第4話 原作とは違う反応

翌日。

俺は父親に呼び出されていた。


「さて、レイナス」


父親……パパイヤに答える。


「なんでしょう?」

「お前の活躍のことについては耳に入っている。ジャイノスくんとの決闘に勝った、と」


そうしてパパイヤは俺の目を見てこう言ってきた。


「【親睦会】で行われる決闘だが実はな子供たちの実力を見るという意味があったのだ」

「はい」

「そこでお前は実力を示した」


そう言って机の上に地図を広げたパパイヤ。


そうしてひとつの洞窟を指さした。


「【試練の洞窟】だ」


試練の洞窟、知っている。


原作のジャイノスが修行した場所だ。

ここに向かってからジャイノスはすごく強くなったらしい。


てことは


(俺も行けば強くなれるのかもな。俺は力が欲しい。いずれ来る破滅を回避するために)


ちなみに俺の死因は詳細が不明だ。


死亡者リスト

・レイナス



一応スネ〇ポジなのに、死亡描写がこれで済まされる悲しいキャラ。

何が起きるか分からないから少しでも強くなりたい。


「この洞窟に向かう気はないか?実はな親睦会で結果を出した子供のみが入れる洞窟なんだ」


とのことらしい。


(原作では主人公が入ることのなかった場所か。興味はあるな)


よし。


「行きましょう」

「注意しろよ。ここにいるモンスター達は強いからな。それと全体的に【斬撃】に対して弱い。【斬撃】武器を用意しなさい」

「はい」

「それから一人だけお付を付けることができるが」


そう言われて俺はひとりの女の子の名前を口にした。


「シーナを連れていきます」



パパイヤが別のところに電話をかけ始めたので俺は部屋を出て散歩していた。


するとあちこちから女の子が俺を見つけて駆け寄ってきた。


親睦会に参加していた貴族の令嬢だ。


理由は簡単だ。


俺とお近付きになりたい。


貴族というものはたいへんらしい。

こんな小さな頃からせっせと婚約者を探さないといけないらしい。


「レイナス様。昨日の決闘。素敵でしたわ♡」

「レイナス様。お時間ございませんか?」

「レイナス様。お話したいのですが!」


全員俺と話したいらしい。


(みんなかわいいな、状況が状況じゃなかったら話くらいしてもよかったんだが)


俺は首を横に振る。


「悪いな。これからの俺の時間は一人用なんだ」


スネ〇みたいなことを口にして俺は歩いていく。


惜しそうに見ている3人の視線を感じながら歩いて俺はシーナを探していたのだが、その途中だった。


「レイナス兄貴!」


聞き覚えのない呼び名で呼び止められた。


そちらに目をやると


「ジャイノスじゃないか」


俺がそう呼びかけると頭を下げるジャイノス。


「目が覚めましたよ兄貴。このジャイノス。あなたにボコボコにされて……」


なにやら言いかけてるジャイノスに言った。


「興味無い。俺に関わるな」


そう言って歩いていくことにしたが、後ろから


「レイナス兄貴……分かりやした。俺にはまだあなたの横に並ぶ資格はないということですね」


そう言っていた。

別にそういう話じゃないのだが、訂正するのも面倒なので無視しておく。


(それにしても原作とは立場が逆転したな。俺が兄貴分っぽくてあいつが子分か)


現実というのは少しの行動でいとも簡単に変わってしまうものらしいな。


ということは


(俺の滅びの未来も変えられるかもしれないな)


そう思うと俄然やる気が出てくるものである。


まぁまだまだ滅びの未来は先な訳だが、それに向けて鍛錬しなければ。


シーナを探していたのだがやがてスグに見つかった。


近くのお店で買い物をしていたらしい。


「なにか見てるの?」


シーナに声をかけると


「れ、レイナス様?」


驚いたような顔でこっちを見てきたのだが、俺の目はシーナじゃなくて店に置いてあったものに向いた。


「これは……」


俺は店の机に置かれていた汚い平べったい石を手に取った。


その様子を見ていた店主が声をかけてくる。


「その汚い石ころが欲しいのかい?ちっとも売れないしなんか買ってくれたらおまけするよ」


そう言ってくる店主。


俺はシーナに目を向けて聞いてみた。


「欲しいものがあるんじゃなかったのか?」

「は、はい」


シーナは髪飾りを買っていた。

それで石をオマケしてもらった。


横を歩くシーナは嬉しそうにしていたが俺はずっと石を見ていた。


「そんなにジロジロ見てどうしたのですか?」


説明するよりは見せた方が早いと思って俺は呟いた。


「【スキルボード】」


するとブゥンとウィンドウが出てきた。



【剣術スキル】

レベル1

レベル2

レベル3



と、出てくる。

レベル1以外は灰色の文字。


それを見て目を細めるシーナ。


「な、なんなんですか、これは」

「スキルボードっていうアイテムだよ」


まさか俺もこんなに早く見つけられるとは思っていなかったけどさ。


「これはスキルを持たない人間にスキルを与えるアイテム、と言えば分かるかな?」


コクッコクッ。


頷いてくれるシーナ。


「で、でもそんなアイテムあるんですね」

「俺もこんなところで見つけると思わなかったけどね」


結構レアなアイテムだしね。

それをまさかオマケしてくれるなんて。


(価値が分かってなかったなあの人)


まぁ仕方ないか。

これは基本的にダンジョンでしか手に入らず、効果を知る人も少なかったり多かったり……みたいな曖昧な説明をされてたし。


(俺も原作知識がなかったら普通に汚い石としか思わなかっただろうしな)


そんなことを思いながら俺は呟いた。


「装備欄」


ブゥン。


開いてくる装備欄。


その中の【アクセサリー】の項目を選んだ。


【セットするスロットを選択してください】


〇〇〇〇〇

↑・・・・


一番左の装備欄に設定した。


すると


【剣術スキルレベル1を獲得しました】


と表示される。


後は戦闘を続ければ勝手にレベルが上がっていくという寸法だ。


今日は原作でもいっさいスキルのなかったレイナスにスキルが追加された記念すべき日となった。


それに


(試練の洞窟のボスモンスターはたしか【斬撃】が弱点だったな)


ってことで。今の俺にとってちょうどいいものをちょうどいいタイミングで手に入れられたことになる。


さて、あとは試練の洞窟に行くだけだ。



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