第7話 試練の洞窟2

ガバァッ!


襲いかかってくるミミック。


俺を丸呑みするために大きく開いた口の中に


ドクンドクン。


鼓動する心臓が見えた。


「そこだ!」


ザシュッ!


手を伸ばしてミミックの心臓をナイフで貫いた。


その瞬間。


ぐにゃーっ。


ミミックは力が入らなくなったのか俺に体重をかけてきた。


「死んだな」


ナイフを心臓から抜き取るとミミックの死体を地面に落とす。


パァァァァァ。

光となってミミックの死体は消えていった。


一般的にはモンスターを倒せばそのモンスターの素材がドロップすることがあるけど、ミミックだけは違う。

ミミックにはドロップ素材がない。


しかし、その代わりにミミックに食われた者の所持品などがドロップすることがある。


そういうことは原作知識として知っているので、そこそこ期待しながら見ていると


【SSR:ドラゴンソードがドロップしました】

【スキルボード(体術)がドロップしました】

【SSR:ドラグーンブーツがドロップしました】


色んなものがドロップしていた。

それを回収しながら思う。


「ここでミミックに食われた奴はかなりのやり手だったんだろうな」


ミミックはモンスターとしては特殊で基本的にこちらを一撃死させてくる。

そのためレベル差なんていうものは意味をなさない。


ミミックだけはレベルという概念を無視してくる。


のだがそれはこちらも同じだ。

こちらも弱点さえ攻撃することができればレベル差を無視してミミックを倒すことが出来る。


つまりミミックを相手にする時に必要なのは経験でも強さでもなく、ただ【知識】だけ。


それだけだ。


アイテムを拾っていた時だった。


ブゥン。


目の前にホログラムのようになにかが出てきた。

それは人の形をしていた。


よく見ると人間のようだった。

竜騎士風の姿をした女の人だった。


その人影が話す。


「ミミックを倒してくれてありがとう少年。私の無念を晴らしてくれてありがとう」


そう言って微笑んでくれる。


(これは残留思念のようななにかか)


この人の無念が産んだ光景なのだろう。


「そこに落ちているドロップ品は好きに持って行ってくれ。死んでしまった私には不要なものだからな」


そう言って貰えると盗人みたいな少しの罪悪感も消える。


ほら、日本で例えるなら被災地に盗みに行くような行動に近いのかもって心のどこかで思ってたから。

本人に言ってもらえると気分が軽くなった。


ドロップ品を身につけていると亡霊は言った。


「目当ては果実かい?それならそこに落ちているから持っていくといい」


どうやら俺がなんのためにここに来たのかを当てたらしい。


たしかに見てみるとそこに果実が落ちていた。

でもこれは……。


「金色?赤じゃないのか」


俺が持ってこいと言われたのは赤い果実だ。


でもここにあるのは金色。


「ん?ここの果実は金色だよ」


そう言ってくる。


腑に落ちないところもあったが、まぁ果物だって色が変化することくらいあるかと思った。


俺は細かいところはそんなに気にしない人間だ。


楽な道があるなら進むし。


ということで果物も貰うことにしよう。


あっさり手に入ってしまったな。


「よし。これでこの洞窟から出れるな」


本当はレベリングでもするためにきたんだけど、この洞窟はそれどころじゃない気がするから早く出たいと思ってた。


なんというか肝試しにきたらガチの心霊が出てきたようなそんな感じ。


ということで部屋を出ようとした時だった。


「少年、良かったら頼まれてくれないか?」


亡霊はまだ俺になにか用があるらしい。


「【最果ての魔女】に伝えて欲しい。しょうもない死に方をしてしまって申し訳ない、と」


【最果ての魔女】は聞いたことがある。


というより(一方的に)よく知っている人物だ。


原作に出てきたキャラ。

凄腕の魔法使いで作中トップクラスの実力者と言われ、弟子を何人も取っていたと言われているような人。


ということはこの亡霊はその魔女の弟子といったところか。


「それから、手紙も届けてもらえると嬉しい。最後までみんなに迷惑をかけてばかりだったな」


【とある竜騎士の手紙を受け取りました】


それからスゥ……と消えていった。亡霊。


そうしてその場に残されたものがある。



【竜騎士のメモリア】



それは薄い青色で四角形のアイテムだった。


これも知っていた。


「まさか、こんなところで手に入るとはな」


【竜騎士のメモリアを手に入れました】


俺はそれを獲得してからこの場を後にすることにした。


(あの人には悪いけどいいものを手に入れてしまったな)


そのときだった。

ドォン!ドォン!ドォン!


すぐ近くにミノタウロスの足音が聞こえてきた。


(ワープスイッチでも踏んだか?じゃなきゃこんな近くにはいないよな)


舌打ちしてると入口のところにミノタウロスの姿がみえた。


そして俺と目が合った。


そのミノタウロスはさっきの個体。



名前:ミノタウロスレジェンド

レベル:985



「ブモォォォォォォォォォオォオオォ!!!!!」


吠えるミノタウロス。


「時間が無い」


俺は呟く。


「メモリアセット」


【メモリアをセットするスロットを選択してください】


〇〇〇〇〇

↑・・・・



カチッ。

俺はさっき拾った【竜騎士のメモリア】をセットした。

その瞬間


ドッドッドッドッドッ!


俺に向かって突進してくるミノタウロス。

シーナはこんな状況でも俺を信じているのか逃げようとしていなかった。


なら期待に応えないとな


「『【シャイニング・グングニル】』」


さっきの女の人の声も重なった気がした。


右手に光の槍を作り出して俺はそれをミノタウロスに向けてぶん投げた。


狙いは正確に胸。


グサッ!

槍は突き刺さって動きを止めるミノタウロス。

さらに追撃。


「『【ジャンプLv85】』」


トッ!


クラウチングスタートのような姿勢から一気にミノタウロスに向かって飛びかかる。


そして、さらに光の槍を作り出した。


「『【シャイニング・インパクト】』」


渾身の力でグングニルを叩き込む。

心臓に向けて。

一瞬で光となって消えていくミノタウロス。



【ミノタウロスレジェンドを倒しました】

【レベルが上がりました。レベル857】



着地した。


そのときシーナが駆け寄ってきた。


「なんだかんだやっぱり倒せてしまうんですね」


なぜかにんまりしてた。


そのあとにシーナが聞いてくる。


「でも今の動きはなんなんですか?まるで全部知ってたみたいな」


俺はシーナに解説することにした。



【メモリアについて】

人々の経験や記憶がアイテム化したもの。

主に持ち主が死んだ時にアイテム化して生成される。


それを取得した者は【メモリアスロット】に装備することで、経験や記憶を引き継ぐことができる。


だが、すべて引き継げるわけではなく、生前その者が極めたステータスのみが対象となる。



例)


レイナス(竜騎士のメモリア装備時)


名前:レイナス

レベル:857

攻撃力:2571

防御力:2571

体力:8570

魔力:8570


スキル:

竜騎士Lv752

剣術スキルLv1


所持技能:

ジャンプLv85(レベルによって性能が変化)

シャイニング・グングニル

シャイニング・インパクト

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