第28話

京を出立した僕は、大和に入って1日休息した後、駐留していた赤備えを率いて、飛騨に向かった。美濃を経過して飛騨に着いたのは1週間後だった。飛騨に入るとすぐに姉小路と江間と会って正式に臣従の礼を得た。その後は兵を出して、戦いの用意をした。三木は野心が強い為、脅威だ。僕は早めに叩き潰す。父上への報告を省いたのは、急いだ方が三木に用意や攻めさせる時間を与えさせず、すぐに落としやすいからだ。今川は大きな戦を、この後あるはずだ。なるべく被害は軽微に納めたい。

「若殿、三木勢が我らの動きを見てか、兵を出しています。」

「そうか、迎え撃つ。出撃せよ。」

「「はっ」」

僕は三木勢が野戦に持ち込んでくれたことに少し感謝していた。別に野戦が得意というわけではないが、城に篭られると厄介だ。絶対に三木は倒し、義兄上に頼まれたことをやらねば。義兄上は今川の勢力が強くなることを望んでいたからこれも褒められるのであろう。しかし今は何があるかわからない。早く行動する必要がある。



僕等も出撃して睨み合った。三木勢は今川家から更なる援軍が来ると考えたのであろう。小次郎と伊賀者にそういう噂を流布させたからな。短期決戦に臨むようだ。睨み合いを始めて一刻もせずに攻撃を仕掛けてきた。今川軍は全て精鋭の赤備えだ。僕は彼らを信頼している。そして実際に今川軍が、三木勢を圧倒していた。

「申し上げます。三木良頼を討ち取りました。」

「そうか!褒めて遣わす。本拠まで一気に行くぞ。」

「はっ」

僕等は野戦に勝つとそのまま三木方の城を攻めて陥落させていった。そして三木の本拠地も落とし、飛騨国を制圧した。しかしよく考えるとこれは武田にとってはかなりの圧迫だろう。叔父上は優秀らしいから今川に戦いを挑むことはないだろうが。このまま行くと少し違うが史実の織田と徳川の同盟みたいになりそうだ。飛騨は信濃に面している。今は上野、飛騨とにほうめんに今川がいるのだ。焦るだろう。まあ武田を攻めるつもりはないから、あちらから戦いを仕掛けてこない限り大丈夫だろうが。


「飛騨は無事に制圧できた。余は駿府に戻り、父上に報告致す。福島真正、後は任せた。1000を預ける。」

「はっ」

僕は普段は自分でやっている平定後の処理を家臣に任せて、父上の元に向かった。今回の独断や、色々話すことがある。義兄上との話も含めてだ。しかし畿内の状況は本当に困る。早く安定して欲しいものだ。僕は早く義兄上に守護に任じられて実効支配できていない4国を治める必要がある。








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