第25話

僕は前に行ってから3ヶ月ほどで再び京に行くことになったのだ。新年の挨拶も兼ねているが、明らかに異常な頻度で京に行っている気がする。畿内の大名でもないのだが。まあそれは良いとして、まずは帝に謁見する。大和との山城国は隣り合っているのもあって、帝と会う前日に旅立っても京についた。この頻度で京に行くなら屋敷を建てても良いかもしれん。しかし当主になったら行かなくなるだろうし悩みものだ。寺に毎回泊まるのは疲れる。そして僕は朝廷に献金した。また、到着の次の日には帝に謁見をしに向かった。

「今川権左近衛中将殿、帝がお待ちです。帝は大変合うのを楽しみになさっておいででした。」

「それは大変喜ばしい事です。西園寺内府殿、ありがとうございます。」

「いえいえ、今川権左近衛中将殿の評判は聞いていますから。是非とも話してみたいと思っていました。関白様も大変気に入られたようで。蹴鞠の腕が上手いとか。流石は名門今川家ですね。片田舎の侍とは格が違う。」

「お褒めにいただき光栄です。」

「気になさるな。関白様には大変お世話になっていてな。関白様と貴公は同年代であろう。関白様も喜んでおられた。自慢された時は驚いたわ。それに貴公は官位は低いといえど公家ではないのだ。大名家は従五位下ぐらいが限界だからな。其方は出世が早いほうだ。さてと帝の元についた。帝、従4位下、源朝臣氏真をお連れいたしました。」

「入れ」

僕は帝に3度目の謁見をした。こんなに謁見したことがある人はあまりいないだろう。

「権左近衛中将、よく参ったな。前にやくそくしていたのを任じよう。従4位下、源朝臣氏真を左大弁、並びに治部大輔に任じる。」

「ははっ、ありがたく受けさせていただきまする。」

「うむ。これで参議に任ずることが可能になったな。今川家が献金をしてくれたと聞いたぞ。感謝致す。」

「ありがたきお言葉。」

「何、気にするな。今川家には感謝しておる。朕の命から3ヶ月足らずで手中に納めるとはな。よくやった。志摩のことは忘れておったわ。伊勢北畠はそこも取っておいたとは。まあ良い。褒めて遣わす。新たに官職に任じたいところだがそれは参議になるまで取っておこう。長幼の序とは言わせぬように考えておこう。」

「はっ」

「京の情勢が不安定だ。義藤が軽んじられているそうではないか。これは困る。左近衛権中将よ、義藤に協力せよ。細川と三好の戦いにて京を巻き込まぬように。」

「恐れながら帝、それは困難かと。細川は京を奪うつもりでしょう。三好はそれを守る側です。細川に全てかかっております。帝が戦を止めるように勅命を出したらいかがでしょう。細川も三好も従うかと。」

「そうだな。そういたそう。従4位上に任じよう。今ここで任じたいところだがな。手続きがある。今日の夜、其方のおる寺に勅使を派遣しておく。明日には帰るのであろう?」

「ははっ」

僕と帝の対面は無事に終わった。もう3回目になってくると帝が御簾をなく会うことが不思議に思えない。帝は気さくなお方だ。早く安寧の世が戻ると良いが。








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