第4話 お義姉ちゃん

秀樹は3秒黙った後、叫んだ。


「ええええええええええええええええええええええええええええええ!?!??」


看護師は言った。


「病院内ではお静かにお願いします!」


と叱られた。看護師が部屋を出ていくと秀樹は言った。


「お姉ちゃんってどういう事!?」

「どういう事も何もそのままの意味。ただ実の姉じゃなくて、義理だけどね。」

「義理?」

「私が3歳の時にお母さんとお義姉ちゃんのお父さんが再婚したの。最初は新しいお父さんに、お義姉ちゃんなんて慣れなかった。それはきっとお義姉ちゃんも同じだと思う。でもお義姉ちゃんは少しずつ私と話しかけてくれるようになって、最初は私も怖かったけど、話してるとなんだか明るい気持ちになってきていつの間にか距離が知人で行った。それから数年後にはもう本物の姉妹と言えるまでになれたの。

そうなってくるとお父さんお母さんも明るくなってきて、私もこれが新しい家族なんだって思えるようになってきた。

でも今から3年前に訳あってお父さんとお母さんが離婚しちゃってね。」

「えっ?」

「それから私はまたお母さんのところに、お義姉ちゃんはお父さんのところに分かれた。でもお義姉ちゃんは離れてからもずっと連絡を取ってくれて、私が寂しくならないように頻繁に会ってくれるんだ。今もそうだよ。

だから私はお義姉ちゃんが大好き!」


秀樹は少し深刻そうな顔をして聞いていた。


「そうだったんだ。ごめん、なんか、悪いことを聞いちゃって。。」


志絵里は笑顔で返した。


「うんん。当初は悲しかったけど今ではそうでもないよ。お母さんも悪かった体調が良くなってきたし、なによりお義姉ちゃんと今でも会えるから。」

「そっか。」


秀樹は少し安心した後、勇気を出して言った。


「あ、あの、全然話変わるんだけど、、」

「何?」

「その、俺、君のお義姉さんに助けられて、ちゃんとお礼がしたいんだ。

だからその、合わせてくれないかな?」


秀樹は断られる覚悟で言った。その後志絵里は言った。


「いいよ。」

「えっ、いいの??」

「うん!その方がお義姉ちゃんも嬉しいだろうし、秀樹君も一連の出来事にちゃんと向き合えるかなーって思うし。」

「あ、あの、ありがとう!」


秀樹は思わず頭を下げた。


「でも、どうして僕の事知らないふりしてるんだろう。」

「お義姉ちゃんは昔からよく人に助けたりしても、自分が助けたことを公言したりアピールしたりしないタイプなんだよ。」

「そうなの?」

「私の予想だけど、お義姉ちゃんはお礼をされるのが恥ずかしいんだよ。」

「は、恥ずかしい!?」

「うん、昔お義姉ちゃんがバッグを買ってくれたお返しに、服を買ってあげたんだけどその時恥ずかしそうに顔赤くしながら、受け取ってすぐ慌てて自分の部屋に閉じこもっちゃって」

「そ、そうなんだ。

じゃあ僕がなにかお礼をとかって、逆に良くないのかな。」

「そんなことないよ!お義姉ちゃん、あげた本人の前では恥ずかしそうにしてるけど、裏では凄く嬉しそうだったもん。あげた服ほぼ毎日来てくれてたし!」

「毎日はやりすぎな気が...」

「だから、最初は戸惑うかもしれないけどきっと悪いようにはならないよ!」

「だ、だといいんだけど.....」

「それじゃあ今度お義姉ちゃんがまたお見舞いに来てくれるから、その時来れる?」

「う、うん!」

「じゃあ明日の5時にこの病室で!」

「緊張するな。」


そういいつつも秀樹は少し楽しみだった。カレンが自分の事を知らないふりをした理由もわかった上に明日ちゃんとお礼を言えるのだから。


秀樹は今日のところは帰ることにした。


「じゃあ今日はありがとう。お大事に。」

「こちらこそ来てくれてありがとう。またね!」

「うん。」


秀樹は病室を去った。


「秀樹君、いい人だな~。

お義姉ちゃんも絶対仲のいい友達になれるよ!お義姉ちゃんは知らないだろうけどあの時の..........」


秀樹は家に帰り、緊張と不安で頭がいっぱいになった。


「ああ、どうしよう!行くとは言ったけどやっぱり怖いよ~!

