純蓮編②

「……そんなこと、ない。私は、変われない。」


 自信のなさゆえか、素直になれない。今までもそうだった。やりたいことがあってもどうせ無理だと決めつけてすぐ否定する。このままじゃダメだとは思いつつ、どう変わっていけばいいのかわからない。だからいつもひとりぼっちだった。


「なんでぇ⁉︎」


 冷月は意外な返答に差し伸べた右手を引っ込めて文字通り頭を抱えた。純蓮はそのオーバーなリアクションに、まるでドラマやアニメから出てきたような愉快な人だと思った。


「困ったなぁー更生して生きてもらわないと今度こそ俺たち存在ごと消されるぞ。」


 どうしようと辺りをぐるぐる歩き回る冷月の落ち着きのなさを見て、桃子はため息を吐いた。


「いいんじゃない、私たちなんてはみ出しものなんだから、別にいてもいなくても変わらないわよ。」


 さっきの勢いとは反対に、ネガティブな反応を見せる桃子を見て、なんだか純蓮は自分と近いように感じた。

 視線に気づいた桃子はきょとんとした顔を純蓮に向けた。同じ空気を感じた純蓮は少しだけ、ほんの少しだけ仲良くなれるような気がした。


「とりあえず、できるできないじゃなくて、やってみないか? 無理かどうかはそのあと決めたらいいし。変わるためのサポートならなんだってするぞ。」


 純連を説得させるように、また自分の心を落ち着かせるように冷月はゆっくりと話す。

 変わりたいのだろうか、でも何も変われなかった。そもそも変わろうとしたことがあっただろうか。何かに挑戦したことがあっただろうか。

 純蓮は期待か不安かわからない胸騒ぎに苦しさを覚え、思わず胸に手を当てる。

 それを見ていた冷月はもう一度純蓮と目線を合わせるように座る。立ったり座ったり忙しい人だ。卒業式の練習みたいだ。先ほどと違うのは、向かい合わせにしゃがむのではなく、横並びで、純蓮の右肩をガシッとつかんで、


「やるぞ……!」


 たくさん冷や汗をかいていた。これが成功しなければ立場が危ないのか、ひきつったその顔は、純蓮を頷かせる以外の選択を与えなかった。


「それじゃあ行くわよ。」


 三人はポツンと不自然にあるドアをくぐった。

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