第77話

次の日、いつも通り出仕した僕は、結構すぐに上杉殿と会った。和睦の話を進めたいためだ。武田家から了承は取り付けたのだ。あとは上杉だけだ。僕は武田家が有利な条件を提示している。だから武田の説得はまだしやすかった。とはいえど武田家は海が欲しかったから不満は残ると思うが仕方がない。これ以上いい条件なんて引き出せるはずがないし、僕は将軍じゃないから転封をするのは不可能だ。

「おはようございます。上杉殿」

「おはようございます。今川宰相様」

「それで早速本題に入ってもいいでしょうか。」

「ええ、和睦の話でしょう?」

「はい、その件ですが昨日、武田の叔父上に提案したところ了承を得られました。上杉殿さえ了承してくだされば、解決します。」

「しかしですね。上杉の家臣にも昨日少し相談しましたが、予想通り反対意見でした。我々は負けていません。戦いは平行戦です。せめて半分は我々が保持する必要があります。」

「上杉殿は、戦乱を続けるおつもりですか。義兄上、帝、皇太子殿下の戦乱の世を終わらせたいという願いに反して。私は戦乱の世を終わらせるために動いています。まずは東国からと。少し小競り合いのあった佐竹氏とも領境を確定させ、協力体制になることで合意しました。下野、出羽、陸奥を除けば東国は平和になっていく今に。皆、戦の終焉を望み、それを起こそうとしています。幕府の元に再び結集せんと。」

「わかった。皇太子殿下はわからぬが、帝、上様はあった時に平和な世を作りたいと申されていた。そして今川宰相様をよく協力してくださると誉められていた。公家でもないのに、その若さで公卿に列し、正4位下参議、更には上様が新設された特殊幕政参与役となられているだけに帝と上様の信頼は相当なものなのであろう。和睦を受けよう。」

「ありがとうございます。叔父上、上杉殿、そして私が都合のつく時に講和条件を書いた調印式を行いましょう。この和睦を破られたら私の顔に泥が塗られたと判断致しますので、そこはよろしくお願いします。」

「わかった。よろしく頼む」

「ちなみにいつまで京においでですか。」

「5日後だ。」

「では急がなければ。早ければ明日ともなり得ますがよろしくお願いします。」

「こちらこそ。これ以上戦い続けるのはこちらとしても好ましくない。信濃の放棄は手痛いが仕方あるまい。今川家としての立場もあるだろうし。」

「少し不利なのはすいません。同盟関係上難しくて。」

「わかっておる。今川宰相様の志の高さは若いながら素晴らしい。」

「ありがとうございます。」

はあー無事に受けてもらえてよかった。もっと日本が平和になって、三好とも戦わずに済めばいいが。まあ、奥州制圧の命令がいずれ降るだろうな。あそこは誰1人義兄上に従っていないも同然だからな。いくら遠いとはいえど挨拶にも来ないとは。というより使者も送らないのは非常識だろう。討伐されても仕方あるまい。







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