第78話

義兄上との昼食会は和やかに始まった。ただ不思議なことが一つあった。なぜか僕の隣に義兄上の妹君は座っているのだ。それに政治の話が全くなく内々の親睦会みたいな感じだったが、父上と義兄上は僕とその妹君に話して欲しいようだった。結婚させたいのかもしれないが、だったら言っていてもいいだろう。速攻辞退していたけれど。昼食会が終わったあと、僕と義兄上はそのまま別室に移って話し始めた。

「話たいことがあると聞いた。なんだ?」

「はっ、上杉と武田で和睦をするように斡旋してどちらもから了承を取り付けました。」

「なんと!すごいな。あとはあの三国か。」

「はっ、佐竹とも領境を確定させてこれからは協力していくため、そうですね。」

「うむ。決めた。その三国の大名家に将軍家の婚姻に招待したのにも関わらず来なかったとは謀叛だという疑惑を与えて、討伐を命ずる。後はそういえば佐渡もだな。佐渡も今川領と致す。地理的には越後の方が近いが今川の海軍力はすごい。良き基地となるだろう。」

「ははっ」

「また、治部卿を守護に任じよう。」

「ありがとうございます。後、土佐のことなんですが、」

「なんだ。」

「土佐守護の土佐一条家も同じですので、土佐国衆の中で唯一参上した長宗我部に守護職を与えて、討伐を命ずるべきかと。」

「確かにな。処罰は全てのものにしなければ不公平だ。」

「はっ、後、将軍家直轄領を畿内にて増やすべきかと存じます。」

「うむ、しかし具体的にどこだ。」

「はっ、和泉国丸ごと一国を将軍家直轄領とします。和泉国には堺もありますし、かなりの収益になるかと。山城国の収益だけでは少ないと思いますので。」

「良いが、自治支配であろう。」

「はっ、それゆえに義兄上自ら軍勢を率いて平定なさるべきかと。そうすれば将軍家直轄領にしても不満を持つものが減るでしょう。」

「そうか。わかった行おう。将軍家もしっかりとした財源を持つことは重要だ。」

「はっ、また微力ながら某も調略を行い、義兄上に従うものを増やそうと存じます。降伏したものには奉公衆としての地位を与えて、奉公衆は皆、銭雇いにいたしましょう。領地を与えると面倒ですし、実際皆そうですから。」

「うむ、そうだな。彦五郎の推薦の通りに致す。」

「はっ、将軍家が一国丸ごと直轄領を持つと、義兄上の力も高まりましょう。また、警備なども強化できるゆえに、暗殺からも生き逃れるようになるかと。」

「左様だな。彦五郎、よろしく頼む。」

「はっ、和泉国衆の調略に取り組みまする。また、和泉守護代、松浦一族は守護を追放した無礼者。必ずや、滅ぼすべきかと。」

「確かにな。如何するか。奉公衆だけでは心もとがないが。」

「義兄上、卑怯な手ですが一つ作戦が。」

「なんだ?卑怯でも良い、バレなければな。」

「はっ、我が配下の忍びを使って当主ならびにその家族を暗殺いたします。その結果お家騒動が起きる可能性が高いので、簡単に滅ぼせるでしょう。」

「うむ、わかった。許可を出す。やれ」

「はっ、ただ今回の和泉攻めに関しては裏方を除き、我らは関与いたしませぬ。義兄上より命ぜられた3国を平定する必要がありますので。」

「うむ。頼んだぞ。」

「はっ」

義兄上に提案が呑んでもらえてよかった。これで幕府ももう少し安定するだろうし、権力が強くなるはずだ。後残るは西だが。東には今川家の領地20カ国とこれから平定する4カ国がある。武田家は同盟国だし、佐竹とも協力的な関係を築くことで合意している。上杉とは仲がいいわけではないが、和睦が結ばれたことだし、隣国のものとして、対話を重ねて、いずれは駿甲越の三国同盟もしくは常陸の佐竹を足した四家で同盟を作れたらと思っている。そしたら東国は安定する。そして、土佐の長宗我部とも同盟を結びたい。とりあえず土佐守護就任の件は認められたからいいだろう。こちらに気持ち的には近くなったはずだ。この調子でどんどん関係を深めたい。






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