ビルの屋上は銀河

丸井まご

屋上から繋がる因果

 20XX年、世界初。宇宙まで届く超高層ビルが完成した。

 雲を突き抜け、スカイどころか宇宙まで到達するそのビルは『スペースツリー』と名付けられた。


 建設する上で最大の敵は、不安定な天候だった。

 どんなに強固あるいは柔軟に建設しても、この高さである。強風による倒壊に、大雨による地盤のゆるみ。不安要素を上げればキリがなかった。

 

 そこで着目されたのが『天候操作技術』であった。長年の研究により、雨を一滴も降らせず、自由気ままに吹く風さえも完全にコントロールすることが可能になったのだ。


 こうして完成したスペースツリー、その屋上からの眺めは絶景であった。

 雲に遮られることなく、澄み渡るような銀河。

 まさしく手を伸ばせば届きそうな星々。

 

 屋上から広がる銀河は人々を魅了した。


 なぜ星は輝くのか?

 光の渦の先はどうなっているのか?

 宇宙人は存在するのか?

 

 無数の星のごとく湧き上がる好奇心。

 人類は欲望を抑えることができなかった――


 

 スペースツリーに並ぶ超高層ビルを次々と建設し、それらの屋上から巨大な宇宙ステーションへと物資を供給。


 光よりも早く目的地に到着する宇宙船の開発へ着手した。



 20XX年:

 超光速航法が確立、ついに生命が存在する星を発見。

 先住民に気付かれないよう調査を開始。

 生々しく意味不明な見た目に反してご飯がおいしい。


 

 20XX年:

 その星の征服を決意。

 天候操作技術を応用し、異常気象により先住民たちの生活を脅かすことに成功。

 生命力が強いのか、意外としぶとい。

 平均気温をジワジワと上昇させてみる。

 




 2024年:

 ようやく先住民がを上げる。

 

 「チキュウ」と呼ばれる星が、人類の手に落ちた――


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ビルの屋上は銀河 丸井まご @marui_mago

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