第68話

そして、全ての仕事を終えた僕は、屋敷に戻った。ついたらすぐの使用人に父上がいると伝えられた。

「父上、お久しぶりです。」

「彦五郎もな。」

「父上、明日の予定ですが某は、早朝に、御所に出仕し、義兄上と朝食を取る予定です。そこでさまざまなことを話すことになるかと。」

「左様か。上様に余は、明日の午後会う。御所に出仕するのは帝に謁見したのちになるゆえ、明日は別行動か。」

「そうですね。」

「上様はどんなお方だ。余が京に来るのは2度目でな、前回来た時は先の上様だった故、現在の上様には会ったことがないのだ。それに帝に謁見するのも2度目だ。京に関しては彦五郎に任せていたからな、京のことは彦五郎の方が詳しいし人脈もあるであろう。」

「父上、何かわからないことがあれば、藤枝に聞けば良いのです。それに関白様、久我中納言などは某とも親しいですし、朝廷の方々は献金しているためか、今川に好意的です。」

「左様か。それは良かった。」

「幕府は、三好派は警戒する必要がありますが、主な幕臣は好意的です。」

「それは良かった。彦五郎、頑張っているな。」

「ありがとうございます。」

「彦五郎が製造を命じたという安宅船には驚いた。あれはすごいな。あんなの見たら皆恐るし、威厳もある。更に強いなどすごいぞ。異国の船もすごいらしいが負けては困るしな。」

「はっ」

「明日は朝早いのであろう。休んでおけ。しかし京が発展しているようで驚いた。」

「はっ」

父上と義兄上の話に僕は同席しないけれどどうなるのか気になるな。それに父上も京の発展ぶりには驚いていた。今京は応仁の乱より長らく、瓦礫の山だったからな。


次の日、朝早くに起きた僕は素振りをしてから、すぐに身支度して、義兄上の元へ向かう準備をした。


御所に着くとすぐに、昨日と同じ場所に案内された。

「義兄上、おはようございます。」

「おはよう。朝早くから悪いな。食事をとりながら話そうか。」

「はい。」

そういうとすぐに食事が運ばれてきた。食事の内容は今川家と同じようなものだった。今川家では僕の意向もあり、質素だが、将軍家もそうだとは驚いた。

「「いただきます。」」

「彦五郎、美味しいか?」

「はい、美味しいです。」

「それは良かった。」

「義兄上、わざわざ個室の控え室を用意してくださり、ありがとうございます。」

「気にするな。我が可愛い義弟であろう、」

「はい」

「ふっ、しかし昨日の陸奥、出羽のことは面倒くさいな。」

「はっ、某としては伊達、蘆名後は伊達と同盟を結んでいる最上が原因だとは思うんですが。どうにかならないのでしょうかね。恐らく、伊達は陸奥の守護ではなく奥州探題の地位が欲しかったのに貰えなかった不満があるのでしょう。」

「うーむどうにかならぬ問題なのか。秩序を早急に戻さなければな。」

「はっ」

「しかし、彦五郎は可愛い。」

「某は男子です。」

「わかっておる。余も修道の趣味はない。なんか、幼い時の弟と遊んでいた頃のことを思い出すのだ。弟が育った姿に重ねてしまう。弟とは長年会っていないからな。」

「そうですか。」

「そうだ!後余は改名する。」

「何故?」

「結婚を機に心を変え強くなろうと思ってな。新たな名は義輝だ。」

有名な名が誕生したのだ。史実だともう少し後だが、わかりやすくて僕的には良いと思う。

「義兄上、良い名前ですね。」

「そうだろう」

「そう言えば今日なんで某と食べたいと言ったのですか?改名のことを伝えるためだとは思えないのですが。」

「なんでだと思う?」

「わからないから聞いているのです。」

「ふっ、昨日の評定の感想を聞きたくてな。」

「正直に言ってもいいですか。」

「もちろん。余が聞いているのだ。怒ることはない。」

「ただただ長く喋っているだけで堅苦しくて長い。ただ報告をするだけでは意味がありません。議論をしてより良い方法を見つけるべきです。また、あらかじめ話す話題は決めておいて、そのことに関する事柄を書類にして、回します。それで話し合う方が有益です。」

「彦五郎も同じ意見か。余も長いと思っていた。其方の家臣で京都奉行の藤枝美濃介は良い、報告も早く、重要事項を教える。細かいことは書類にして提出してくる。しかし他のものはとにかく長い。出世したいのか自己主張がすごい。幕臣と池田筑後守はまだマシだが、他の国衆だとヤバいほど長い。昨日はマシな方だ。」

「あれでですか?呆れます。」

「そうだろう?其方の意見を聞けて良かった。」

その後はしょうもない幼い頃の話をしながら過ごした。義兄上には独身最後の日を楽しく過ごしてもらいたいものだ。








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