第5話 従兄姉妹 010c
10歳の誕生会をセルシャで行うと父に言われた
今迄はイムールで行っていたが、上級貴族の子の遊び仲間と疎遠になり、
周りに同世代の知人はいても、友人が居ない為、この数年はパーティーも
盛り上がらず、事情を知る父が伯父に相談し、従姉妹達、アンナとリンダと
共に開催される事になった。
セルシャ帝城
セルシャ帝城にボスでコニーと来ている、現在コニーを連れて探検中だ。
物心つく前は何度か来たらしいが、城で遊んだ記憶全く無く、
物心がついてからさえイムール城内ですら必要な場所しか知らぬ
伯父に大人しく夕刻迄待つ様にと釘を刺され、帝城での暇潰しをする羽目に
成つて迷子に成らぬ様に徘徊…探検中。
マイクのイムールでの生活の殆どが城外で、ワイパーンに乗り、武術を習い、
狩りをして野宿さえする、金銭の無心もせず、仲間の生活をも支えている、が、
余りの放蕩を見かね、作法や習い事をさせると、数日後には結果が出ている
「教える事が御座いません」と教師役に言われてしまう。
能力で学習する為教える者と同等になる、立ち居振る舞いにも気品が在り、
此れ以上文句の付け様が無く、結局は後継ぎでも無いし…と甘やかせてしまう
奥に近づくと「リンダ様ー」「リンダ何処じゃ、何処に居るのじゃ」
奥手からこの辺り迄、数人の呼ぶ声が聞えて来る、リンダは従妹の名前だ
「迷子」咄嗟にその言葉が浮かぶ、城には仕掛けが結構ある、古い城程多いのだ
この伯父の城は改修された物で、仕掛けはそれ程では無いだろう。
王族の脱出や追跡者をまく為に存在するのだが、罠も存在するので要注意
「コニー向うの階段の横迄戻るよ」「何故ですか?」
「探し者、あ、ここ」ここと言われてコニーはまごつく
「その壁際に立って、床を見てごらん」「埃の跡が薄っすらと半丸に」
「壁の色が違うでしょ」「ここだけ綺麗で日焼けしてないですね」
「回転扉だね、ロックが有る筈だけど、…飾り物が多分外されてる」
コニーを引き寄せ壁を押す、開いた扉の向うは即階段で、トラップを兼ねて、
深めに一段目を下げて有るので、不要意に降りると、足元から崩れ落ちる
その階段の一段目に女の子が気絶していた。
階段の幅が広くなく、急な勾配で深い、転げ落ちず運が良い、
二人で助け出し床に寝かせる「リンダはここだよ」大声で叫ぶ
人が集まって来るが、診てていく、息をして出血もおかしな捻じれも無く、
瘤が出来た程度で済んだようだ「ヒール」淡い光が消え、リンダが目覚める
「うーん、あれ?、私壁が崩れて落ちた筈じゃ…」
「リンダ心配したのじゃ、大丈夫かの?」
「アンナ心配させたわね、何処も痛くない大丈夫よ」
「ああ、そこの者がヒールを掛けたしの」
「とりあえずリンダをベッドに連れて行って、一応医者を呼んであげて」
運ばれて行くリンダ、残るアンナと事務方が一人
「覚えて居らぬが、もしやお主が従兄のマイク殿かの」
「そうです、僕にも記憶が有りません、アンナ姫」
「お話し中、申し訳ありませんが、発見の事情を教えて頂きたい」
相手が子供でも王族、その会話に割って入る「無礼」な申し出だが
小声で「解かった、ここに回転扉が…」経緯を説明する
「飾りがロックで隠し扉…磨きに出したあれ…この僅かの埃と色…」
しきりに感心して、扉を見分し、皇帝への報告後、調査は行う様だ
「解りました、帝にはその様に伝えます」辞していく、帝に近い者の様だ
「リンダの元へむかうゆえ、其方らも来るのじゃ」
「私はメイドですので…」「噂は聞いておる、構わぬ共に来ればよい」
奥の王族のプライベートへ向かう途中で、王子の一人とすれ違う
「何だその餓鬼は、見た事が無いな何処の坊主だ?」
アンナの態度から従兄と判断して挨拶する
「初めまして、マイケル・イムリー・ドラゴニアです、よろしくお願いします」
「リンダの元へ行くのじゃ、従兄だから絡まないで欲しいのじゃが」
「ほう、噂の野生猿か、どれ程かみてやるかグフフ」
「何時でも訓練場でお相手しますよ、猿ですので手加減できませんので
それでよけれがですが、ヒールをかけれますので痛いだけで済みすが」
