第9話

「アリアナ様、今日はわざわざ私達の魔物討伐に強力して頂き、ありがとうございます」


「いえ、いいんですよ。こういったことは前々からやってきたことですし」


 今日の魔物討伐の部隊を指揮する隊長が私に感謝を述べる。私としては冒険者の時からこういう騎士団の人と協力して魔物を討伐してきたことは何回もあったから別に感謝されることではないんだけどね。


「それより皆さんの準備はもう済んでいるんですか?」


「はい。皆、準備を済ませ、いつでも出発出来るようにしています」


 この国の兵士達は訓練に力を入れていることもあって皆士気や練度が高い。味方として頼もしい限りだ。


「分かりました。それではさっそく出発しましょう」

「はっ!」


 力強く返事をする隊長とともに私は魔物討伐へ出発するのだった。



今回魔物が出現した場所は王都近くの森の中だった。私と騎士団は周りを警戒しながら森の中を進んでいく。


「今のところは大きな異常は見当たりませんね」

「そうですね、引き続き警戒を怠らないように進んでいきましょう」


 私と部隊長はそう言葉を交わし、森の中を進んでいく。


「出たぞ! 皆武器を構えろ!!」


 声がしたのは隊列の後方だった。振り返ると騎士の人達が熊型の魔物を相手にしている。


「こっちにも出たぞ!!」


 前方の方からも同じ魔物が襲って来ていた。騎士の皆が必死に応戦している。私は鞘から剣を抜いて魔物のところまで一気に駆け抜けて行く。魔物の近くに来ると飛び上がって落下する勢いのまま、魔物の首に剣を突き刺した。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 首を刺された魔物はそのまま倒れて絶命する。私は剣を魔物の死体から引き抜いて血を払った。


「ア、アリアナ様、助かりました」

「お礼は不要です。それより気を抜かないで! まだ魔物がやってきています!」


 周りを見渡すと熊のような魔物以外にも様々な種類の魔物が集まってきていた。どうやらこの騒ぎに誘われて出てきたようだ。


「く……数が多い……」

「これくらいなら大丈夫です。私がある程度の魔物を引きつけますから皆さんは残った魔物の討伐をお願いします」

「……しかし、それは……」


 部隊長の言葉を聞かず私は駆け出す。目の前にいた魔物の一体を切り捨てると大声を出して魔物を誘き寄せる。


「ほら! おいしい獲物がこっちにいるぞ!」


 私の出した大声につられてこちらに気付いた魔物達が私のほうに向かってくる。


「よし、うまくいった」


 私はそれを確認すると部隊の皆から魔物達を引き離すために全速力でその場から離れる。私の大声に反応した魔物達は見事に私について来ていた。


「よし、おびき出すことには成功したわね」


 全速力で駆け抜け、部隊からある程度の魔物を引き離すことに成功した私は走るのをやめて立ち止まる。荒れた息を整えて向かってくる魔物達と戦うために剣を構えた。


「私につられてやってきた魔物は……ひい、ふう、みい…10体か」


 その種類は様々で皆、飢えた目で私のことを食おうと狙っている。


「こっちのほうが狙い目だとでも思ったんだろうけど……残念。私結構強いんだよ?」


 にやりと笑うと私は地面を蹴って一気にかけていく、そしてまずは目の前の魔物を斬り伏せた。


「まずは一匹」


 一撃で魔物の一体を絶命させた私は返す刀で近くの魔物に斬りかかる。これも一撃で仕留めた。


「二匹目」


 そのまま勢いに乗って次の魔物に狙いを定める。狼のような魔物が飛びかかってくるが私はそれをかわして斬り伏せ、狙いを定めた魔物に向かって駆け抜けていった。その勢いのまま、四匹目の魔物を斬る。


「四匹目……次はどいつが私と戦う?」


 私は挑発するように魔物達に言葉を投げかける。私が次々に魔物を斬り伏せていったことに恐怖を抱いたのか、魔物達は襲いかかるタイミングを見計らっているようだった。


「そっちがこないならこちらからいくわね」


 私は再び魔物に向かって突撃していく。私の速度に反応できなかった魔物を私は次々に斬り伏せていく。やぶれかぶれで襲いかかってきた魔物の攻撃は余裕でかわしこちらも迎撃して命を奪った。


「よし、これで私を狙ってきた魔物は全滅させたかな」


 死骸の数を確認、10体。うん、私を追ってきた魔物はとりあえずすべて倒した。


「さてあっちはどうなっているかしら? まあ簡単にはやられていないと思うけど」


 仮にもこの国の厳しい訓練を受けた兵士達だ。私が魔物を引きつけて数を減らしておいたから負けているということはないだろう。


「早く戻らないと」


 部隊に戻って早く隊長に状況を確認しないと。私は歩を進める。


「!?」


 ぞくり。


 背筋に悪寒が走る。明確な殺気を感じ私は振り向きざまに剣を抜いた。甲高い金属音が響き、なにかが弾き飛ばされる。地面に突き刺さったのは短剣だった。


「不意をついたというのに反応するか。腕は確かなようだ」


 全身黒ずくめの人間が3名、私を取り囲むように木の上に立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る