第32話
僕は離れの書斎に戻った。
「竹千代、其方の特技を申してみよ。」
「某は特に何かがすごいというわけではありませぬが、良き家臣を持っています。」
「はあ、そういうことではない。武芸と文どちらが得意か?」
「どちらかというと文です。ただ、武芸もある程度はできます。若殿には父上の仇の憎き織田を討ってくださったので感謝しています。」
「もしだ、仮に余が広忠を殺していたら憎いか?」
「はい。この場で斬り殺してしまうかもしれません。」
「まあよい。余は手を下しておらぬ。余は当時11だ。まだ当時は元服していなかったからな。しかしそのようなことは人前で言うな。心の奥で留めておけ。いずれ人は死ぬ。それが早いのか遅いのかは、運もあるし、善行や悪行をどれだけ行ったのかだ。前世の行いも関わるかもしれぬ。まあ余は神ではないからわからぬが。受け入れろ。仕方がないことだとな。仇撃ちをするにしろ、落ち着いていなければ負ける。それを覚えておけ。」
「はっ」
「小姓としては朝起こしてくれれば良いのだが、余は既に小姓は何人もおる。其方は余につき、仕事を手伝え。また護衛も務めるように。工藤兄弟でも誰でも良いが学べ。強くなければ護衛は務まらぬ。」
「はっ」
「小姓といえど未来の側近候補として遇す。覚悟しておけ。これからは今までとは違い、忙しくなる。余の行っていることは重要だ。初めは書類を運ぶだけなどかもしれぬがいずれは、補佐官とする。」
「ははっ」
これが僕の徳川家康との出会いだった。この世界で家康が天下人になることはないだろうが、歴史上有名になるだけに、天下人になるだけに優秀であろう。頼りにしよう。僕に忠誠心を持ってもらわねば。今川家嫡男として、相応しく、この11カ国もの国々をまともに治める必要がある。それに一向一揆など様々な排除することがあるし、僕こそが天下安寧を築こう。そして大好きだった歴史に名を残す。今僕は、様々な偉人と面会して臣下としたり、殺したりしているが、その偉人の1人に僕も名を連なり、後世でも皆に覚えてもらえるように頑張る必要がある。
「若殿、」
「如何した?関口氏広」
「はっ太守様より、各国に所属する今川家直属の部隊の成立について命じられまして。ここの予定している兵数を書いてあるのですが、発案者である若殿確認していただきたく。人口や、広さ、そして周りにある敵の状況などにより兵数は各国で変えています。」
「そうか」
僕は渡された紙を確認したが本当によく考えられていると思われる兵数で納得できた。
「うむ。これで良い。わざわざ来させて悪かったな。」
「いえ、今川家が発展するのは、一門の関口にとっても喜ばしいことですから。ではこれで進めさせていただきます。」
「頼む」
「はっ」
僕の計画している軍事改革はかなりうまくいっているようで嬉しい。この調子で今川家を強くしていければ良いが。
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