第4話 自分語り
私が生きていたのは、アナタに恩返しがしたかったから。
きっともう覚えていない、ずっと前のこと。廊下で虐められていた私を、名前も知らない私のことを、命を懸けて守ってくれた。やめなよ、と言ってくれた。あの日から、私はアナタの為に生きても善いって思った。
でも私は、虐められるような、基本的に多くの人から好かれていないタイプの人間。生きている価値も意味も何一つ無い。アナタの為に生きたところで、私は何になる?アナタの邪魔になりはしないだろうか?そう考えた日。それが私が自殺をしようとした日。
勇気を出してアナタに話しかけた日。アナタはあの時のことも覚えていないようだった。あの後名前も聞いてこなかったし、名前を聞けなかったし、多分それ以上の関係は築けないと神様も分かっていたんだと思うんだ。だってアナタは優等生に見えたから。でもさ、一人で居る時、いっつも寂しそうな顔をする。私は不幸ですって言いたそうな、真っ赤なユリの中で笑っているみたいなアナタを、私はどうにかして救ってあげたかった。
アナタのことはずっと優等生だと思ってた。底辺の私が考えるような、どうやったら楽に死ねるかとか、なんで私なんかが生きてるんだとか、そんなことを考える必要も無いくらい幸せに見えた。でもアナタがそうやって生きる意味を探すような人だと分かって、こんな底辺な私と同じように平凡な悩みを持っていることが、失礼だけれど本当に嬉しかった。
ねえ、アナタは生きる意味が分からないって言ってたでしょ。生きる意味なんて本当に存在しない。誰も知らないだけかもしれない。誰もが共通する、その『ニンゲン』という生物が生きている理由を。でも、アナタは生きる意味はあるって言った。でもそれが分からないって言った。私もそう思う。ニンゲンが生きている意味は分からないけれど、私が生きている意味なら、あるって言いたくなる。其処で天才なる私、善いことを思いついたのだよ!あのね、私がアナタの生きる意味になる!
この紙の他にもね、もう一枚紙が入ってると思うんだけど、其処に、私がやりたかったことが書いてある。それを、アナタがやってほしいの。もしアナタが嫌がるならやらないで。これが強制力を持ったものになるならやらないで。
最後に!
アナタに会えて善かった。また会おうね!
また、桜の木の下で!
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