第7話 お電話なんて聞いてない!〜口帰課長の目線〜
【※今回のお話は口帰課長視点です】
現世は春らしいが地獄に季節って概念はほとんどない。
地獄民が季節を感じる瞬間は『いい酒を飲む時』だと父が言っていたのを思い出す。
「口帰課長〜
「沢山いるんだからそんなにしょっちゅう電話しなくてもいいでしょ…」私はそう小さく愚痴を言って電話に出る。
「はい、口帰です」
「ひっさしぶり〜!新人二人の調子はどぉ?」ひっさしぶりにコイツのムカつく声を聞いて私の額には既に血管が浮き出ているが声には出ないように感情を抑える。
「そうですね…安楽さんという女性社員はとても器量が良いので順調に研修が進みそうです。」
「りょうか〜い!あ、そういえば男の子も居なかったっけ?」
「あぁ…神無のことですか?」
「ちょ、呼び捨て〜てかこの会社、女性社員しかいないじゃ〜ん」
このギャルムーブというか、ノリが私はものすごくイラつく。無条件で助走をつけて殴りたくなる。
「えっと…神無さんは仕事はまぁまぁ出来る社員ですが女性関係がちょっと…心配ですね」
「え?そんなに女遊びするの?若いね〜」
「あ、えっとそういうことじゃなくてですね」
「なによ〜?」
「彼は地獄政府の人手不足対策の対象者で、『女性関係を一歳持ってはいけない』が条件でここで働いているんです!」
受話器の向こうで黒夢部長は大きな声で笑った。
「あっはは!それは大変だね!なんか手は打ったの〜?」
部長は他人事のように私に聞いてくる。
「一ヶ月私自身が監視を絶やさないと釘を刺した程度ですが…」
「うんうん!まーそれで何かあったら責任はウチには来ないからいっか!」
サイテーだなこの上司。
「そんな感じねわかったおっけーじゃあねー」
最後は一方的に電話が切られてしまった。
「はぁ…疲れる…」私はひんやりした机におでこをつける。
「黒夢部長も今日の夜の新人歓迎会くるんかね?」地獄谷が尋ねる。
「来るでしょ…あぁ飲み屋が地獄絵図になりそう…」
「あっはは!確かに特に新人はガンガン飲まされたもんね〜
自分達の歓迎会の記憶がぼんやりと浮かぶが、めちゃくちゃ酔っていたので記憶はほぼ無いに等しいくらいぼやけている。
「あ、そう言えば今日の午後から、神無くんのバス運行研修でしょ?」
地獄谷が私の机に貼られている沢山のメモ用紙を見て言う。
「そうだった!時間もうすぐじゃん!行ってきます!!!」
私は壁にかかった時計を見ながら制服のジャケットを羽織る。
「ふみは昔っから忘れっぽいんだいから〜」
「うーるーさーいー!」
そうして私は神無の待つバスの停留所まで足を運ぶのだった。
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