第6話 VRMMORPG BulletS運営来宅

 あっ、もしかして……。

「VRMMORPG BulletSの方……ですね?」

「はい。早朝突然お邪魔して申し訳ございません、高岡様。VRMMORPG BulletS運営の者です。この度は大変ご迷惑をおかけしております、私は営業本部長の栗山エイジと申します」

「わたしはVRMMORPG BulletSシステム開発総責任者の崔ケイスケと申します。大変申し訳ございません」

 それぞれ名刺を差し出し、頭を下げる。

 オレの勤め先の名刺は通勤カバンに入っているけど、それを渡すつもりはない。

「初めまして。アバター姿ですが、高岡忍です」と、ちょっとだけ嫌味っぽく言い、とりあえず上がってもらおうとした……。

 けど、パジャマの上を羽織っただけだったのに気がつき、慌てて「ちょっとお待ちください」と寝室へ行きトレーナーとジーンズに着替え、改めてリビングに上がってもらう。


「今回のアバターの件……で、いらっしゃったんですね?」

「はい。お察しの通り、高岡様がアバターとの同期接続が切断されない件です」と営業本部長が答える。

「やっぱりそうですか。営業本部長さんと、システム開発総責任者の方がいらっしゃったということは、わたしはおそらく元の身体には戻れないんですね?」

「……はい。さすが高岡様、SEをやられているだけあって……」

 あんまり関係ないとは思うけどな。SEやっていることはプロフにも上げてあるから、別に秘密にしてるわけじゃないけど、なんか個人情報を知り尽くされているようでイヤだな……あ、登録時に個人情報はすべて彼らに知られているんだっけ。

「いや、単なる推測……というか消去法です。まず、あの強制LOGOUTで百数十人?のプレイヤーがわたしと同じアバターの姿のままで。それから24時間くらいですか? 残り16人まで切断が完了した。で、現在切断が完了していないのは、おそらくわたしを含めて二、三人……。なぜかって? 営業本部長と、システム開発総責任者の方がわざわざわたしの所にいらっしゃったということは……」

「……まさに、おっしゃる通りです」

 やっぱりな……推測で話してみたけど、本当だったんだ。覚悟はしていたとはいえ、事実となると不安しかない。

「で、今後についてなのですが……」

「あ、それはもうしばらくするとパートナーのプレイヤーと知人が来ますので、それからでよろしいですか?」

「はい。ではお待ちさせていただきます」

「……あの、よろしいですか?」崔ケイスケと名乗った、VRMMORPG BulletSシステム開発総責任者が口を開く。

「わたし、実はTHX-1489の基本設計もさせて頂きまして……今の高岡様は生身にした姿そのままですね!」

 ん? なんだこの人。ただ単にオレ、つまりTHX-1489を見学に来ただけなのか?

 そんなオレの表情を見て「あ、そんなただ興味本位で来たわけではないです。現実世界つまりVRMMORPG BulletSシステム外で、持っているレアスキルが有効かを知りたくてですね……」と、なんか、説明くさい。

「ああ、『天の秤目』ですね? 使えましたよ。ベランダから富士山が見えるんですけど、ズームとセンチメートル単位では無理でしたけど、確か82,350メートルと測距できました」

「おお! すばらしい! システム外でもレアスキルが使えるんですね!」

「あ、それとメニューの表示はできませんでしたね」

「やっぱりそうですね」

「これは自分でできるかを試したわけではなく、これから来るパートナーのプレイヤーが提案してくれたんですよ」

「ん〜、その方もなかなか……たしかシューメイさんですね?」

「え、ええ……」やっぱりプレイヤーのデータすべて把握済みってわけだ。

「いや〜高岡さん、THX-1489のスキルを使用したヒット率の高さ、素晴らしいです!」

 なんだかこの人、自分が基本設計したTHX-1489の自慢をしに来たのか? ま、技術者なんてそんなもんだけどな〜。

 オレの目がそう訴えているのがわかったようで、「あ、それは『天の秤目』と、ASM338(AWSM)を使いこなせている高岡さんのシューティング技術がすばらしいんですよ。『赤目金髪のスナイパー』の二つ名で恐れられているだけはありますね!」

