第31話 お祝いはオムライスで

『朝おん』してからもうかれこれ29日目土曜の朝、プロ契約してから21日目?


 平日は会社と、夜のVRMMORPG BulletSでのプレイの疲れで土曜は超遅起き。なんかお腹痛いし頭も痛い。

 まだ眠いんで着替えもせず、リビングでコーヒーを飲んでる二人に「おはよ〜」と言いながらまずはトイレトイレ〜と個室に入ると、パンツになんか卵の白身みたいなペタッとした粘液が付いてる。

 んんん〜? なんだこれ? と思いながらペーパーで拭き取る。夜お風呂入るときに替えればいいか〜と独身男……あ、身体はもう女性か……のクセが出る。

 あとで英明がいないときアズサちゃんに聞いてみよっと。

 トイレを済ませてパジャマのままリビングに行くとアズサちゃんが「忍さん、コーヒー淹れておきましたよ〜」とマグカップを渡してくれる。

「ありがと〜」と受け取ってリビングのソファに座る。

「もうお昼近いですけど、何か食べます〜?」

「ん〜どうしようかな〜。なんか昨夜からお腹痛いし、頭も痛い……あ、これは気圧のせいかな? 熱も無さそうなんだけどだるいし、やたら眠いから後にする〜」

「じゃ、お昼過ぎたらお部屋に持っていきますからまだ寝ててくださいね〜」と何か気がついたような感じで気遣ってくれる。

「うん、そうする」

 引き出しをガサゴソ探して体温計を見つけ、ベッドに寝転び体温を測る――普段より低い35度8分だ。

 昨日なんか変なもの食べたっけか?

 と思ってると、まだお昼前なのにアズサちゃんの声とノックの音。


「あ、どうぞ〜」

「忍さん、もしかすると今度こそ生理かもです〜」と入ってくるなりアズサちゃん。

「えええぇ〜?」そういえば先日、『ポニーテール頭痛』のときに生理かも〜? って相談したんだ。

「女の子になってもうひと月くらいですから~。下着になんか付いてたりしましたか〜?」

「あ、言われてみればパンツに卵の白身みたいなのが付いてた!」

「あら〜そしたらそろそろ本当に生理がきますね〜。人によって違いますけど忍さんみたいに白身みたいのとか、うっすら血がついたり茶色っぽいものが付くんですよね〜。最初の生理、初潮っていうんですけどあんまり血は出ないですから……たぶんですけど〜」

「そうかぁ……オレも正真正銘の女の子になっちゃったんだな〜」

「そうですよ〜お祝いしなくっちゃですね〜。昔はお赤飯たいてお祝いしたらしいんですけど〜」

「え? アズサちゃんも?」

「いいえ〜、わたしはお父さんに知られるのがいやだったからお母さんに『それだけはやめて〜』って、大好きなオムライスにしてもらいましたけど〜」

「な、なんか普通だねぇ」

「普通が一番ですよ〜」


 昼食は結局食べずにやたら眠いので夕方まで寝てたんだけど、トイレだけは我慢できずに行き用を足すと……あ、なんか違和感。見ると便器が真っ赤だ!

 アズサちゃんあんまり血は出ないって言ってたのにぃ〜!

 トイレのドアを半開きにして「アズサちゃんいる〜? トイレが〜〜〜〜〜!」と大声で助けを呼ぶ。

「は〜い、今行きますからね〜」とアズサちゃん。

 あ〜助かった……のかな? やがてノックと「とりあえず今、『普通用』のナプキン持ってきたんで包まれている紙に付いているテープのつまみを引いて開いて、紙からナプキンをはがしてショーツのお股のあたりに貼り付けてそのまま履いてくださいね〜」と開けたドアの隙間からナプキンの包みを手渡してくれる。

「う、うん……なんか難しそうだけどやってみる……」

 悪戦苦闘してなんとかナプキンをパンツにつけて履き直す。

 やっとトイレから出てリビングに行く……う〜ゴワゴワするな〜。

 幸いにもというか、アズサちゃんが気を遣って英明を部屋に閉じ込めているらしくアズサちゃんだけだった。

「アズサちゃん〜ありがとう〜。でも真っ赤だったよ〜」

「あ〜身体がちゃんと出来てるから初めてでも多かったんですね〜」

「そうかもね〜。確か中央研究所で『乳腺、子宮、卵巣他もちゃんとある女性』って言われたよね……」

「そうですね〜。じゃ後で『普通用』のを何枚か渡しますんで2、3時間に一度は替えてくださいね。夜はシャワー前に『夜用』のをお渡ししますから〜。替えのショーツに先につけておくのがコツですよ〜」

「やっぱり女の子に聞くのが一番だよな〜。あ、シャワーってことは、湯船はだめだよね?」

「いいえ〜。逆にお風呂に漬かることでお腹が温ったまるから、そっちの方がいいですよ〜」

「なるほど〜」

「あ、今日の分はありますけどこれから一週間は必要ですから忍さん用のナプキン買ってきますね〜。体温計も小数点2桁表示の女の子用のも。それで毎日体温を測るんですよ。そうすると次にいつ生理がくるか、わかるようになるんですよ〜」

「あ〜基礎体温ってやつだね」

「そうですそうです」

「でも記録するの面倒だね」

「あ、ならわたしも使ってますけどBluetooth接続機能付きのにします〜? それならスマホで体温管理もできますよ〜」

「それ便利だ〜」

「じゃ、それにしますね〜。あと、寝るときはお腹と腰の下辺りにカイロを貼って温めると、血流がアップするから痛いのも和らぎますしリラックスもできてますしね〜」

「なんかほんと、いろいろありがと〜」


 その日の夕飯はオムライスだった……。

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