黄色のスイセン
紬衣
黄色のスイセン
【生まれ変わったらもう一度愛して。】
数時間前___
私の彼氏、
今でも樹の死は信じられずにいる。まだ連絡が来ただけで死体は見ていないし、確証はないと考える。仕事場から急いで樹が安置されている病院へと向かう。冷や汗が止まらない。病院につくと急いで車のエンジンを切り、樹がいるところへと向かう。遺体安置所につくと深呼吸をした後、ノックをして部屋に入る。入ってすぐ、医者らしき人物に声をかけられる。
「
「はい。」
「わかりました。では、」
といって目の前にあった死体の打ち覆いをめくる。
「っ…」
「一度席を外しますね。お二人でお過ごしください。」
樹と顔を合わせた途端、色々な思い出が溢れ出す。
樹は草花が好きだった。樹が道に咲く花を見て喜ぶ様子をよく覚えている。特に今の季節、秋の後半は樹が最も好きだったスイセンが咲く頃だ。
『スイセンの花言葉はギリシャ神話がもとになっているものが多いんだ。しかも、色や品種によって違うんだ。特に黄色のスイセンの花言葉はものすごく切ない。』
こう話していた樹の姿が浮かぶ。更に涙が溢れ、止まらなくなった。泣きすぎて上手く回らない頭で樹が言っていたスイセンの花言葉は何だったのかを思い出そうとする。花言葉よりも先に他の思い出が浮かんでくる。ぱっと、樹が言っていた花言葉が頭の中を浮遊する。
”もう一度愛してほしい” ”尊敬”
間違いでなければ黄色のスイセンと、ラッパスイセンの花言葉だ。何度も何度も樹が口にしていた。
「スイセンには毒があるからお供えはできないか…」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を一度拭い、樹の方を向く。
「ねぇ、樹。もし、生まれ変わったらもう一度愛してよ。私、樹のこと、忘れないからね。」
私はそう言い、また涙を流した。
黄色のスイセン 紬衣 @Sta_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます