第6話 監視なんて聞いてない!
俺はハイヒールで階段を爆走する花園さんを追いかけた。(なんでこの人ハイヒールなのにこんなに足速いんだ?)そんなことを考えながら必死に五階までの階段を息を荒らげながら登る。五階のオフィスについた。俺たちがオフィスに着く頃にはもう時計の針はすでに八時半を回っていた。花園さんが
「はぁ…遅れました〜!おはようございますぅ!」と一足先に謝る。俺もつられて
「遅れましたっ!おはようございます!」と頭を下げる。
「神無は置いといて、花園が遅刻か…」口帰課長がそう呟いて俺を睨んだ。
「神無!ちょっと話がある、資料室まで来てくれないか?」口帰課長が俺を呼び出した。「は、はいっ」俺は小さな課長の鋭い眼光に威圧感を覚えた。俺の返事を聞くと課長は不敵な笑みを浮かべて資料室に入って行った。「久しぶりに課長の呼び出しでたね」
「ねー新人くん午後まで持つかな〜」他の女性社員が俺を見ながら謎にニタニタしている。
(午後まで?一体何されるんだ?)
そう思いながら大きなコピー機の横にある資料室のドアを俺は開けた。
そこは俺の想像する紙の資料がぎっしり詰められてた本棚とか、ダンボールとかが積まれているわけでもなくてわかりやすく表現するなら『拷問部屋』だった。重そうな鉄球の着いた足枷、雑巾と水の入ったバケツにスタンガン、地獄の鬼が持ってそうな鉄の棍棒。後は小さな机に茶色い封筒が一枚とライトスタンド、と椅子が二つ。なんか奥にホコリ被ったアイアン・メイデンみたいなのが見えるんですけど…
「こ、この部屋本当に資料室ですか!?」俺の視線の先には表現は宜しくないが『SM嬢』的な黒のテカテカしたレザー調のピチッとした露出度の高い服を着た口帰課長が鞭を手のひらにピシピシしながら立っていた。
「ここは表向きは資料室だ、だが社内での不祥事や、トラブルがあった場合は私と花園がいつもこの対応をするのだが…」
(あの巨乳仏の花園さんがこの服を…!?!?)俺のピンチの時ほどどうでもいいことを考える癖がまたもや発動している。いやでも普通考えるだろ。
「まぁ、今回の件は花園も尋問対象者に含まれてるので私だけで担当させていただく。」
「はい…?」ビシッ
「ヒッ…」
「返事くらいしっかりしろ!!!」しなる鞭が身体スレスレまで飛んでくる。
「はいっ!!」
「本題に入ろう」口帰課長は茶色い封筒から何か紙のようなものを取り出して俺に見せる。俺の全身の血の気が一気に引いていくのがわかった。口帰課長が見せたのは今日の朝俺と花園さんが同じアパートから出てくる瞬間の画像のコピーだった。
「匿名で私の机に置いてあったものだ、でこれはどういうことだ?」冷徹な瞳で課長は俺を睨む。俺はまるで蛇に飲まれるカエルのようだった。
「口帰課長待ってください!!!」勢いよくドアが開いた先には花園さんがいた。俺のことを察してくれたのだろうか俺は花園さんがそんな大胆な行動をするのかと若干驚いた。「なんだ花園、お前もこの場にいたらしいがまさか神無といかがわしい関係じゃないのか?」
「私も何も手を出してないし、神無さんも手を出しませんでした。」
「じゃあそれを証明することはできるのか?」
「…それは…難しいです」
「ではこうしよう、神無は私の元で監視する」
「「!?」」
「ちょ、それどういうことですか!?」
「私はお前に絶対に惚れないからだ。あと花園は通常の業務を進めてくれ」得意げな顔でそう言って口帰課長は『資料室』を出て行った。
「惚れ…ない?」俺は首を傾げた。花園さんはなんでか目の焦点があっち行ったりこっち行ったりしている。
「花園さん、大丈夫ですか?」俺が尋ねると「え!?なんでもないわよ?!!」と慌てた様子で自分のデスクへと戻っていってしまった。そんなこんなで俺はこの日から一ヶ月口帰課長に監視されることになった。らしい…
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