第5話












まぶしいって顔、している。


「また入ってたのか」


「うん、好きなんだ。奏多くんも、ね?」


手を取られ誘われる。


「晩飯の用意しないと」


「簡単でいいよ?」


「買い物してきた意味をだね」


「カップラーメンでも君とだったらご馳走だよ?」


「引っ越し初日で」


ご馳走の仕込みをしたかった俺を双葉が引っ張り、キスして強制的に黙らせる。

ちょっと強めにキスし返したら、双葉が「あぅぅ…」と逃げてった。

それでもあきらめてないようで、むしろ火がついてしまったみたいで、


「奏多くん、好き…」


俺の手を取り、手の平にキスしてくる。

くそ、可愛い。

俺は仕方なく、本当にしっかたねぇなって、押し入れの上段に上った。

すぐに抱きしめ合う。

双葉が下、なにも履いてないことに気付き、小ぶりなお尻をやんわり掴む。


「あん…」


甘い声が耳を掠めた。

ワザとだって分かってるけど、煽られてしまう。


「双葉、こらぁ」


「あん…なぁに…奏多くぅん…」


「俺がスーパーで買い物してる間に、ナニしてたんだこらぁ」


「んぁん…奏多くんのこと…想像してたぁ…」


そんなことを甘えた声で言いながら絡みつかれたら、舌なめずりしか出来なかった。


「えっちだなぁ」


「うん、奏多くんにだけ、なの」


双葉はそう言って、俺に口付ける。

ちゅうって吸ってくる。

言葉通り、双葉は俺だけの双葉だった。

あの日からずっと、双葉は俺にべったりだ。

俺はそれが嬉しかった。

大人しくて物静かで穏やか。

他人とはどこか線を引き、親しい人は作らない。

昔となんにも変わってない。

だけど、俺にだけ別側面を見せつけてくる双葉。

可愛くて、仕方がなかった。

好きって自覚したら、ますます可愛いって毎日思ってる。

あの日、双葉の家に行ったことは正解だった。


「かなたくん…すき…」


目の中にハートが浮かんでそうな声色だった。

可愛くて、しゃーなし。


「うん、俺も大好きだよ、双葉」



END押し入れで君と

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