「なに、俺に勝てる風な口を…」怒りに任せて柄に手を掛ける
「フランツ!そこ迄だ!」どすの効いた声が降って来る
「「父上」」従兄妹がハモる、奥から父親の太っちょバーションが登場した
「初めまして、マイケル・イムリー・ドラゴニアです」
「マイクか少し見ぬ間…、7~8年か、大きくなったな、それにその物腰
その風格、ジョージが誉める訳だ」フランツに視線を移し問う
「お前、本当にマイクと試合がしたいのか?」「はい」
「マイクは10歳だが、先日S級ランクをギルドから特別に貰ったぞ」
「どうせ、周りの者の手柄を奪ったのでしょ」
「なら痛い目を見るがいい、明日朝練兵場だ、マイクも良いな」
「「はい」」頷くと、顔付を柔和にして共に歩き出す
「リンダの元へ行くのであろう、仔細は秘書官に聞いた、お主に感謝じゃな」
リンダはベットで起きていた、傍に立つ医者が帝に伝える
「何処にも異状は御座いません、聞けばヒールの治療を受けたとの事で
普通に過ごしても問題無いと見立てます」
「そうか、ご苦労であった」下がる医者から視線が向く
「マイク、回復魔法が本当に使えるのか?」
「リフレッシュ」「お~納得だ、身体が軽くなった、傍に置きたいの~」
帝の視線を受けてリンダが、縮こまる様に話し出す
「お父様ご心配をかけました、いきなり壁がズレて挟まれて頭を打って
後は記憶が有りません、気付いたらここでした」
「メイド達の話だと1時間以上捜したそうだ、壁の中では見つかるまいて
マイクに感謝せよ」「父様、彼が従兄のマイク様ですの」互いに目礼をする
「それにしてもよく見つけたな、あそこは脱出通路で、秘書官以外内密故に
閉めた状態で人を呼び、騒がず隠し通した事は誉めておく、ロックの飾りを
迂闊にも外すとはのう…」娘の無事を見た帝は部屋を去る
「ねえ、貴方がコニーなの」いきなりの質問に、控えていたコニー
「申し遅れました、マイク様付きのメイドでコニーと申します、
姫様の部屋に私等がお邪魔して…」アンナが手で制す
「貴女に興味が有って、見掛けたから誘ったの」アンナの言葉だ
「フランツを見たでしょ、あれが王族の典型的な男の子よ、「ねえ」」
アンナとリンダがハモり笑い合う
「我儘坊主を躾けたメイドって、どんな娘かって興味が有ったの」
「エッ、我儘坊主って僕」「「うんうん」」頷かれる
「そうなのか、コニーにはそんな噂が」僕を躾けたか…傍に置いても…
コニーを交えて四人で、イムールでの冒険の話で会話が盛り上がり暮れた
早朝の訓練場だ、結構な人数が其々に鍛練している
「そこの指揮官さん、僕も混じって良いかな」
「知らない顔だな、何処の坊主だ?」
「フランツ王子に、イムールの猿と昨日言われたよ」
「ほう、君が噂の…、今日試合するとかだったか、なら許可しよう」
魔法で拡声して訓練場の全員に話しかける
「僕はイムリーのマイク、S級冒険者だ、ここに居る全員に告ぐ
隊長に許可を貰った、今から全員剣を持って僕と戦え、個人でも集団でも
囲んでも良い、子供と思って舐めるなよ」言葉が終わると走り出した
フランツと帝は訓練場の入り口で声を聴き、その光景を目の当たりにした。
一番近い兵士は声を聞き身構えるが、たかが子供S級等戯言と舐め切っていた
「来い!、遊びは向こうでやってろ、うお~~っ」
剣を打ち合わせた途端、数m飛ばされる、さらに間を詰めて気絶させられる。
その背後から、勇猛で知られる兵士が突っ込む
「もらった、偉そうに…グフッ」スルリと身を交わされ
背後から剣の腹で打たれへたり込む、子供の力では無い事を場の全員が知る
兵士も戦うのが仕事だ、直に数人がかりで囲み打ち取ろうとする
「囲め、囲い込め」「数人で討ち込め」「回り込め」
マイクは囲みを巧みに交わし、すり抜け打ち続ける、同士討ちをさせる様に動く
たたらを踏む相手を打ち、打ち合わせて吹き飛ばす。
「追え~」「回れ~」…十数分後には兵士は一人も立っていなかった
「エリアヒール」「リフレッシュ」淡い光で兵達のダメージと疲労が抜ける
隊長が駆け寄って来る「マイク王子、恐れ入りました」賞賛している
フランツは震えだした、あの状況で自分は一人目を倒せるだろうか?
