山本の腕の中に立ってしばらくすると、突然、彼女の親友である清水裕子に捕まる。

その瞬間、山本と一緒にいる私たちの顔は、ホラー、サイレント・ホラー以外の形容のしようがないと思う。

学校での人気は山本と大差ない。しかし、それは驚くことではない。可愛くて、優しくて、運動神経もいい。授業中も、それ以外の自由な時間も真面目に振る舞っている。しかし、2人の間には1つだけ大きな違いがある。それは、長い期間でなくても、1度でも2人の近くにいれば簡単に感じられることだ。

山本が太陽であり、その輝く笑顔と楽しげな笑い声が光線のような花のつぼみのように人々を惹きつけるとすれば、清水は逆に、誰もがその静けさに魅了される、手の届かない魅惑的な月なのだ。

- ここで何をしているの？- 彼女は落ち着いた声で私たちに尋ねた。

- 裕子！あなた・・・何か勘違いしてない？- 山本が私を突き飛ばしながら怒鳴った。

- そんなこと、どうでもいいじゃないですか！淡路先生だって、こんなに長い間いなくなったら、喜ばないと思いますし......まあ、私には関係ないことですけど......失礼します......」と、彼女は高慢な態度で教室を出て、部屋中が木の割れる音に包まれるほど、力強くドアを閉めた。

「彼女は怒ったのだろうか？でも、どうして？」と、私はその気まずさに凍りついた。

清水が去った後、私と山本は彫像のように立ちすくんでいた。誰からも愛されなかった私たちの間の気まずい沈黙は、誰かによって破られようとしていた：

- 鈴木、ごめんね、こんな気まずい思いをさせて......」目を赤くし、うつろな顔で、彼女は息をひそめて呟いた。

- いえ、大丈夫です！- 興奮し、声を震わせながら悲しむ彼女の姿を見て、私は手を振りながら答えた。

- じゃあ、そろそろ行かないと、こんなに長い間休んでると先生に殺されちゃうかもしれないから...この話はまた今度にしてくれる？- 彼女は少し頭を上げて言った。

- あぁ・・・はい・・・もちろんです・・・行ってください、全部わかりましたから・・・はい、また今度お話しましょう、そうですね・・・わかりました、これ以上引き止めませんから・・・-右手で後頭部をかきながら、恥ずかしそうに、私は彼女に答えた。

- いや、いいんだ！大丈夫。またね、鈴木！ありがとう！- 彼女は筆箱を持って教室を出て行った。

「ああ...今日はなんて一日だったんだろう...この出来事は、もう今日に勝るものはないんだろうな...」と思いながら、私はゆっくりと教室を出て、学校の出口に向かって歩き出した。

教室を出てドアを閉め、いつものルートで教師用ラウンジに向かうと、そこで突然、数学の川口先生に出会った。

川口先生は、大学を卒業したばかりの若い先生だった。当初から現代的な態度で生徒全員と共通点を見出そうとしていたが、私と数人の生徒を除いて、皆から尊敬されるには至らなかった。私は彼の努力と忍耐を高く評価し、学習プロセスの構築に対する厳格なアプローチなしには何が教えられるかという模範を示している。

彼は背が高く、ミディアムヘアの眼鏡をかけ、中肉中背で、とても素朴な笑顔を浮かべている。

- 鈴木、こんな遅くまで学校で何をしているんだ？- 鼻先までずり落ちた眼鏡を直しながら、事務所を出た彼は私に尋ねた。

- あ・・・はい、ちょっとつかまってしまって・・・川口先生・・・」あまりの驚きに、私は口ごもりながら答えた。

- 1時間も？とにかく、そんなことより、ちょっと手伝ってもらえませんか？- 彼は少年映画の悪役のように眼鏡をゆがめて私に尋ねた。

- ええ・・・もちろん、でも何を？- 私は渋々彼に尋ねた。

- このコンクールの賞状を美術教室に持って行って、淡路先生に渡さないといけないんだ。いいんですよね？急いでないんですか？- まるで陳腐なアニメのワンシーンのように、彼はレンズを輝かせながら私に答えた。

