隣に立ちたくて
鈴乱
第1話
『あぁ、また、やってんな』
自覚はある。
また、自分を偽った。
相手が戸惑っているのが分かる。
相手が、恐れているのが分かる。
『もう、癖なんだよなぁ』
”他人に気に入られる自分”を長いこと演じすぎて、自分がよく分からなくなっている。
『……結局、自分は』
変わるために場所を変えて、それでもまだ何年も前の自分を引きずっている。
年を重ねて、経験を重ねても、結局……
「変われなかったみたいだよ」
空を見上げて、誰にともなく、呟く。
強くなったつもりでいた。
でも、ここにいる自分は、こんなにも……、こんなにも弱い。
私は、強い人に憧れた。
優しくて、配慮があって、勇気がある。
自分よりも他者を優先する、強さと優しさ。
「愛」を持った人。
私が出会った中で、一番強くて優しい人。
でも……。弱い私は、その強さと優しさがとっても怖くなってしまったんだ。
あなたと共にある自分が、あなたにふさわしくないように感じてしまったんだ。
許されないよね。
こんな形で逃げ出すなんてさ。
こんな形で尻尾まいて逃げるなんて。
…… 一番、そうなりたくなかったのに。
私もあなたと同じようになりたかった。
でも……、なれなかったよ。
なれなかった。
私は、弱い。
ほんと、見たくもない。認めたくない。
それほどに、弱い。
だけど……だから。
私は、そんな弱い自分とも付き合ってかなきゃなんない。
弱い自分とも仲良くしてさ、”強く”なりたいんだ。
そんで、そんでさ。
もう一回、君と出会い直したい。
君に釣り合うような、君の横に笑って立てるような、そんな自分になりたいんだ。
また、わがままを言ってごめん。
けど、私は君とまた会いたい。
待っててなんて言わない。想っててほしいなんて言わない。
また、会えるだけでいいんだ。
君ともう一度、今度は真っ直ぐ対等に。
もしも、君が許してくれるなら――。
隣に立ちたくて 鈴乱 @sorazome
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます