第12話 猛者なんて聞いてない!

 早速俺は十年越しのトラウマゲーのプレイを進めていくことになった。

ゲームの導入からチュートリアルを進めていく。

途中途中のビックリゾーンにヒヤヒヤしながらも俺は久しぶりにしてはまあまあな進行スピードでゲームオーバーゼロでマップを進んでいく。

(来た…)

そして遂に俺のこのゲームがトラウマになった原因のマップに到達する。

早速俺のトラウマクリーチャーが出現する。その瞬間全身に鳥肌が出現する。心なしか冷や汗がコントローラーに滲む。手に汗握るとはこういうことかと思うが一瞬で違うよなと我に帰る。

 

 すると背中をつつーっと細い感触が伝う。

「うひゃあ」

変な声が出てしまう。隣の二号ちゃんは満面の笑みでニヨニヨしている。

トラウマのせいか中々ステージが進まず苦戦してしまっている。もう二回も同じステージでゲームオーバーになってしまった。

「あーあ、もう俺のSAN値はゼロです〜」

俺はへなへなと倒れこむ。

「仕方ないなぁ…ウチが進めたるわ」

二号ちゃんはそうぼやきながらもコントローラーを手に取った。


……二号ちゃんはずいぶんこなれた動きでキャラクターを動かし始めた。

「え?さっき二号ちゃんゲーム下手だって言ったよね…?」

そう俺が話しかけると

「ちょおっと今は…おっとと…黙っといてくれへんかな〜?」

二号ちゃんがコントローラーを握った瞬間ゲームは流れるように進むようになり、一デスもすることなくラスボス戦のマップまで来てしまった。


「ほい」

「ほいって?ええ!?」

ラスボス戦を目の前にして二号ちゃんは俺にコントローラーを渡してきた。

「俺ここまで三十分くらいしかこのゲームやってないけどいいの!?」

「ええよ、だってウチのプレイしっかり見ててくれたんやもん」

「それだけ!?」

「せや、それだけ!あと困ったらサポートできるからな」

俺は再びコントローラーを握りボス戦に向かう。

二号ちゃんは俺が質問するたびに何回もこのゲームをやっているような

口ぶりで的確な攻略法を教えてくれた。ボスのゲージも残り少なくなってきた。すると突然ボスの身体が激しく点滅しだした。

「なにこれ?」

「やばい!即死攻撃や!避けて!」

二号ちゃんが今まで見たこともないほど慌てている。

「ええ!?」

俺は何にも抵抗できずにボスの即死攻撃でゲームオーバーになってしまった。


 しばらく俺がなにが起ったのかわからずぼーっとしていると二号ちゃんが

「まさか神無さん…ウチよりゲーム下手?」

と言う。この言葉には流石の俺もプッツンした。

「はぁ?じゃあ他のゲームでタイマン勝負してみるか…?」

「ええよ!ボッコボコにしてやるさかい…覚悟しとき!」

「じゃあ、負けた人は勝った人の言うことを聞くこと!OK?」

「オッケー!」

 罰ゲームが決まったところでボコボコにするとなるとおなじみ大乱闘のゲームで対戦することにした。

「なんのキャラ使うの?」

俺が話しかけると二号ちゃんはマイナーすぎて絶滅機具種とも言われているキャラを選んだ。しかもドヤ顔とかでもなく真顔で。

俺は普通に生きていた時によく使っていたキャラを選んだ。まあまあメジャーなキャラではある。

そうして戦いの火蓋は切って落とされた。


……結果だけ言おう。

俺はマイナーキャラを使う二号のキャラの戦闘スタイルを知らなすぎて負けたわけではなく、単純に実力差で負けた。二号ちゃんは俺の知らないキャラを何回も使うだけではなく、普通にメジャーなキャラや、はたまた俺と同じキャラでさえ見事に操って俺を負かした。ボッコボコである。猛者である。


「うしゃーい !」

二号ちゃんは拳を天に突き上げ喜ぶ。このまま罰ゲームのことは忘れていて欲しいなぁと思ったのも束の間。

「じゃあ、ウチのお願い聞いてもろてもええの?」

「はぁー…いいよ」

「じゃあ…ヴァイオII一緒にしませんか?今度は二人プレイもできますし…」

「うぐ…あ、あぁー…もう夕方だし帰らなきゃなあ……ぐほぁ!!」

回れ右をして帰ろうとする俺のパーカーのフードをニ号ちゃんが掴んだ。

「ぐぅ…やればいいんでしょおおお!!!」

俺のヤケクソの悲鳴が墓地の地下にこだました。ここに眠る者たちが起きてしまうほど大きく。

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