第33話 損害賠償金って課税? 非課税? 不課税?

 ライバルR――ヤツはそうは思ってないだろうけど――との勝負、二勝一敗で勝ち越しだ。

 立役者となったPGMヘカートIIと12.7x99ミリNATO弾は、課金したゴールドで購入したんだ。そのゴールドの原資ってのは――。


『朝おん』して33日目の水曜日、プロ契約してから25日が経過――って日数を数えてるのもなんか性分というかSEのサガみたいなもんかな。

 んで、生理が始まって5日目、ようやくちょっと体調も戻ってきたんだけど気になることがあって、昼休みに一人で出歩くのがやっぱりまだ怖いんでアズサちゃんに付き合ってもらい社外に。

 現金は必要な時――スマホでピッってできない自販機とか――以外はあまり使わない。買い物とか飲食はカードやモバイル決済だからカード請求額と口座残高確認はスマホでチェックしてるんだけど、この約1ヶ月間アバターから戻れないで女子化ちゃったり、監視されてるかびびったり、引っ越ししたり、検査受けたりプロ契約して、それから生理がきて正真正銘の女の子になったりなんだかんだで見てなかったから……あ、何回かはアズサちゃんに立て替え払いしてもらった分を引き出したっけか? 通帳記帳しとかないとなっ!てんで、お昼休みに銀行へ。

 本当の目的は損害賠償の振り込み期日は……確か今日だったから、示談書通りに振り込まれたのか気になってたんだよね。自分が言うのも変なんだけど、電子データーっていまいち信用できないからねぇ。

 ATMで記帳――通帳には『振込 カ)アストラル・ゲームス *100,000,000』、そして残高欄は『100,084,597』と記帳されていた――下5桁はカードとか引き落とし後の残高なんだけど、9桁の数字なんて仕事以外で初めて見た!

「あ、あ、あ、あ、アズサちゃん……ふ、振り込まれちゃ〜!」

「忍さん、ちょっと落ち着きましょう……でも示談書上ではわかってましたけど、いざ現実に数字を見るとたしかに慌てちゃいますよね〜」

「う、うん……こ、これって税金、損害賠償って課税? 非課税? それとも不課税?」

「とりあえず、通帳ちゃんとポーチに仕舞って退社してからおうちで三人で考えましょ〜?」

「そ、そうだねぇ……」


 う〜ん損害賠償金って税金かかるんかなぁ? 国税庁のサイトには『損害賠償金等は非課税』ってあるんだけど、さらに突っ込んで読んでくと、『心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金』ってあって、『非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られます。所得税法第9条 、第51条、第73条、所得税法施行令第30条、第94条、所得税基本通達第9条19項、第9条23項』ってあちこちバラバラにあるんだよね。

 億単位の金額って『社会通念上それにふさわしい金額』とは思えないけど、生身が変えられちゃったから『心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金』に相当するとも思えるし。

 帰宅し夕食後、「損害賠償金が今日振り込まれてたんだけどさ〜」と話し始める。

「弁護士か税理士に相談。それかアストラル・ゲームスに聞いた方がいいのかな〜?」

「そうですね〜」

「いや、示談書の第1条『現実世界でアバターと酷似した身体での生活を強いられる状態となった』って認めてる以上、『心身または資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金』に当たるから非課税じゃないか?」と冷静な秀明。

「なら確定申告しないでおいて、もしバレたらこの金額の調査なら国税が動くだろうから言われたら示談書を見せれば問題ないってこと?」

「そう、税務署から突っ込まれても『示談書』がモノを言うだろうな……多分」と秀明。

「た、多分って……」

「あいつらが示談書の開示を許すかどうかもわからん」

 そりゃそうだ。


 自室に戻り、国税庁のサイトを見ながら考える。

 もしこの損害賠償金が課税対象だった場合、税額はいくらになるんだろ?

 給与所得があるからお給料分だけ年末調整してもらってから、翌年、副業分の雑所得として確定申告するんだよね。

 計算してみるかぁ。まずは損害賠償金を副業による雑所得とし『100,000,000』、損害賠償金に対しての経費はゼロだから所得金額はそのまま100,000,000。で、『40,000,000以上』だから税率も一番高い『0.45』。

 控除額『4,796,000』を差し引いた額に『0.45』で計算――42,841,800が税金……ってことは手元には57,158,200しか残らない? むぅ〜ほぼ半分かぁ〜。

 実際には地方税がこれにかかるわけだから、絶対非課税にしなくっちゃな〜。

 ま、来年考えるしかないよね。

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