 と、そんなプレイヤー間だけの話まで把握しているなんて……。

「そういえば第3回VRMMORPG BulletS RECOILでの入賞! あのときから使い始めたんですね!」

 どんだけTHX-1489好きなんだ? ファンかよ~。

 なんかちょっと生身のTHX-1489としてはちょっと気持ちが悪い……ってか、さっきからアバターとは言わないのが気になるな……しかもいつのまにか『高岡様』から『高岡さん』に変わってるし。確かにあの大会で入賞した賞金と、貯まったゴールドでアバターと銃を新調したんだけど。


 そうこうするうちに、ドアチャイムが鳴る。

「は〜い。今行きま〜す」

 今更だけど今度はちゃんとドアフォンのモニターを確認して、英明とアズサちゃんを招き入れる。小声でVRMMORPG BulletSの中の人が来てると伝える。

「!」英明は察したようだ。アズサちゃんはキョトンとしてるけど……。

「おはよう、忍!」英明は平静を装う。いつもなら「おう!」も言わないけどな。

「忍さん、おはようございま~す。あ、お客様ですか~?」アズサちゃんは平常運転だ。

「お客様にお茶もお出ししてないなんて~。今お出ししますから~」とリビングのテーブルをのぞいて言う。

 持ってきてくれたお茶のペットボトルをレジ袋からガサゴソ取り出し、氷を入れたビールグラス――独身男なんでそれくらいしか無い――に注ぎ、「どうぞ」と言いながらお出ししてくれる。

 そして、オレをソファの端、一応上座なのかな? に押しやって主面し、ど真ん中に座っている英明の隣に座る。


「さてと。こちらVRMMORPG BulletS営業本部長の栗山エイジさんと、システム開発総責任者の崔ケイスケさん」と二人を英明とアズサちゃんに紹介する。

「勝野秀明です。オンライン名はシューメイ。こっちはわたしの連れの……」

「秋山アズサです。秀明さんと忍さんとは同じ会社で働いてます」

「改めまして、この度は大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございません」二人で頭を下げる。

「で、営業本部長さんと、システム開発総責任者の方がお二人揃って忍の所に来たということは……おそらく元の身体には戻れないということですね?」

「え! そ、そんな……」アズサちゃんが目を見張る。

 そりゃそうだろな……推測で話したとはいえ、事実と言われた自分もまだ実は半信半疑だからな。

「はい……残念ながら。本当に申し訳ございません」再び二人とも頭を下げる。

「あ、頭をあげてください。そんなことされても何の解決にもなりませんので……」とオレ。

「そうだな……。で、VRMMORPG BulletS側としては今後どうして頂けるんでしょうかね?」と英明が単刀直入な質問をぶつける。

 オレは隣で、さすがシューメイ近距離戦が得意な前衛だな〜と妙な関心をする。あれ? オレがぼーっとしてるだけか? ま、いいや。

 トラブル解決の方針は、英明に任せておこう。

 アズサちゃんの方を見ると、同じように思っているらしく目配せをしてくる。


「はい、本日はその件につきましてお伺いした次第です」と営業本部長が話し始める。

「弊社としましては、今回の件に関しまして高岡様への慰謝を検討しております。具体的な内容――と申しますか金額は今後詰めさせて頂きたく存じますので、民事・刑事を含めた争議を起こして頂きたくないと思っております。同時に、風説の流布は控えて頂きたく」

「ああ、今朝のスキンヘッドのプレイヤーのような? あんなことはやらないです」と、オレ。

「はい。しかもあの方はプレイヤー様ではなく、友人か知人に同期接続が切断されないプレイヤー様がいた方らしく、それに乗じてマスコミへのリークを行なったようで、そちらの対応は別の者が現在動いております。それと、もう一つ。高岡様の身辺警護――と申しましょうか、周囲への対応と配慮もございますので、弊社がご用意する場所に転居をしていただきたく」

