるはずのない彼女の姿が目に映る。その姿を認識した途端、堪えようとしていた涙が一気に溢れ出してくる。


「今は何も聞かないからさ、とりあえず泣くのやめてよ。私が泣かせたと思われるじゃん」

「......星野さんの所為だよ?」

「なんで!?私、何かした!?」


 さっきまでの落ち着いた様子とは打って変わって、急にわたわたし始めた姿を見て。

 ああ、この子は本当に——


「冗談だよ。迎えにきてくれてありがとう。もうちょっとしたら落ち着くと思うから、わたしの話、聞いてくれる?」

「もちろん。そのためにここまで来たんだよ」


 星乃さんはそういうと、少し恥ずかしそうにしながら、こちらに手を差し出してくる。わたしが恐る恐るその手を取ると、ぎゅっと握り返してくれた。


 あったかいな。


 そのまま星乃さんに手を引かれて、近くのカフェへと向かったのだった。

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