幕間STAGE2
第8話 STAR★FIELD☆GIRL☆2nd
STAR★FIELD☆GIRL。
それは神話!
STAR★FIELD☆GIRL。
それはアイドルの中のアイドルたちが集う、伝説のグループ!
通称、スタ
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
今もなお新たな伝説を築き上げているトップアイドルたち、メンバーのほとんどが俺のストーカーであることを除けば、まさに神話である。
俺は今、猛ダッシュしていた。
暑さなんて関係ない。
ユマとのデートを
れおなの彼氏『役』をするにも休息が必要なのだ。
最近は同士たちも冷たく、学校もなんだか暗黒大陸に思えてくる。
更にはアリスの一件。
それもあってか、俺は癒しを求めていた。
ユマというオアシスを。
なのに、休日の大都会は砂漠です!!!!
果てしない荒野のように思えます。
白昼堂々、黒塗りの車に追跡されたら、気分もブルーになるでしょうよ。
中華マフィアのような黒服サングラスの男たちに、俺は追いかけられていた。
いや、一人はもう、めちゃくちゃ恐い女の人。
こんなにわかりやすい追跡があってたまるか、クソ。
ふぉう、ふぉう、ふぉう、ふぉう!
サイレンのごとく叫びたくなってくる。
ああ、クソクソクソ。
俺のセンサーが強化されすぎたせいで今や半径十メートルは余裕で嗅ぎ分けられる。ビルのビルのビルのビルのビルの隙間にちょろっと映った、車を流し目で視認するだけで、それが追跡者かどうかわかる。
俺は今、猛ダッシュしていた。
もう、なりふり構っていられない。
ユマとの待ち合わせ場所に向かうため、追跡者を振りほどくために、あらかじめシミュレートしていた逃走用ルートをひた走る。
麗麗のやつ、俺にいったいなんの恨みが……!!!!
また俺を攫う気か!
大都会のスクランブル交差点を突っ切る。
赤信号、青信号、赤信号、青信号。
車と人の群れが俺を押し流す。
俺はそれを逆流していくのだ。あえて、あえて、あえて!
っと、やつらを振り切る前に先にこっち――
ぎゅいんと方向を転換し、俺はビルとビルの狭い隙間へと飛び込んだ。
そこにいたのは、俺の妹とも呼べる双子の姉妹。
STAR★FIELD☆GIRLの
おどろいた様子で、エプロンドレスが揺れる。金髪に白のメッシュがノアと、銀髪に水色のメッシュが入ったミュウラに、俺は「めっ」と人差し指を立てた。
「お、お兄ちゃん」
「お、お兄さま」
「こーら、二人とも。言っただろ。遊ぶのは今度って。ちゃんと時間作るから、な? 俺をつけ回すのはやめなさい」
「でもお兄ちゃん、最近、ぜんぜん遊んでくれなくなったから」
とノアは口をすぼめて、抱き着いてくる。
俺はその頭を優しく撫でてやる。
すると、ミュウラも対抗するように俺の腰に抱きついてきた。
「申し訳ございません、お兄さま。ノアには後でよく言っておきますので」
「と言いつつ、ミュウラも……抱き着いて来てるよね」
この双子姉妹の甘えん坊っぷりは健在だ。二人は俺にぴったりくっついたまま、離れようとしない。まるでコアラみたい……
可愛いな、もう。でも、今はダメだ。
「じゃあ今週、俺とユマと一緒にお鍋をしようか。また肉団子作ってあげるから」
ノアとミュウラは、ぱあっと顔を輝かせた。
「で、俺ちょっと今、急いでて……その、頼みがあるんだけど、追跡者をまくの、協力してくれないか? 可愛い妹たちを危ない目には遭わせたくないが、ユマが待ってるんだ、俺を」
「かしこまりました。なにをすればよろしいでしょうか?」
「えへへ。お兄ちゃんのお願いならなんでも聞くよ。目には目を、アブナイことにはアブナイことを、だもんね」
「あはは……マオさん流だね。心強いよ。二人とも……。ノアとミュウラのアイドルパワーで人を一点に集めて欲しいんだ。俺はその群衆にまぎれて、追跡者から逃れる」
「承知いたしました。それのなにが危ないことなのかはわかりませんが」
「いやいや、二人がもみくちゃにされるかもしれないだろ。ファンに」
「お兄ちゃん、トップアイドルをなんだと思ってるの? ぶわーってやって、びゅーってやったら、みんな一定の距離をとってくれるよ。ノア、そういうの得意だし」
「ノアの言う通りです。わたしたちとファンの間には明確な距離があります。それをあえて踏み込んでくるような人はいません。アイドルとファンの間には、自然と境界線が引かれるものです」
「俺もスタ女のファンなんだけど……」
「お兄ちゃんは特別だよ」
「お兄さまはスペシャルです」
でへへ。可愛いな、もう。
「じゃあ頼んだ。ごめんな、無理言って。この埋め合わせはするから」
二人はこくりと頷くと、ひらけた大通りに歩み出る。
たったそれだけ。
俺をストーキングしている時の隠密モードから、アイドルモードに切り替わるだけで、どっと人の群れが押し寄せてくる。
「みゅ、ミュウラだ」
「ノアちゃん、生ノアちゃん、ぱねえ」
ノアとミュウラを一目見ようと押し掛けたファンたちによって、塊ができる。
これが、STAR★FIELD☆GIRL――一流を凌駕する超一流のアイドルだけが成せる業。
モーセの海割りのごとく道が開かれ、その真ん中を双子は手を振りながら、優雅に歩く。左右にどわーっと広がった塊は、はた目から見れば、鶴翼の陣。
俺はその群衆に紛れ、ノアとミュウラに手を振る。
二人は俺に気づくと、嬉しそうに手を振り返す。
ストーカーモードの妹たちはユマと俺の「あーん」をじーっと遠目から見つめたりと、少々、いやむちゃくちゃ手強いが、味方になると……こうも頼もしい。
そして、俺は――
標的を見失った車の逆を行くようにして、包囲網から脱出し、ユマが待つ喫茶店へと駆けるのだった。
ユマああああああああああああああああああああああああああ!
い
ま
行
く
ぞ
や、や、や、やっふぉーう!
それそれそれそれ!
――麗麗が七星アリスの件について、俺に報告してきたのは、それから数日後のことだった。
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