二人目には完全に倒されている事は理解できる、乱戦に成り動きが追えない
何時どうなったか判らないが、倒して要る様は凄まじい。
手加減出来ぬと言ったが、刃を向けた相手はいない、回復魔法も使える
自分の様にハッタリや虚勢は張ってはいない、考えて見れば冒険者で見栄で
ランクを上げても死に直結するだけ、こいつは本物だ。
目の前で、兵士達に囲まれてニコニコ顔のマイク
この部隊にとってマイクは英雄だ、10歳の子が人の心を掴んだ瞬間を見た、
自分と同じで後継ぎに着けぬ、自力で切り開かねば、捨扶持で生きるだけで
将来も無く生きてゆく同じ境遇なのに、噂からしてこいつは何なのだ?
気付いた「僕はマイクが羨ましいのだと」
「父上、僕は今気づきました、自分の境遇に不満を持ち拗ねていたと
同じ境遇のマイク様が冒険者のS級と聞き、浅はかにも喧嘩を売り震えてます
本来ならここで性根を据えて、やり直すべきなのでしょうが、その自信が無く
父上のお許しが有れば、マイク様の取り巻きの一人に加えて貰う様に
お願いしたいのですが」
「知っておるか、S級は貴族扱いなのだぞ、王族とは言え子である身では
正式には当主が上だ、マイクは当主と弁えておるか?
分った好きにせよ、ただしマイクに迷惑を掛けたら覚悟せよ」
「帝、ジョージ殿の坊は強いですなー、我らの若い頃でも敵いませんぞ」
「ネルソンも無茶な許可だぞ、魔法もワイパーンに乗る事も封じてあれだしな」
「そうでしたな、この坊は噂ではワイパーン部隊も率いておりましたな
しかし、話のすり替えや煽り、狡猾な坊主が10歳とはアッハッハ」
「おい、あれ見ろ、苦虫ネルソンが高笑いだ、あの坊主強いだけじゃなさそう」
兵たちの小声の会話が交わされる
「マイク、今のを見ていてフランツは戦意喪失だ、故にお前の勝ちだ」
「そうですか、今朝は良い運動ができました」
「話が有る付いて来てくれ」頷き
「皆さん、ありがとう」手を振り城内へ向かう
「また来いよ、揉んでやる」「どっちがだよ「ワッハッハ」」
応接室で向かい合う、フランツが口火を切る
「マイク様、昨日は失礼な事をしました、お許しください」
「フランツ王子、王族が年下に様付けは止めてください、呼び捨てよろしく」
「フランツ、先ずは先程の自分の思いを伝えよ」帝の言葉で
後継ぎで無く、目標が無く、自分に甘え拗ねて同じ立場のマイクの生き様の
噂に嫉妬している事に気付いた事を、ポツリポツリと話し、低頭した姿勢で
「マイクの取り巻きの部下として、扱ってくれないだろうか、何かが見える
そんな気がして、君を見て居たいんだ、お願いします」
「条件は二つ、一つ目はワイパーンに騎乗する事、これが出来ないと
一緒に行動できない、メイドのコニーに出来るのだから無理とは言わないよね
二つ目、僕の取り巻きはギルドランクでA~Ⅽ級で自分の身は守れる
武術の鍛錬が嫌なら、狩や遠征は無理なんだけど、後は噂の通りかな」
「ギルドの依頼に野宿、宝探しに長期遠征とか聞いておるが」
「伯父上の聞いてる通りだね、宿とか城は少ないかな」
「贅沢もダラダラも出来ぬか、慣れるまできつそうだな」
「資金は如何しておる、ジョージからの小遣いか?」
「6歳頃から貰ってないよ、稼ぐ方法はね」
小遣いさえ貰わないと絶句し、驚き顔のフランツ
「今晩のパーテー用に、蟹買ってくれないかな、市民にもお裾分けできる量
白金貨30枚、ギルドに売れば3倍以上だけど、自分達の祝いも兼ねるからね
買って貰えたら闘技場で焼くけど」
「噂の蟹の浜焼きか!、二匹討伐だったとか…まさか、それか…」
「アハハ、僕の話が何処かへ消えそうだ、仲間に入れてください」ペコリ
「呼び捨ても殿も嫌だから、兄を捩ってフランツ兄でよろしくね」
「よし、フランツの門出の祝いだ、白金貨50枚!」「売った!」
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