第27話
「義兄上、義兄上は先ほどどちらにもつく意向はないと言っていましたが、一部の幕臣等は三好殿の暗殺を企てたと聞きましたが。」
「ああ、本当に問題だ。三好は怒って人質を出せと言っているが、我が臣だ。庇ってやりたいのだが。しかし一部の幕臣は三好と懇意だしな。それに細川は叔父上を将軍として擁立したいのではないかと疑っている。あやつは反逆者だ。父に逆らい、堺公方を自称していた。細川につくのは叔父上がいる為、抵抗がある。しかし三好にも少し反感がある。余の家臣のことを考えてもな。」
「確かに上野民部大輔(信孝)は義兄上のお気に入りの家臣でしたよね」
「そうだ。そこを処罰することに関しては抵抗がある。余はどちらにつけば良いのかがわからぬ。なるべく中立を保つが。今川も中立を保つのだろう?」
「はい」
「余もそうしたいものだが。将軍の権力もなく、殆ど領地もない故、とても弱いのだ。どうすれば良いのやら。皆、表面上は従うがものによっては全く従わぬ。余に新年の挨拶に来たものは殆どおらぬ。其方は帝の勅命を行っていたから別として他のものは使者でさえもよこさなかった。東国は遠いから仕方あるまい。しかし西国は来れたであろうに。」
「義兄上、まずは兵を雇う銭を得る必要がありましょう。商売でも始められてはいかがですか?」
「確かに有効な手段だが、他のものに反対されるであろう。将軍家の権威も落ちるであろうし。結果、行っておるのは剣の修行をするのみだ。彦五郎は商売をやっているのか?」
「やってはいませんが懇意の商人がいまして、そのものに出資をしています。それゆえにさまざまなことを頼んでいます。事実上の家臣ですね。」
「うむ、余も何かやってみるか。動かなく、時が過ぎていくのを待つのはいけぬしな。彦五郎、今日は其方と話せて楽しかった。また会えることを願う」
僕は義兄上と別れた。義兄上との食事は結局食事というより三好と細川の話で終わった。それもそうだ。現在畿内はかなり不安定だ。後1月もせずに大きな動きがあるであろう。僕も早く駿府に帰り、様々なことをする必要がある。4カ国の平定と国内改革だ。父上に許可を頼んだもののことも知る必要があるしな。
「若殿、飛騨のことで話が。」
「なんだ?飛騨は我々とは関係がないはず。現在内乱中だと聞いたが。」
「はっ、姉小路
「ほう。確か三木は最近急速に勢力を広げ、圧迫しているようだな。」
「左様です。」
「うむ。少し待て。援軍を用意したほうが良いだろう。わざわざ我らに従うのだ。三木は野心が強い。強くなる前に力を削ぐべきだ。赤備えを率いて余自ら行くか。しかし平定後の作業は福島、お前に任せる」
「ははっ」
「双方に臣従を受けいると伝えよ。父上には説明しておく。事後承認だが仕方あるまい」
「はっ」
「若殿、勅使が参られました」
「今行く」
僕は帝から聞いたように勅使により、従4位上に任命されて、京を出立した。次なる戦が待っているようだ。
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