第69話

義兄上との朝食が終わり、任されていた仕事をやっていた僕の元に坊主が来た。

「今川宰相様、謁見の間においでください。」

「わかった。」

多分毛利家と義兄上の謁見だろう。毛利が今日会う唯一の大名家だ。他の大名家はすでにあっているらしい。僕はそこには臨席していないが。色々堺で忙しくしていたからな。今川軍の軍備拡大は急務だ。20カ国を治める大名家となった今、10万を超える動員力を持っていてもおかしくない。現在の自衛隊は少数精鋭で20万ちょっとだが、僕の考えだと40万人ぐらいいても良いと思う。それに僕らは沢山の備蓄弾薬がいると知っているのもあって、人力だとはいえど、工場のようなシステムを作成している。すでに小銃用の備蓄弾薬は50万発を超えている。毛利に頼まれた通り和平の仲介について口添えしなければな。義兄上も、全ての仲介を受け入れるというわけではないからな。何もかも受け入れていたら、権威が落ちる。


毛利と義兄上の謁見が始まった。僕は何も喋らない。

「上様に恐れながらお願いがございまする。」

毛利が、和平のことを頼むようだ。

「なんだ?もうしてみよ。」

「はっ、大内家と尼子家と我らは現在敵対いたしていまして、その和睦の仲介をしてほしいのです。」

「うむ。考えてみよう。彦五郎はどう思うか?其方の返答次第で決める。」

「はっ、毛利殿は、ここまで一代で上がってきた猛者ですし、恩を打っておいて悪いことはないかと。それ故に和睦をするべきかと。また、三家とも大大名。三家のうち一つが滅ぼされ、吸収すると、力を持ち、上様に成り代わろうとするやもしれませぬ。そういう輩は強力になる程厄介ですし。」

「彦五郎がそう申すのなら仲介の役をしよう。」

「ありがたきお言葉。」

「うむ」

無事に頼まれていた役目は終わった。僕も私欲のためではなく、今川家へ与える良い影響、いやまあベネフィットを考えて、それに見合うと判断したし、幕府にとっても不都合はないと判断した。それ故に口添えを受け入れたし、実際に行った。不利益を被るようなら僕はやらない。これでも結構な策士だしな。


はあしかし、僕以外の人と会っている時は義兄上は将軍らしい威厳がある。僕に対してはカジュアルでいてくれるのだろう。本当に助かる。僕は堅苦しいのが苦手だ。しかし義兄上の様子を見ていると身内のお兄さんではなく、やはり武士の棟梁である将軍だと改めて思い知らされる。僕といる時は優しい親戚のお兄さんみたいな感じなのだがな。どうやってモードチェンジできるのだろうか。謎だ。しかしこれからも、今川家のためを第一にして、次に幕府のため、動いていこうと思う。天下から戦乱をなくすために。






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