第76話

無事に予定していた諸大名との会談が終わったあと、僕は、上杉殿に明日会いたいという旨を伝えさせた。そして相手も受け入れた。まあおおかたなんの話かもわかっているはずだしな。明日には返答を決めるだろう。上杉もこのまま戦い続けても、どちらもが疲弊するだけで無益だと。それに僕の記憶だと、次の勝頼と景勝の代には甲越同盟を結んでいた。上杉は同盟国として武田以上に信頼できるだろう。救援要請をしたらすぐに駆けつけてくれるのだから。まあ僕は本当に信用しているわけではないが。しかしあのニ家に和睦をして貰えば、どちらとも関係を深められて良いだろう。後、明日、義兄上にも会いたい。予約をしておこう。


屋敷に戻った僕は父上に呼び出されていた。

「父上、何用でしょうか。」

「上様よりの命令だ。明日、昼食を共に取る。我が妻、妹、母などの家族を紹介しようと」

「はっ」

「彦五郎が明日会いたいとの要請を出したが、個人的な話は昼食後にするとのことだ。」

「はっ」

義兄上から返事が来ないからおかしいと思ったがそういうことだ。しかし将軍家一家と食べるなんて緊張する。しかしなんで父上から伝えられたんだ。別に御所にいる時に伝えてもよかったのでは。謎だ。何か僕が知らない、父上と義兄上の間で話されたことがあり、それと関係しているのだろう。何かわからないが、それが秘密にしている理由か。

「そうだっ!忘れていた。昼食に関しては余も参加する。個人的に話すのは2人で良いらしいが。」

「はっ」

これは絶対何か絡んでいる。謎すぎるが父上は関係することか。一体なんなんだ。教えて欲しい。

「くれぐれも失礼のないようにな。」

「はっ、父上、父上を通じて伝えられるとは昼食会には、親善以外の目的があるのでは?違いますか。」

「それはいえぬ」

「肯定と捉えてよろしいですね。」

「さあな」

「そういえば父上、報告があります。佐竹殿との会談の結果、国境線を確定させて目印を立てることになりました。」

「左様か。其方の自由にせよ。」

「はっ、それでは領境に壁を建てさせていただき、また関所を作成します。」

「うむ。そうせよ」

「はっ」

そして連絡事項を伝え終えた僕は父上の元をさって部屋に戻って考えていた。結婚かと思ったが隠す必要はないだろう。それにぼくにたいして害があることなら父上は教えてくれるはずだ。それに義兄上がそのようなことをするとは考えられない。全くわからない。予想がつかない。僕は結構勘が鋭いことに関しては定評があるのだが。まあ明日の食事会にて、意図をとるしかないか。


それよりも叔父上を説得した以上、どうにかして上杉を説得する必要がある。上杉さえ説得できれば北を除いて東国は平和になるし、蝦夷地や、樺太、シベリアへの道も開ける。大変重要なことだ。明日はなんかわからないが、重要な日になりそうな気がする。それが正解かそうでないかはわからないが。頑張ろう。








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