第17話「ビアレンチェ戦線」
17.「ビアレンチェ戦線」アーバー・イ・ブライン・オプラ伍長
ビアレンチェ(チェ星系。ビアレンチェ戦線、サダンズ銀河)
属
ブル・イータラックWF1382‐661
(以下、略)星系
属
マカデ・エウフXS2157‐469
(以下、略)銀河
属
ギューザン・ローケスAR0350‐921
(以下、略)宇宙
属
ローケス・セブルケッツAA003‐233
(以下、略)インペリオーム
「ジャフナ4各機、要塞の防衛部隊を全て排除せよ」
『了解。帝国に栄光あれ』
夕暮れで
サダンズ銀河の
『敵機、
『いい調子だな。12‐6』
『3‐5、お前の上だ、上にいるぞ』
‐三時の方向、敵の増援を捉えた。
‐左翼に気を付けろ。かく乱する。
‐ショック・パルスを起動。
『ダメだ、この機は持たない』
『はっ、それで勝ったつもりか?』
‐ヌーダス、そっちに行くぞ!
‐危なかった。援護に感謝する。
追う者、追われる者。一つ、また一つと戦いに敗れた機体が爆発し、無数の破片となって、夕空に散っていった。
いくつかの星系と一つの銀河を統治しているランジュール連邦は星間航行技術と
『総員へ。心強いボランティアが到着した。彼らはフォラッド
『ロラックィ14‐3、セクター15から敵部隊が急接近している。対応せよ』
『ラジャー。これより
例の
『ゾルドーン9‐3、後ろに敵が付いているぞ』
『問題ない。バシックの支援がある。返り討ちだ』
サラスターは帝国全体で最も広く運用されている可変機構内蔵全領域人型兵器である。全高は標準型で約6.3メートル。レドス自己適応性合金、バルケー自己修復
『隊長、敵の精鋭部隊がお出ましです』
「来たか」
サラスターを
‐侵略者どもにこの地を渡すわけにはいかない! エルカドーレ各機、ここが正念場だ! 祖国のために!
「連中はゼイナート級を五
エルカドーレの機体はいずれも
事実、今まさに四機の友軍サラスターが彼らに
「くそっ、何ていう変則機動を……」
「各機、フォーメーション・ダガー。確実に敵を仕留める」
二機のツーマンセル・フォーメーションでジャフナ4らはエルカドーレを追撃する。二機で一機の敵を追いかけ、背後に敵機が来れば二機の内の一機が
「ケルン、背後だ」
サラスターのパイロットは全周囲透過モニターで死角が無く、友軍機、敵機の位置は常にマークがされていた。アーバーの
「その手は食わんぞ」
エルカドーレが使用しているレーザー・ライフルは非常に出力が高い。一発や二発ではサラスターのシールドを無力化できないが、短時間で連続して攻撃を受ければシールドが過負荷を起こし、無力化されてしまう。これはランジュール連邦の科学技術が高い事を示していた。大抵の文明ではサラスターやゼイナートのような兵器に
「当たらなければ問題ない」
『隊長、そちらに敵が行きます!』
ケルンに追われているエルカドーレ機が急
「各機、フォーメーション・スフィア」
こちらも部隊を集め、球形陣形からの
『被弾した!』
「下を抜けるぞ、ベック!」
正面には部下のベック
‐トリィがやられた!
『スタビライザーが損傷。機体制御ができない、ベイルアウトする』
アーバーの奮闘も
「ベックの被
「
思考操作によって主兵装のレーザー・ライフル出力と
「連邦に
‐トミット! 一体あれはなんだ! レーザーが曲がったぞ!
‐そんな馬鹿なことがあるのか!
驚きを隠せないエルカドーレ隊。
そんな中で先ほどベイルアウトしたベックが戦域へ舞い戻って来た。
『さっきはやってくれたな』
「ベック、戻ったか。そろそろ我々もケリをつけるとしよう」
『イエッサー』
エルカドーレ隊は
「鋭いターンに素早い反応速度。他の機へのフォロー。こいつが隊長機か?」
人型兵器サラスターのパイロットとして多くの実戦経験を積んできたアーバーは
「そこで切り返す」
‐敵を振り切れない。私はもうダメだ。後は任せたぞ、ミレア、オーグ……
アーバーの予測通り、敵隊長機は激しい左右機動を行ってきたかと思うと急停止からの切り返し。それを見越してアーバーの機は左腕から接近戦用ブレードを展開、敵隊長機を一刀両断した。
「敵機を落とした」
‐隊長!
『甘いぞ』
‐くそっ。
隊長機に続けて他のエルカドーレ機も
「敵の航空戦力は一掃された。これよりジャフナ4は地上部隊の支援へ移る」
〈ヴァ・ネイヌ要塞〉の正門付近では帝国地上部隊がイーガスを
『ヒュー、良い眺めだ』
『地上部隊が要塞を制圧するのにそう時間は掛からない。連邦はお終いだ』
「任務は達成された。我々は帰投する」
いくらでも戦場へ兵力を投入できる帝国軍は連邦艦隊を壊滅に追い込むことで、連邦軍の士気を大幅に奪うことに成功。連邦地上軍の抵抗も最初こそ組織的なものであったが、基地や指揮官を失い、軍隊としての指揮系統が機能しなくなっていた。現場での人員と物資の不足は解消されることなく、連邦軍兵士の投降も増大。事態を重く受け止めた連邦政府は「このまま戦闘を続けることは不可能」と判断、帝国へ降伏を宣言した。これにより、また一つ新たな銀河が帝国領へと加わったのであった。
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