第四話 自由の代償
超えた先に俺たちを迎えてくれたのは、とても美しい景色,,,ではなく、騒がしくも賑やかな、たくさんの出店と人々だった。
「思っていたよりも賑わっているわね」
周りを見ながら話しかけてくる。
「そうだな。これだけ賑わっていると、前に進むのも一苦労だな」
俺たちの目的は日用品を買うことだ。
変えるところは二つあって、一つはここにあるような出店。
もう一つは、異世界でおなじみのギルドだ。
「ブラン。出店とギルド、どっちのほうで買いたい?」
「そうね。質が安定しているギルドだわね。素材の買取もできるし」
「了解。なら、ギルドに向かいますか」
俺たちは人の波を掻き分けながら、前へ、前へと進んでいく。
ただひたすら、一つの場所を目指して。あぁ、こういうこと言っている時が、一番気持ちがいい。
「おっ!そこの赤髪同士のお似合いカップル!アクセサリーはどうだい?」
強面で禿頭、隻眼の俺よりもキャラが立っている店主が声をかけてきた。
なかなか見る目のある人だ。未来のカップルを見抜くなんて。
こいつは十中八九童貞だな。
なんて思っていると、奥の方から、それはそれは美人なお姉さんが、出てきた。
童貞,,,じゃない,,,だと,,,俺の童貞センサーが、人の多さに誤作動をしていたようだ。
それにしても美人だ。すっと通った鼻筋に、優しそうな目に、碧眼。青の髪は腰のあたりまで、波を打って伸びている。
このおっちゃん、羨ましいぜ。ま、ブランほうが、良いけどな。
「ちょっと。何見惚れているのよ」
尻を思いっ切り叩かれた。痛い。
横を見ると、頬を膨らませているブランがいた。
拗ねている姿も可愛い。
「見惚れているわけじゃないです。アクセサリーを見ているだけです」
これ以上怒らせるのはまずいから、すぐに訂正をする。
「ならいいけど。でもあんなに黙ってみているなら、買うのはもう決まっているわよね?」
恐ろしいほどの圧が俺を襲う!!
気のせいか後ろに鬼が見えるぜ。
「あー、えーと、これが似合うと思っていたんだよ」
咄嗟に適当なものを、ブランの目の前に出す。
「あんた。これ,,,」
何を出したんだ。俺,,,
恐る恐る目を開けると、ブランが大好きな猫のアクセサリーだった。
しかも色は彼女と同じ赤みの掛かった茶色だ。
「最高じゃないの!ありがとう!」
手を握られて、感謝された。
適当に出したものがここまで喜ばれるとは。
ま、結果オーライということで。
値段は聞かないでくれ。ヒントは、俺の持ち物はほぼ無いということだ。
アクセサリーを貰ってウキウキな彼女と、予想外の出費に肩を落としている俺。
傍から見れば、騙された人だ。
でも、幸せならOKです。
こんなことがありながらも、ギルドに向かっていく。
出店から遠ざかれば、人の通りも少なくなってきた。
やはり、あの辺りが一番賑やかなのだろう。
「ブレイク。見えてきたわよ」
彼女の声で、顔を上げると、大きな建物が目に入った。
石で作られた重厚感のある堅牢な建物。
高さは十数メートルで、上に行くにつれて、細くなっている。
一番上には、自由を象徴とする、青の鳩の旗が靡いている。
ちなみに、設定だと俺の髪の色は、この旗の色と同じなんだぜ。
自由に動きすぎたせいで、持ってかれたぜ!チクショウ!!
このあたりの話は番外編で。あるかどうかは分らんが。
「よし、行こうか」
俺らは、ドアを開けて、ギルドの中に入っていくのだった。
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