- ああ・・・うん、いいよ・・・」私は声を重くして答えた。

- そうか、よかったな！- 彼は私にそう言うと、その不運な卒業証書を私の手に押しつけ、出口に向かって急いで走り去った。

「なんて運が悪いんだ......」と思いながら、私は3階の美術教室に向かった。

教室に近づき、考えをまとめると、私はドアを3回ノックして開けた。

- すみません、淡路先生、私は...」と私は一歩を踏み出し、事務室に入った。

淡路先生を簡単に紹介させていただくと、彼はあらゆる面で素晴らしい人なので、紹介するのは難しい。何事も一風変わったやり方をするし、山賊のような風貌も、美術を教えるときの教え方とマッチしていない。

しかし要するに、彼は非常に意志が強く、パワフルな男で、その存在だけで周囲のすべてに秩序を植え付けている。中年で背が高く、印象的な筋肉を持ち、サングラスで隠している左目の傷跡もある、すごい人なのだが、だからこそ怖い。

- おっ・・・鈴木、間に合ったか！- 淡路先生が私の言葉を遮り、両手を固定したまま机に向かって動かず、目の前の一点を見つめている。

- 僕が...

- 鈴木です - 淡路先生は、その重低音で私を遮り、同時に椅子から飛び上がった。

- そうだよ！」私は大きな声で彼に答えた。

- どこかのクラブに行くの？- 私の向かいに立ち、腰に手を当てて、彼は私に言った。

何からか、一般的な感覚からか、その時の側近からかわからないが、私は隊列を組んで立ち、まるで何かの戦争映画にでも出てくるかのように、彼の言葉に耳を傾け、答え始めた。

- 否定的です、先生！- 私は大声で答えた。

- 私たちに加わりますか？もし入れば、私の臣下には何の問題もないだろう」彼はにやにやしながら言った。

- そうですよ、先生！

- よろしい！さあ、こっちに来て、この2つのボックスにチェックを入れてください。- 彼は、私がチェックを入れるべきところをシートに指で押しながら私に言った。

- でも、先生、私、絵が描けないんです......」と私は言いながら、シートを持って先生の机に向かった。

- 鈴木君、恐れるな。絵は描けなくても、クラブの歴史に名を残すことはできる！- と、誇りと栄誉をもって私に言った。

「こんな激しさと情熱に満ちた声と顔をしているのだから、絵を描かずに自衛隊に入ればいいのに」と、その時私は思った。

- 先生、失礼ですが、どうしたら自分の足跡を残せるでしょうか？- 自分が何をするのか理解できず、この技術における自分の無力さを思い知りながら、私は先生に尋ねた。

- 君がモデルになるんだ！- 彼は誇らしげに答えた。

- マスター - 取り乱した顔で私は言った。

緊張した雰囲気のせいなのか、彼の話し方のせいなのかはわからないが、彼の言葉は私の中に強い感情を呼び起こした。私はため息をつき、書類の適当なところにチェックを入れ、スピーカーのところに行き、強い感情を感じながら彼を抱きしめた。涙も少し流したが、何かが頭を伝い落ちてきた。

- マスター、これは何ですか？- 私は頭を上に上げて彼に尋ねた。

- 何でもないよ、鈴木、君が来てくれて嬉しいんだ！- 彼は目に涙を浮かべながら私に答えた。

- マスター - 私も涙ながらに叫んだ。

突然、遠くで拍手が鳴り、部屋中に拍手の音が響いた。

振り返ると、クラスいっぱいの女子生徒がいた。どうやら淡路先生との共演に驚き、拍手を送るしかなかったようだ。

- 鈴木君、ようこそ、ここが君たちの美術部だよ！- 拍手が鳴り止まない中、淡路先生は私の耳の高さまで降りてきて、小さな声で言った。

淡路先生に案内された隣の事務室には、様々な作品の衣装が散乱していた。

- 鈴木君、サボってばかりいた川口先生に代わって、やっと君がモデルになったんだから、これからのことを教えてあげよう。- と、衣装棚を物色する私に言うのだ。

「川口先生が私にこの証明書を取るように頼んだ理由がわかったような気がした。

- 基本的に、長い話を短くすると、何時間か授業があるたびに、衣装に着替えてポーズをとるんだ。- 淡路先生から聞きました。

- はい！先生......」私はいつもの熱意を失って、しぶしぶ答えた。

- じゃあ、今日のテーマは『アダムの創造』だから、ここに衣装があるから、着替えて来てね。- 淡路先生は、肉色のパンティとイチジクの葉をつけた手を差し出しながら私に言った。

