第62話

「上様、一色藤長にございます。今川宰相様をお連れしました。」

「そうか!入れ。」

「今川宰相様、此処からは1人で」

僕は部屋に入った。質素だが生活しやすそうな空間だった。僕はそのまま頭を下げた。音的に襖は閉められたようだ。

「彦五郎、表をあげよ。此処は非公式な場所だ。堅苦しいことは要らぬ。」

「はっ、義兄上、結婚が決まったということでおめでとうございます。」

「ありがとう。昨日も色々な人に祝辞を言われたが彦五郎に言われるのが1番嬉しいな。」

「そう言われると僕も嬉しいです。」

「彦五郎の父も来るのであろう?会うのが楽しみだ。彦五郎を育てたのだ。感謝しないとな。それに少し話したいことがあるし。」

「父上は今日到着予定です。明日挨拶に来るかと。その後、帝に会う予定です。」

「左様か。一向一揆を鎮圧したそうだな。よくやった!今川家は20ヶ国も納めることになったな。世が仕向けたといえどすごいな。普通はこんなに早く巨大化しない。やはり其方はすごい。」

「お褒めに預かり光栄です。」

「もっと楽にな。それに一向宗に力が弱まったということは、いいことだと。門跡を与えないように気をつけないとな。あやつらは余のことを考えていないし、倒そうとしてくるやもしれぬ。しかしそれを倒すとはのう、すごいな。」

「はっ、一揆も所詮は農民ですからきちんと訓練をした兵には負けます。」

「そうか。後其方が派遣してくれた京都奉行、優秀だな。いくら表面的だとはいえど驚くぐらいの回復スピードだ。未だに貧民街があっても覚えているだろう?5ヶ月ほど前の景色を。」

「はい。ひどかったです。疫病も流行っていて、衛生環境も悪く。」

「此処まで活気を戻すとは。楽市楽座は税収を減らすと思っていたが其方のやっている方法はすごい。場所代がかからない代わりに売り上げから税を取り、場所の予約を行うか。犯罪件数も減っていて、幕府、今川家の株は、あがっている。税率も同じで公平だとな。しかし彦五郎と会えて良かった。彦五郎と話すのは楽しい。」

「そう言ってもらえて某も嬉しいです。」

「はっはっは、それでだ、朝倉がきていないそうだな。」

「某もそう聞きました。此処でこなかったら幕府に対する謀反でしょう。」

「そうだな。陸奥ものどもがこないのも気に食わないが、一回は我慢できる。しかしいくら雪に囲まれているといえどな、若狭まで海で行けば無事に来れるはずだ。」

「あくまでも僕が聞いた噂ですが、朝倉は、加賀の一向一揆を今川に鎮められて、とられたのが気に食わないという話が。」

「そういうことか。まあ納得できなくもないが。自身が遅かっただけであろうに。討伐することもあり得るだろう。その時は頼む。」

「はっ、そういえば義兄上、一色殿をわざわざ出迎えにくださりありがとうございます。」

「気にするな。ある程度の格を持っていないと此処まで来れないしな。そうだ!一緒に庭を歩こう。めんどくさい時は花などを見ると癒される。」

「そうなんですか。」

「そうだ。ついてこい。」

「今は雪で花がないが、綺麗だ。」

僕は義兄上について部屋を経って、庭に向かった。襖の跡、更に障子を開けたら寒かったが絶景だというので我慢して草履を履いて、庭に出た。





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