第26話

僕は、帝と対面した後、義兄上の元に向かった。帝と対面したのは辰の刻に対面したが、義兄上と約束していた時間は巳の刻だ。

「義兄上、新年おめでとうございます。」

「彦五郎、堅苦しくするな。表をあげよ。敬語もしなくても良い。帝の命に従い、伊勢、大和、伊賀、志摩を平定したそうだな。彼の国の守護に任ぜよう。これで今川は十五国の守護だ。山名を超えたな。」

「ははっ」

「彼の四国を早く平定してくれることをねがっておる。今川には余を補佐してもらいたい。後ろ盾となって欲しいのだ。その為にはお主らに力を持ってもらわぬとな。」

「しかしながら、戦続きは辛うござる。費用も嵩みますし。」

「しかしな、余は其方らを頼りにしておる。其方らの兵は精強ゆえとても早く平定できるときいたが?」

「左様ですが。」

「頼む。彦五郎が頼りなのだ。将軍家の力は弱まっている。今の畿内の状況を見よ。今川なら力がある。その後ろ盾を得ている余が仲裁を命じたとすると聞く耳を持ってもらえ、きちんと履行されるであろう。余は軽くみられていて、すぐに和睦などが覆される。その状況は困るのだ。今は三好に大きな顔をされているがいずれ、そうはさせぬ。細川や三好に振り回されぬようになる必要がある。父上の頃は六角定頼がいたが今は亡くなり、跡を継いだ六角義賢はそこまでではない。六角は弱体するであろう。新たな後ろ盾に1番相応しいのは京から遠いといえど、将軍家を継ぐ資格を持ち、当主、嫡男ともに優秀な今川だ。それに彦五郎になら、余がなくなったとしても志を継いでほしい。余には未だ子がおらぬし結婚しておらぬ。余の身の振り方次第では殺されるだろう。その時に弟達はどうなるかわからぬ。それに武家の教育を受けておらぬから棟梁には相応しいとは言えん。今川は、家柄も高く、清和源氏の家柄だ。吉良家は没落して、三河にて今川の家臣となっておる。しかしそれも分家だ。余は吉良家より継承の許可を剥奪した。足利が滅びれば継ぐのは今川だ。そうだったら、なるべく大きい領地を持ち、足利を支えて欲しい。もしもの時は後見役に1番相応しい家柄だ。彦五郎、頑張って、東国を平定してくれ。今は守護に任じていないが甲斐や陸奥も望めば任じよう。」

「義兄上、今川家に期待してくださるのはわかりますし、嬉しいですが、戦は大変です。」

「それもわかってもうしておる。余は三好にも細川にもつくつもりはないが、決断をいずれ迫られるかもしれん。何かあったら近江に行くが、生き残れるのかはわからないし、京に戻れるかもわからん。彦五郎、余は今や京の情勢も不安定で何があるかわからぬ。頼む。余の日の本を平和にするという願いに協力してくれ。其方が頼りだ。義弟よ。」

「義兄上、ひとまず4カ国を治めます。」

「頼んだ。お腹空いたであろう?食事を取ろう。」

「はい」


僕と義兄上の話はとても長くなりそうだ。すでに1時間以上話していた。今後のことが不透明なのだ。しかし三好は義兄上には手を出さないと思うが。何が起きるかわからぬ。僕は面倒ごとには関わりたくないのだが。







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