- 師匠、これ履かなきゃダメですか？- 私は両手でパンティの紐の端を掴んで引き離しながら尋ねた。

- はい、何か問題でも？- 驚きながら、彼は私に聞き返した。

- はい......」沈んだ顔と声で、私は言った。

- それならいいよ、川口先生よりは楽だろうし...」彼はまた私の言葉を遮り、私を一人残して部屋を出て行った。

「まだ一日終わってないのに...」と思いながら、シャツを脱いだ。

アダムのコスチュームに着替えた後、私は気を取り直して教室に戻った。

ドアを閉め、教室に背を向けることなく、淡路先生がカニのポーズで座っている机の前まで歩いていった。

- ああ・・・次はどうすればいいんだろう？- 興奮で溜まった唾液を飲み込んでから、私は淡路先生に尋ねた。

- どうしてそんなに時間がかかったの？後ろと前がわからなかったの？- と、彼は真剣な顔で聞いてきた。

- そのことだよ。

- ほら、この写真のアダムのように横になるんだよ - 淡路先生がスマホの画面の写真を見せながら、私の言葉を遮った。

- ああ・・・どこに横になればいいんですか？- 私は落ち込んで尋ねた。

- 部屋の中央に行って、3つ並んだ椅子の上に横になってください。- 彼は椅子の方を見て言った。

私は長い足取りで椅子に向かい、写真と同じポーズをとって固まった。

結論から言うと、同じポーズを長時間キープするのは簡単なことではないが、枯れ葉をくっつけたTバックをはいた女の子たちに囲まれるよりは難しくない。

椅子の上に横たわったまま、私は事務所にいる人たちの顔をゆっくりと観察し始めた。彼女たちの穏やかで集中した表情の間に、ときおり混乱した表情が滑り、目が合うとすぐにイーゼルの陰に顔を隠した。

私が見ることのできる景色が終わりに近づいたとき、一人の少女が特に緊張していることに気づいた。彼女をこれ以上困らせないために、私は次の参加者に交代することにした。彼女の足は、まるでマラソンを走った後の体力の限界のように震えていた。私は彼女に視線を集中し、数秒後に初めて彼女の目が私と合ったことに気づいた。しかし、それが私の一番近くに座っていて、緊張で興奮して震えていた山本瑠璃だと気づいたとき、私はがっかりした。

「えっ、山本！な、なんで、彼女がここに！？そうだ、清水先生と一緒だ・・・そうだ、先生を待っていると自分で先生の名前を言ったのだ・・・ああ・・・私はなんてバカなんだ・・・」と、私は混乱と恥ずかしさで床に目を伏せた。

その瞬間が起きてから、私は長い間、目を上げずに下を見つめ続けた。しかし、退屈が私を襲い始めたとき、私は気を紛らわすために周りの女子の行動を観察することにした。

ある者は緊張して一本の線を引き、ある者は急いで小さな散髪をしていたが、皆働いており、その全体的な雰囲気のおかげで、私はしばらく落ち着いた気分になり、この下着をつけているだけでも精神的にリラックスすることができた。

しかし、山本が何か動いているのに気づき、彼女の方に目を向けると、また視線が交差した。

「なぜ僕を見るの？待って・・・まあ、そうなんだけど・・・これは彼女の課題の一部だから・・・いいんだけど、でも、なんで彼女は僕の目を見ているんだろう？なんで僕は彼女から離れられないんだろう？"と、緊張しながらも彼女から目を離さずに考えていると、あの時と同じように、今日もお腹のあたりに、以前感じたことのないような予期せぬ温かさを感じた。

まるで何かの説明のように、私たちは目を離すことなく凍りついたように見つめ合った。

"彼女、とても美しい、私...この気持ちを何と比べたらいいのかさえわからない、何...どうして彼女を見ているだけで気持ちいいんだろう...！"と、映画の一コマのように動かずに考え続けていると、股間のあたりに緊張感が高まってきた。

「えっ？なんで！？よし、春人、息を吸って、吐いて、吐いて......ダメだ！しっかりしろ！しっかりしろ、弱虫！そうだ、ソケットだ、穴が2つある！ゴミ捨て場を通り過ぎるネズミを思い浮かべる！どうやら、私の静かで価値のない人生が終わる瞬間だ。- 私はそう思った。

しかし、突然ベルが鳴り、私の果てしない自虐の流れを断ち切った。

ベルが鳴るやいなや、私は手で隠せるものをすべて隠しながら事務所を飛び出し、楽屋に駆け込み、楽屋に閉じこもって床に倒れ込んだ。

「それでも神様はいる......私の名声はまだ終わっていない」私は床に座りながら額の汗を拭い、そう思った。