第3話 一週間後

1週間訓練した俺は父親に連れられて親睦会へとやって来ていた。


原作通りのメンツが集まってるようだった。


まず、ジャイノス。

それからノブリス。


ノブリスは主人公でいじめられっ子だった。

主に俺とジャイノスにいじめられていた。


それから力をつけて一番強くなるというのが原作の流れだ。

ここに集まった奴らのことをそんなふうに分析していたら


「おい、また会ったなチビ」


声をかけられた。

振り向くとそこにはジャイノス。


「今日お前は俺の子分になる日だぞ。呼び方は覚えてるな?ジャイノス様だぞ」


ジャイノスは俺より2回りくらい大きい。

見た目だけなら気圧されるが俺はおじけずに言い返す。


「もう勝ったつもりなのか?まだ勝負は始まってないんだけどな。ずいぶんと未来に生きているようだ。その気楽さが羨ましいよ」


そう言ってみると照れたような顔をしたジャイノス。


「なんだ?う、羨ましいのか?俺が?照れるぜ」


皮肉で口にしたんだけど皮肉が通じてないらしい。


そうしてジャイノスは続ける。


「俺が羨ましいのか。羨ましがられるというのは悪いことじゃないな。気分がいい。ということで俺からもお返ししてやる」


スゥ〜。


息を吸い込んで。


「んがぁぁあぁぁぁぁ!!!!!ほげ〜!!!!!」


大声を出してきた。


(声がでけぇよ)


思わずその場に膝を着きそうになるくらいの大声だった。


周りの人間もこちらを見ていた。

それでこれ以上絡んでくるのはやめるジャイノス。


「へへっ。清聴ありがとな。ジャイノスリサイタルのときはお前を最前列に招待してやるからな!ありがたく思え!」


ズンズン歩いて去っていった。


そのときにジャイノスの口笛が聞こえたんだけど。

ご機嫌なようでリズムに乗っているようだった。


(さっきの叫び声はもしかして歌のつもりだったのか?)


たぶん、そうだと思う。


そういえば原作でもとんでもない音痴という設定があったな。

その歌の破壊力はまさに兵器級という設定。


原作でも【増幅魔法】という魔法を使い音を大きくして攻撃していたな。


(やっかいな設定を思い出したな。あの【歌】の対策も必要だな)


実際に戦い始める前に思い出せてよかった。

耳栓でもしていこう。


ひとまず俺はパーティを回ってみることにした。

この【親睦会】はパーティのようなもので食事なども用意されている。


1種のお祭りに近い。


そんなお祭りをシーナと歩いてた。


『メイドとして付き添うのは当たり前です』というのがシーナの言い分らしい。


そうしてしばらく歩いてたらシーナが耳栓を持っていたことを思い出す。


業務上騒音がなる事もあるから持っているのだ。


「シーナ耳栓持ってたよな?」

「持ってますけど、それが?」

「貸してくれないか?」

「すみません。一セットしか持ってなくて」


それは耳栓を共有するのが申し訳ない、ということだろうか。


「俺は使用済みのでいいよ(洗うし)」


顔を赤くするシーナ。


なんでだ?そんなに恥ずかしがったりすることじゃないと思うけど。


「は、はい。それでしたら」


ゴソゴソ。

取り出して渡してきた。


「大事にしてくださいね」

「え、そりゃまぁ」


俺がそう答えるとなんだかシーナは幸せそうな顔をしていた。


(なんなんだ……?)


まぁいいか。

それより、軽く食べておこう。


このあと動かないといけないからな。


俺はとりあえず肉を食べることにした。

何かを食べるとしたらとりあえずこれだよね。


シーナと喋りながら肉を食べていると。


ゴロゴロ。


遠くで雷が鳴っていた。

そして、空の方は暗くなり始めていた。


「雨は降りそうにないけど、天気悪いな」


これじゃ反射作戦が使えなくなるが。


となると正々堂々と戦うしかなくなるわけだが。


(なんとかするしかないか)


そう思ったときだった。


タッタッタッ。

父さんが走ってきた。


「レイナス。父さんは今から急用がある。お前の試合は見られないが許して欲しい。それとこれからのことはジャイノスのお父さんが指示をしてくれるから従うように、ではな」


そう言って父さんは走っていった。


なにやら忙しそうな様子だった。


まぁ、忙しいなら仕方ない。


俺はその後もシーナとしゃべりながら試合が始まるのを待つことにした。



時間になり俺はジャイノスと向かい合っていた。


耳栓はしているので【歌】への対策はばっちりだが


(結局晴れなかったか)


太陽が出ない。

反射作戦は使えない。


(まぁ、どのみち戦闘内容が模擬刀だから太陽が出てても反射なんて無理なんだけど)


真剣なんて危険だし、『真剣でもいいぜ』なんてジャイノスが勝手に言ってるだけだったらしく模擬刀になった。


つまり真っ向からぶつかる必要が出てきた。


ジャイノスが口を開く。


「うし。俺は準備万端だぜ」


俺も既に準備完了なことを伝えていたので。


今のジャイノスの声掛けで戦闘は始まることとなる。


「戦闘開始」


戦闘開始!


ダン!

ジャイノスが床を踏み突っ込んできた。


そして、ブン!


「なんで避けてんだ?てめぇ」


ブンブンブン!


何度も振ってきた拳を全て避ける。


剣を持っているが使っているのは拳だった。


ジャイノスらしいと言えばジャイノスらしい。


「遅いな。兄さんの剣の方がもっと早かった」


この一週間ひたすら兄さんには本気で相手をしてもらった。


現役の騎士の本気を相手にしてきた。

俺には才能なんてなかったけそ、訓練のおかげでこの程度の速さは問題にならない。


そんな俺に子供の拳が当たると思っているのだろうか。


「なんだと?!冷めたナスのくせに生意気だ!」


そう言いながらジャイノスは歌を歌った。


避けられたら終わりの物理攻撃と違って【声】による攻撃は避けようがない。


「ほげ〜!!!!!!!」


しかし


「悪いが、効かないんだ」


ズバッ!


俺は模擬刀を振り抜いてジャイノスを倒した。


原作ではHPを0にすれば相手は倒れる。


俺は今の一撃でそれを行っただけだ。


「あがっ……」


その場に倒れるジャイノス。

戦いはこれで終わった。


「ジャイノス。お前には伝えることがある」


俺は伸びているジャイノスに向かって口を開いた。


原作では意外と憎めない奴というイメージがあったが、俺は別にこいつのこと好きでは無い。


だから


「俺にもう関わるな。お互い得はないだろう」


そう吐き捨てて俺はこの場を後にすることにした。


この決闘を見ていた観客たちからはパチパチと拍手が響いていた。


レイナスがジャイノスに勝つ、これは原作ではありえなかっただろう流れ。


俺は着実にストーリーを改変しているだろう。


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