「な、なんだって? 忍を軟禁するつもりか?」と英明がいきり立つ。

「いえいえ、めっそうもない! そんなつもりはございません。その容姿――つまり男性から女性になってしまった以上、こちらで暮らし続けるにはご不便が生じるのではと」

「ん〜たしかにそうかもなぁ……この姿じゃいくらご近所付き合いがあまりないとはいっても、ちょ〜っと暮らしにくいかも」

「おい、忍それでいいのかよ?」

「いや、こんなこと急に言われてもハイそうですかなんて即答はしないよ。でもここに居づらくなるのは確かだよ」

「確かに……他には?」と英明。

「あとこちらは親会社からの要望なのですが、今回のような同期接続が切断されず生身とアバターが一体化した状態というのは我々も未経験でして、THX-1489は一体――失礼しました、高岡様お一人しかご使用されてなく、可能ならば精密検査をさせて頂きたく」

「なんだよ、まさか人体実験しようとでも言うのか? どっちかというとそっちのがメインなんじゃないのか?」と英明。

「いえいえ、CTスキャンですとかMRIでお体を調べるレベルです。これはVRMMORPG BulletSが行うわけではなく、親会社であるアストラル製薬の医療機関で行いますので、ご安心ください」

「あ、アストラル製薬って、あの会社か――医療機関もあるんだ。そういえばVRMMORPG BulletSの持ち株51パーセントはアストラル製薬だったような……」とオレ。

「おっしゃる通りです」

「え? 忍やけに詳しいな」

「ああ。彼女もいないから、株やってるんだよ。ゲームとデートばっかしてる誰かさんとは違うんだよ」

「なに〜!」

「まぁ二人とも少し落ち着いてくださいよ〜」といつものようにとりなすアズサちゃん。

「ま、今日は話だけ聞いておくけど、後日文書でもって追加があれば提案してくれるか? 今日の会話は全部録音させてもらってるから、もし内容が異なっていたらすぐにわかるからな」と英明がスマホを見せながらまとめる。

「はい、次回……数日のうちには必ず」と本部長。

「あ、それから高岡さん。メールでもお伝えしておりますが、決してギアを使用してのダイブは、まだ試みないで頂けますよう、重ねてお願いいたします」と開発総責任者が付け加える。

「わかりました……」

「で、あんたらこれから次のプレイヤーのとこに行くんだろ?」

「それは極秘事項ですので」

「ふ〜ん」

「では、失礼いたします。ご迷惑をおかけいたしました」

「失礼します」

 と、二人は次のプレイヤーの所か、会社か何処かに向かったようだ。



「どうする? 忍」

「ん〜女の子になっちゃって、ここに住み続けるのもアレだし、第一会社もどうするか……あ〜もうこの2日かそこいらで、いろいろあり過ぎて一度に決めらんないよ〜」

「そうだよな……わりぃ忍。お前の気持ち考えてなかった」

「そうよ〜忍さんの言う通りよ秀明くん。それと忍さんは少し考えるのやめた方がいいかもですよ~」

「うん」

「ま、会社については今日の報道、上の人間も見てるだろうから、女性なのはまぁおいといてアバターの姿のままってのは理解してもらえるだろうな」と英明。

「いや、女性なのは、あんましよくない……」

「え〜、忍さん可愛いから大丈夫ですよ〜」

「なにそれ〜」

「ま、オレとしては、とりあえずVRMMORPG BulletSの提案は全部とはいかないけど、ある程度受けるつもりなんだよね……でも慰謝料もらったとしても会社は勤め続けたい」

「忍……」

「あ〜もうどうすっかな〜。ここしばらくは、外にも出られないしなぁ〜」

「……じゃ、お洋服持ってきたからまたお着替えでもしますか〜?」

「え〜、もうそれいいよ〜」


 VRMMORPG BulletSの二人が帰った後、お着替えタイムが始まる事もなかったけどそれでもなんか疲れた。

 そろそろお昼だからなんか食べに行くか、アズサちゃんがご飯作る? ということになった。オレはあまり食欲ないし、外に出たくないからレンチンでもいいかな〜。二人はどうするんだろう?

