第89話

父上の元を退出した僕は、そのまま離れに戻って、江戸城建設の事を聞いていた。結婚の話はしたい訳ではないし、僕は独身が好きだ。それに朝倉征伐の命令が来たそうだ。将軍家は先月、朝倉家のみに再び上洛命令を送ったのだが、無視をされたと。それゆえに討伐を決めたそうだ。父上から詳しいことは後で言うと伝えられた。多分、結婚のことを考えて欲しいのだろうが、まあその話は興味がない。興味無いことはあまり頭に入ってこない。ある程度までが限界だ。それよりは武器の製造の方が重要だし、後は今進んでいる江戸城建設プロジェクトの進歩と予定を進める必要がある。すでにかなりの量の材料を集めている。


来年もこの新しい本拠地とする城の建設のために30万貫の予算が割り当てられている。これで使える資金は70万貫だ。通常の城建設よりも立派なものを作成できるはずだ。僕としては、豊臣秀吉のような、財力を見せつける感じではなく、品の良いものを作りたい。やっぱり名門家は成り上がり者とは違うとわからせたい。将軍家の御所も品がよかった。こう言う屋敷や城の方が僕的には、財力が圧倒的に見せつけている訳では無いが、細かいものがいいのだろうなとわかって、お金持ちだと実感する。まあこのような価値観は人によるものなため、ある程度は権力を見せるためにも金とかの財宝で飾りつけた方が良いのだろうが。


報告によると、江戸城建設はかなり順調なようで、すでに石垣は本丸部分、天守を置く部分は完成している。更にその上に作られた天守閣の為の石垣も完成した。そして、堀を掘る工事と、信頼できる人のみが行っている、地下道や、地下の部屋を作成する工事も進んでいる。こういうのは伊賀者、新たに召し抱えていた甲賀者、そして風魔党にやってもらっていた。彼らも使うはずのものだし、信頼している証だ。


この地下室で誰にも聞かれたくない事を密談したり、重要な資材などを隠す必要がある。それに隠し通路を張り巡らす事で、万が一の際は脱出が容易になるはずだ。結局は総大将が死ぬと戦は終わりというものなのだ。逆に生き延びていたらいつでも再起の目はあるのだから。


そして、任せている忍者たちのうち、伊賀者と甲賀者は特に、僕のおかげで自分らの国が更に発展したと感謝してくれている。だからこそ召し抱えてからの期間が短いが信頼できるのだ。それに、建築においてはやはり一般の兵士たちが知らない方がいいことある。


今回の築城は全ての工程に今川家が開発した耐震なども考えられた新しい手法で作成しているが、明らかに大きいにも関わらず、進みは結構早い。本当に良かった。


また建物はまだ建設されていないが、直ぐに作られるだろう。無事に江戸城の普請に関しての報告を聞いたのと報告書を読み終わったところで、父上の使者が再びやってきた。

「若殿、太守様が、朝倉侵攻の話で、お呼びです」

「わかった。今行く」


「父上、失礼します」

「彦五郎、結婚の件、落ち着けたか?まだ結婚なんて考えていなかったのだろう?それはいけぬ。嫡男として結婚はしてもらわなければ」

「はっ」

「それで朝倉だが、出陣は一月後だ。今回は越前を掌握するだけだ。ここまで大きくなった以上経験もあるし、そこまで気を使う必要はないだろう。後処理はいつも通りで良い」

「はっ、また、越前朝倉を破った暁にはに新たな城を作らせていただきとうございます。周りは味方といえど、若狭を突破されれば終わりですから」

「うむ、そうだな。許可は出そう。しかし彦五郎、其方は現在、江戸に城を築いておるだろう。そちらとの兼ね合いはどうする?築城に長けた家臣たちはそちらにかかりきりだが」

「もちろん承知しております。江戸城建設が最優先です。某は、まだ石垣しか終わっていないとの報告を受けていますが、逆に本丸とかの石垣は完成したと。ということで、早めですが、建物の建設を始めさせていただきます。今、作成しているのは西の丸、西の丸です。あそこは二個同時ですが、かなりの速さ。そして堀の作成も進んでいます。同時進行で始めれば、少しは早くに完成するでしょう」

「わかった。そうするが良い」

「はっ、城の建設の準備もさせておきますが、実際に建設を本格的に始めるのはは江戸の後にさせていただきます」

「うむ。軍勢は自由に使うが良い」

「はっ」

「後は平定が終わったら上様に挨拶せよ。彦五郎がこちらで忙しくしているからか、たまには会いに来て欲しいとのことだ。命令ではないとは申されていたが言っておく方が良かろう。今は幕府との協力体制で権力を握っている状態だ。協力体制は崩すべきではない」

「はっ」


こうして無事に朝倉攻めに関する話し合いも終わった。後、そういえばシベリアの方から連絡が来ていた。無事に、ウラル山脈を超えて、西側を一部得たと。とはいえど巨大な壁と砦、更には堀を作っただけで後は、敵から攻められない限り何もしないつもりだが。日々見張り兵とその周りには常備兵がいるだけで、そこまですごくない。









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