第五話 自由は手の中

ギルドの中は外観とは違い、賑やかな雰囲気を持っていた。

もっとも、出店のようなものではなく、色々な人間、言語が飛び交っている。

また、中は四階建てで、一回は酒場のようなもので、様々な情報が聞こえる。

山のほうでドラゴンが出たとか、パーティーの一人が迷宮の中だとか、そういったものだ。

お前らの世界の本も、こんな感じだろ?

二階は依頼の受注や報告ができる場所になっている。

冒険者はここから、依頼を受け取って、旅立ち戻ってくる。

内容は多種多様で、探索や捜索、討伐に撃退、採取や運搬などがある。

また、ここではモンスターの買取と、日用品や必需品が販売されている。

今日はここで、モンスターを査定してもらい、金を受け取る。

ブランは俺の説明が長いからと言って、査定をしてもらっている。

俺,,,頑張ってるのに。グスン。

おっと、はあ無しが逸れそうだから戻そうか。

三階と四階は宿泊施設になっている。

普通の人間も泊まれるが、冒険者割引があるのでほとんど埋まっているから、なかなか見ない。

俺たちは別の空いている宿に泊まる予定だ。

此処での説明はこんなところだ。

ギルドによって、見た目、文化、施設に違いがある。

これも旅の醍醐味の一つだろう。

上の二行は、ブレイクがニートの時に見ていた本の一部だ。

おい、作者!!余計なの入れるな!俺の主人公感が無くなるだろ!!

まあいいか。俺たちがいるのは作者のおかげだもんな。

「お~い」

どうやら金がもらえたようだ。

「どのくらいになったんだ?」

見たところ、金額は大きそうだが。

「十万四千リルだったわよ」

リルとはこの世界のお金の単位で、お前たちが済んでいる世界のお金と等価だ。

等価の理由はわかりやすいからだ。

「ここから、日用品とかを買うから、余らなそうだな」

足りない脳みそを売るに回転させて考える。

このスピードは黄金の回転といっても過言ではない。

「そうね。考えながら買いましょ」

必需品はあらかた揃っているので、俺たちは日用品の棚を見ていく。

洗剤やテント、フライパンに薄い本。本当にたくさんの物が売っている。

異世界コンビニだな。なんて思いながら、かごにものを入れていく。

「必要なものは全部買えたな」

指さし確認を二人でしていく。

まるで夫婦みたいだな。将来はこんな風に,,,なんてな。

こんな夢は儚く散ると知っている。理由はシナリオがあるからだ。

でも、たまには思い描いていたい。横を進む彼女と手をつないで、

感情の共有をしてた楽しく生きていたいと。

不意に頬に一粒の雫が流れ落ちていく。

「あれ?ブレイク泣いているの?」

心配するように彼女が顔を覗き込んでくる。

「いや、目にゴミが入っただけ」

強がってこの気持ちを誤魔化す。

俺の悪い癖だ。こんなの早く無くしたいよ。

「そう。先会計して収納しているわね」

俺の気持ちを知らないまま、彼女は会計をしに行った。

言ってしまえば楽なのに。

言葉にするのがこんなにも難しいということは、

馬鹿な俺でもはっきりと分かる。

パンっ!!乾いた音が鳴った。

音の出所は俺の濡れた頬。

何がシナリオだ、何が設定だ。そんなのまた自由に動いて変えてやるよ。

見てるかお前。お前の思う通りにはならない。

自由はいつでも俺の手の中に眠っている。

こんなくそなシナリオは名前の通り、自由に書き換えてやるよ。

外では、強い風が旗を大きく揺らしていた。

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