「忍、おまえ昨夜食べてなくて、今朝もカップ焼きそばしか食ってないんだろ? 大丈夫なんか?」

「ん〜なんか食欲ないんだよね……さっきはとりあえず飯!とか言ったけど。それに外、出たくない……」

「そうか~何ならいけそうだ?」

「あ、カレーなら食べられるかも。カレーならレンチンできるレトルトあるしご飯も。あとは〜レンチンして食べられるパスタが何種類か……」

「……レンチンものばっかだな。おまえ、ほんと独身男の標本みたいだな!」

「あ、秀明くん、それより食材買ってきてるから、わたし『あれ』作るよ〜」

「それがいいな! アズサの『あれ』は美味いぞ〜」

「『あれ』? まぁいいや。いいな〜カップルって」

「忍さ、おまえレンチンとゲームと株だっけ? そればっかだから彼女が……あ、ごめん。今は女の子なわけだから……その〜」

「いいよ、気にしなくて。女の子になっても誰かの『お嫁さん』になるつもりなんかないし。それに普段から自炊しないでレンチンメニューで暮らしてるんだし。あ、それよりレンチン食品の補充しないと……」

「しばらく外にも出づらいでしょうから、わたしがご飯作りに来ましょうか〜?」

「い、いやそれは悪いよ。それにここから転居するかもだし」

「そういやそんな事も言ってたよな……あいつら」

「うん。もしそうならできれば二人と近い場所がいいな」

「具体的にどうこうするかは作ってきた文書を見てからにして、今はアズサにメシ作ってもらって、それから少しゆっくりしようぜ。俺、腹減ったしさ〜」英明に気を使わせちゃったかな?

「うん、今作るから〜。お台所借りますね〜」とアズサちゃんが席を立つ。

「ありがと〜。あ、そういえばフライパンとか……あった?」

「はい~」


 上にポテチを砕いたのが乗ったチャーハン風なものと、付け合わせのサラダを作り始める。

 あ〜これ、二つとも『あの映画』に出てきた料理と同じだ……一度食べてみたかったんだよね〜。

「アズサちゃん、手際いいねぇ……いい匂い、お腹空いてきた〜」

「――はーい、お待たせで〜す。お皿は適当に大きいのに盛ったから、自分の食べられる分こっちの小皿によそってね〜」

「はい、いっただきま〜す」

「いただきます!」

「めしあがれ〜」

「うま〜! これ、『あの映画』に出てきた料理と同じだね! 一度食べたかったんだよね〜」と思わず口に出しちゃった。

「あ、バレちゃいました? でも美味しいでしょ~?」

「うんうん、これなら毎日でも食べられそう。英明はいいなぁ〜」

「ん? あ、そっか……食べ慣れてるしな〜」

「なんだか感想薄いな〜。やっぱりもうお前ら一緒になっちゃえば?」

「ん〜?」英明は素知らぬ顔。

 アズサちゃんは顔真っ赤にしてるし……やばかったかな? ま、オレニハカンケイナイケドナー。


 お腹も一杯になって心持ち不安も和らいだ気がするけど……。

 しかしな〜、悩んでも身体が戻るわけじゃないけどVRMMORPG BulletSが今日話した事以外にどんな案を出してくるかもわからないし……。

「しかたないけど確定してるのはオレは女の子のままというのと、ここで暮らし続けるには不都合があるってことだよね」

「……それじゃいっそのこと三人で暮らしちゃいません~?」とアズサちゃんがとんでもないことを言う。

「うわ、それは選択肢になかった! さ、三人で暮らすって……同じ家に? オレ、お前らがえっち……」

「っておい! アズサ、んなわけないよな?」

「そ、そですかね~?」

 アズサちゃんはちょっと天然入ってるなぁ。

「わたしそんなつもりじゃなくって~同じマンションに三部屋並びで暮らすのがベストかな~と思って言ったんですけど~。三人一緒ならこの事件?について一番わかってるわけだから、何かあったら秀明くんが守ってくれるし、わたしは二人の面倒、特に女の子にまだ慣れてない忍さんのお手伝いもできると思うんですよね~」

 そっか、アズサちゃんの言う事も一理あるな。さっきの『天然入ってる』は、前言撤回だな……。

「そ、そうだよね〜。あ、あははは」

「だ、だよな〜」

「でもさ、さっきも言ったけど、お前らもうほんと一緒に暮らしちゃっていいんじゃないの?」

「ん〜秀明くんがまだその気にならないんです……」

「……」

 英明はダンマリを決め込む。

「英明、おまえアズサちゃんと付き合ってもう何年経つんだよ? ま、女の子のオレには関係ないけどな〜」

「そっちだよ忍! 俺たちのことよりお前の方が優先度っつーか緊急度が上だろ?」

「あ、なんか英明、逆ギレしてる?」

「ちっが〜う! アズサの言う事! 同じ所に暮らすのは一理ある……あの連中が忍を軟禁か知らんけど、どのみち精密検査と称してあれやこれをするに決まってる! それならオレらで忍を守るために一緒に暮らす必要がある!」

