第38話 再始動

 その後、次大会の戦略と戦術について改めてチームとして考える必要があることを二人に伝える。

 二人だけの時はシューメイが前衛、オレが後衛。

 アズサちゃんは入隊後、とにかく強くなってもらうためシューメイと二人で接近戦の訓練をしてもらっていた。

 オレは一人で遠距離射撃、PvPしていたくらい……つまりチームとして連携なんて全くできていない。

 だから三人での戦略を練る必要がある。

「そうだな。二人だけとは戦い方も異なるしな」とシューメイ。

「わ、わたしはお二人にお任せします〜」

「うん、それにアズサちゃんの大会デヴュー戦だもんね〜」

「はぅ〜そんなハードル上げないでくださいよぉ〜」弱気なアズサちゃん。

「そんな弱気じゃだめだぞ、アズサ」

「そうそう。でもオレたちがいるから大丈夫大丈夫〜」


 レイドでの三人編成は前衛一人、後衛二人がセオリーだけど、あえてオレは前衛二人、後衛一人のオフェンシブな編成を提案した。

 前衛はシューメイでアタッキング。アズサちゃんはシューメイの支援として回復と防御。

 そしてオレは後衛で今まで通り狙撃と『鷹の目』で近距離から遠距離――数十メートルから数百メートル以内かな――の範囲を見渡し攻守の指揮を担当。他の二人に位置情報を共有しターゲットを指示する。いつものようにサッカーで使われる『後ろの声は神の声』ってヤツだ。

 戦闘開始から中盤はスコープとアシストシステムを併用、終盤戦で『天の秤目』を使用するのは今までとあまり変わらない。


「そうだな。前衛でアズサのスキル使ってもらった方がいいな。シノブの指示はいつも通りか」とシューメイ。

「うん。あとはシューメイ、あんまり敵前まで突進してヤられないようにね。前回みたいに」

「お、おう」

「で、アズサちゃんはどう? 前衛、できそう?」

「ん〜射撃は大丈夫ですね〜。あと『ガードヒール』を使って防御の訓練してるんですけど〜シューメイくんに撃ってもらってそれを防御って……」

「え〜シューメイ、アズサちゃんとPvPしてるの?」

「そりゃそうだ。実戦に近いことやらないとな。でもHP下がらないように急所は外してる」

「痛くないとはいえ、シューメイくん本気で撃ってくるんです~。あと、まだ他の人の防御アップと、HPアップさせるってのはやってないんですよ〜」

「そっか〜。それはこれから訓練で会得してもらうしかないね〜」

「だな」

「じゃ、フォーメーションはそうしよう。次は戦略ね」と話を進める。


 最初の10分スキャンまでは他チームに気取られないように行動。

 大会開始時の転送先――森林地帯、荒野、都市部、山岳地帯等――に応じて対応。例えば森林地帯、都市部や山岳地帯では移動を少なくし、迎撃戦。荒野や草原のような見晴らしの良い地帯の場合は速やかに他の場所に徒歩で移動。無理なら遮蔽物を探す。

 前回まで出番がなかったハンヴィーはできるだけ終盤での移動と戦闘――都市部か荒野のような平坦な場所に限られるけど――に使用。

 運転はアズサちゃん。オレとシューメイで車内とルーフトップからのPGMヘカートIIやSR-H1等の重火器で攻撃。

 ほとんど戦争だな……。


「まぁ仕様変更されていなければ、前回優勝者のオレたちは山岳地帯に転送されるはずだけど絶対とも限らないしね」

「そうだな。仕様変更も考慮してるから概ねいいんじゃないか?」

「私はわからないから、お二人に任せます〜」

「んじゃ、今日から三人以上のチーム見つけてPvPやってみるか〜。でも手の内を見せないようにね」

「おう」

「は〜い」


「でもその前に時間的にもうお昼だからLOGOFFしてご飯食べてからにしない? オレはレンチンだけど〜」

「その必要はない。シノブがOKなら、すぐにでもお前の家に戻る準備はできてる。アズサが昼飯つくってくれるぞ」

「はい〜」

「えええ〜早く言ってよ〜!」



 それから30分と経たず、二人が大荷物を持って戻ってきた。

 チャイムと共に秀明の大声。

「おーい、早くエレベーターホール開けてくれ。重くてしかたねぇ」エントランス用のモニターに秀明とアズサちゃんが映る。


 キッチンに立ち昼食を用意するアズサちゃん。

 そしていつものようにリビングのソファにドカッと座り込む秀明。

 たった数日離れていたのに、あ〜日常が戻ってきた〜って感じ。


 お昼のメニューはお馴染みのポテチを砕いたのが乗ったチャーハンとサラダ。

「あ〜やっぱりアズサちゃんのご飯は美味しぃ〜。この何日間か食欲なくてたまにカップ麺を……」

「じゃ〜たっくさん召し上がってくださいね〜」

「だけど胃が小さくなっちゃってさ〜」

「食べられるだけでいいですよ〜」

「……」秀明はオレとアズサちゃんのやりとりを見ても、文句も言わずバクバク食べてる。

 とりあえず秀明のなかでは、仲の良い姉妹と見るようにしたんだろうな……。

 オレはその立ち位置でも満足だ。

 うちら三人はチームS・S・A以前に、それ以上の絆があったんだ。

 だからこの三人ならきっと優勝できる……改めてそう思えた。

 でも、今は大会に向けて戦闘の訓練しなくちゃね!


「それじゃ、お腹もいっぱいになったしPvPやるか!」とチームリーダーとして二人の顔を見る。

「おう!」

「は〜い!」

「じゃ、10分後に廃都市で待ってる!」

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