第2話
「向こうから婚約を破棄してくれるなんて助かったわ。もう付き合いきれないと思ってたから渡りに船ね」
機嫌が良いまま私は王城の廊下を駆けていく。
「とっ……」
危うくこけそうになる。そういえばパーティの時の衣装そのままで出て来てたな。
「ヒール履いたままなの忘れてた」
鬱陶しいなと思った私は走るのに邪魔なヒールを脱いで手に持つ。
「ドレスも少し邪魔ね」
ドレスも走るの邪魔だったから多少破いて走りやすいようにする。これで大丈夫だろう。
「よし」
気を取り直して私は再び走り出す。さて家に戻ったらどうしようか、いっそのこと家を飛び出して身分を捨てて、冒険者を本業にやっていくのもありかもしれない。どうせ婚約破棄された身だ、傷物の令嬢なんて誰ももうもらいたくないだろう、……両親には本当に申し訳ないけど。
あの馬鹿王子とは家同士の関係で婚約しただけの関係だ。私も両親への迷惑を考えてその時は黙っていたけど本当は楽しくやっていた冒険者を続けたり、領地のことに関わったりといろいろやっているほうが性には合っていた。
「やっと好き勝手出来る! さっさと家に帰ってこれからのことを考えないと」
これからのことに思いを馳せ、私は心を弾ませる。浮き足だった私は廊下の角から出てきた人物に気付かなかった。
「きゃっ。ご、ごめんなさい! 急いでいたもので」
「……!」
私は慌てて相手に謝罪する。相手は男性だった。彫刻のような綺麗な顔、美しい青い瞳に金髪。急いでいた私も目を奪われてしまう。
(この方って……もしかして隣国のフェンリス様?)
フェンリス・ノーウェン。隣国ノーウェン王国の第一王子。才覚に溢れた人物で様々な改革を行なって王国に発展をもたらしていると聞いている。
この人も今日のパーティーに招待されていたのか。
「いや、大したことはないから大丈夫だ。ん? 君は……」
フェンリス殿下はなにかが引っかかったようで声をかけようとしていたが、私は早くこの場を去りたかったので失礼だが無視した。
「よかった、大事にならなくて。では急いでいるので失礼します!」
相手に怪我などがないことを確認し無礼を謝罪をすると、私は再び走り出す。
「あ、ちょっと!」
後ろから呼び止める声には振り返らず、私は王城の廊下を駆けていく。自分の不注意とはいえ余計な時間をくってしまった。
私にとって重要なことはこれからだ。用がないここからは早く去るに限る。また余計なトラブルに巻き込まれたくはないからね。
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