間 章『ある怪物の独白』
ある怪物の独白
「なら、食べちゃえばいいのよ」――そう少女が誘惑してきた人間は、数知れず。
その人間が怪物と化して、食らった人間も数知れなかった。
ここ最近は、疲れたサラリーマンに囁いた。
老いて呆けた母の介護が限界に達していたその男は、長年求めてやまなかった安寧の眠りを遂に手に入れた。ついでに周囲を永劫の眠りへと
……可憐ではないといえば、少し前に暴行され、
その女は、傍目から見ても、ハッキリと肥え太っていた。肉のついた二の腕、ぽってりとした腹回り、柱と見
言うなれば、死肉に音を立てて群がるハエのような光景――その時は、「少しでも面白くなればいい」と、破壊衝動に任せて血を分け与えたが。
面白くなればいいと思って分け与えたのは、他にもいた。働き者と頑張り屋の夫妻もそうだった。
あの頃の【ギロチン】は、まだ首を刎ねるという手法が確立されていなかったのもあって、グチャグチャのミンチにするのが定番だったと記憶している。首を刎ねるのもスマートだが、派手にミンチにする方が彼女好みだった。なにせ、
そうして彼女は、自分の好ましい方へ、好ましい方へと進んできた――より美しく、より可憐で、より面白い方へと。
なので、ここ最近は心が高ぶっている。
「ふふ……ふふふふ……!」
思わず、堪えきれなかった笑みがこぼれる。
一目見た時から、恋に落ちたように胸が高鳴ってうるさかった。
黒くて
黒と白、金と銀、
あれが
「サクヤちゃん……待っててね……!」
誰に告げるでもなく――しいて言えば『運命』にだろうか――語りかける彼女は、この世の
『しろいかみのおんなのこ』――ハルは、今か今かとその時を待っていた。
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