「あれやこれ……ねぇ……」考えるとゾッとする……。

 すっかり英明の中ではVRMMORPG BulletS運営は悪の組織扱いだな。

 ま、オレもあまり快くは思ってはいないけど、今のところアバターと切断されていないくらいで……ってこれは一大事なんだけど、他の実害はまだなさそうだしなぁ……。やっぱりオレってぼーっとしてるのかな?

「忍、今回の事件でのことで一番得をするのは、おそらく精密検査の結果を得られるヤツらなんだぞ? わかってんのか?」

「運営が提示してきたのは、オレに慰謝料と住む所の提供と、あとはどんな内容か知らないけど精密検査くらいしかまだわからないんだから、文書――覚書だか合意書を近いうちに持ってくるっていうから、それまであれこれ考えても仕方がないんじゃないかなと……」

「それもそうですね~忍さんの言うとおりです。今は三人で仲間割れしている場合じゃないと思います~」

「だいたいアズサが三人で暮らすなんて言い出すから……」

「また英明、蒸し返すんだから。アズサちゃんの言う事、一理も二理もって……そんな言葉はないけど、これは逆にこっちから提案してもいいんじゃないかな?」

「そうだな、提案はしてみるべきだな」

「じゃ、決まり。オレの転居についての条件は、英明とアズサちゃんと同じマンションなりなんなりに住むことが条件。それ以外の内容については相手の文書を見てから……ってことで」

「うん。じゃ次は会社の方だけど、明日俺の方から部長にそれとなくVRMMORPG BulletSで強制LOGOUTされて、アバターの姿のままになった事件ってありましたよね〜ってカマかけてみるわ。忍は体調不良で休むと」

「うん、お願い」

「で、その反応を見て話すか話さないかは、俺が決めていいだろ? もし大丈夫そうだったら、『実は……』と打ち明けて、明後日にでもブレザーとあの短いスカートじゃちょっとまずいから、せめてワンピースとカーディガンでアズサと一緒に出社してくれ」

「うん。オレもあのパンツ見えそうなスカートはちょ〜っとね。あ、靴は……」

「靴はわたし買っておきますね。他に入り用なものあれば、食料・飲料とかも明日届けます~」

「本当ありがとう……二人とも……涙出る……」

「いいってことよ!」

「ええ、三人揃ってのチームじゃないですか~! あと、しばらくはわたし忍さんの食事も担当しますから~」

「え?」

「だって、忍さんったらすぐ『食欲ない〜』って食べないじゃないですか……身体によくないですよ~」

「ま、そうだけど……英明、いいの?」

「何で俺の許可がいるんだよ」

「だってさ……」

「気にすんなって。俺もアズサもお前がいなきゃ……」

 ちょっとしんみりしたけど、また三人で夕食をいただき、二人は帰っていった。



 明日、会社の方は英明がなんとかしてくれるだろう。

 ん? そういえばVRMMORPG BulletSの運営には確認してないけど、会社に行っても良かったんだろうか? ま、いっか〜。

 今日は女子化してまだ2日。2回目の風呂……なんだよな。

 昨日は急いでたから、こんなもんかと思ったけどやっぱりまだ慣れない女性の裸におっかなびっくりだけど、これオレの身体なんだよな……。今日こそ身体をチェック!

 おお〜こういった構造なんだな〜とほとんど興味が先走り……あ、なんか気持ちいい……ってヲイ……これ、ヤバい……クセになる……。

 少しは理性が働いたようで途中でなんとかやめて、シャンプーをまた大量に使って――あ、リンスをアズサちゃんに頼むの忘れた――髪を洗って、身体もスポンジで……。

 風呂から上がり髪をタオルで乾かそうとしたんだけど、完全に乾かす前に寝入ってしまった……。

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