出会いの形は最悪だ 第29話

「誰かを手助けをするのに理由が必要ですか? ですが、敢えて付け加えるのでしたら私は恋愛科学研究会に所属する予定なので、部活動の一環で誰かの恋愛をお手伝いすることもあります。なのでこれは単に部活動です。そう言うことでよろしいですか?」

 

 何故か不機嫌そうな如月さんに圧倒され僕は肝心なことを何も訊けなかった。それに、如月さんは今、ものすごく答えを欲しがっている。ここで答えを出す前に最後に一つだけどうしても訊きたいことがある。

 

「如月さんは、どうして僕と山河内さん付き合わせたいのか知らないけど、僕の勝算はどのくらいあるの?」

 

「う〜ん。今のままでは可能性はゼロですが、私が介錯することで可能性は格段に上がりますよ。うまくいけば九十パーセントはあると思います。但し、重要なことなのでもう一度言いますがうまくいけばの話ですよ」

 

 前から思っていたけど如月さんって余程の自信家だよな。九十パーセントなんて僕ならどう考えても思いつかない数字だ。わざと話していないだけかもしれないけど、今のところ僕に不利益になることがないのならこの話乗らないほかない。

 

「如月さん。僕は如月さんがどんな人なのかまだよく知らない。それに、山河内さんへの感情もまだよくわからない。だけど、山河内さんと三年間仲良くできるなら、僕は如月さんの伝授を受けてもいいかと思っている」

 

「綺麗事言ったって何もカッコよくないですよ。でも、ようやく私の指南を受ける気になりましたか。それはよかったです」

 

 そう言って如月さんは静かに右手を差し伸ばした。握手をしよう。そう言うことなんだと如月さんの手を軽く握った。

 

「痛い! 痛い痛い痛い! 離して! 痛いって!」

 

 如月さんはみるみる手に力を加えていき、僕の右手は真っ赤になっていた。

 

「気安く触らないでもらえますか?」

 

 言っている言葉と顔が矛盾している。

 この時僕は如月さんの恐ろしさを改めて実感した。

 

「手を差し出したのは如月さんじゃないか」

 

「だからと言って触っていいとは言ってませんよ」

 

 この話終わらなさそうだったから僕が折れた。

 

「確かに。何も言わずに触って悪かったよ」

 

「わかればいいのですよ。これで、未来永劫痴漢を疑われることは無くなりましたよ」

 

 この冗談に言い返せば話はさらに長引く。ここは何もしないのが正解だ。

 

「で、指南とやらを受けるにあたって僕は何をすればいい?」

 

「今はまだ何もです。それはまた追って連絡します。再来週の週末は予定を空けておいてください」

 

 予冷がなり僕らは教室へ戻った。

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