今からでもキャンセル、いやいや!人としてどうなんだ、ちゃんとお礼をいなきゃ、そうだ。僕が会いたいって言ったんだ、今更怖がってどうする。・・・・・・・

あ~!!でもやっぱり怖いよー!!」


翌日

母が洗面所で珍しく顔の手入れをしてる秀樹を見て不思議そうに言った。


「ひ、ひーちゃんにも春が来たの!?」

「ち、違うよ!今からお礼を言いに行くんだ。」

「それってひーちゃんが言ってたひーちゃんを助けてくれた人?」

「うん、やっと居場所が分かったんだ。」

「本当に?」

「だから本当に居たんだって。」

「でもお医者さんは確かにひーちゃんを助けたのは病院の人だって」

「それが嘘なんだよ、」

「嘘!?」

「たぶん....」


身支度を終え秀樹は病院に向かった。

バスで移動中も緊張と不安で手が震えていた。


「だ、大丈夫。きっと大丈夫。・・・・・・ダメだー!!やっぱ無理ー!!」


そういいつつ病院へ到着した。病院内へ入ると秀樹は恐る恐る志絵里の病室へ入った。


「こ、こんにちは。」

「あ!秀樹君こんにちは!」

「あ、あの」


秀樹はカレンがまだ来ていないことに気づいた


「ごめんねー!お義姉ちゃん大学のレポートが長引いて今向かってるところだって。もうすぐ着くと思うんだけど。」

「そ、そうなんですね。お義姉さんはどこの大学に?」

「お義姉ちゃんは医療研究の製薬開発の大学に行ってるの」

「製薬?」

「お義姉ちゃんのお母さんは、病気で亡くなったの。当時は手術でも80%完治しないと言われてたの。それで手術をして失敗に終わったの。

でもその翌年、新たに開発された特効薬を服用することで手術の成功率を拡大に挙げる事が発表されて、あと1年早ければ助けられた悔しさともう同じ境遇の人を増やしたくない思いからお義姉ちゃんは製薬の事を研究してるの。」

「そうだったんだ。」


その時だった。


「ごめん、しえ!遅れちゃったー!」

「あっ!お義姉ちゃん!!」


カレンが病室に入ってきた。


「レポートが長引いちゃって、、って、貴方は。

あれー?あなたは誰ー?もしかしてしえの彼氏とかー?(棒読み)」


秀樹と志絵里はめちゃ戸惑った。


「ち、違うよ!!秀樹君が私の事を助けてくれた人だよ!」

「えっ、この子が?」

「ねー秀樹君!」

「う、うん。」


そうしてカレンはにこやかな表情で秀樹の方を見て言った。


「そうだったんだ、君がしえを助けてくれたんだね。

本当にありがとう。」

「い、いやいや、全然そんな事ッ!」


そのカレンの言葉は、本当に心からのお礼だった。


「あの、そ、その、僕の方こそ、カレンさんに助けられて。

僕の方こそ本当にありがとうございました。」


カレンは少し戸惑った様子で言った。


「あ、あの。あの時は、ごめんね!

私つい誤魔化すような事しちゃったけど、本当は嬉しかったの。ありがとうって言ってくれて。」

「えっ?」

「ね?お義姉ちゃんはただの恥ずかしがりやさんなの。」

「ちょっと、しえ!」

「えへへーごめんごめん。」


秀樹はその言葉を聞いて猛烈な安心感に見舞われた。


「ところでしえはいつ退院するの?」


そうカレンが聞くと志絵里は答えた。


「え?明日。」

「えっ!?早くない!?」

「なんかねー担当医さんが、私の体の回復速度が尋常じゃないって驚いててさー。

それで明日にはもう退院できるだろうって!」

「そうなんだ、それは良かったね。でも退院まではちゃんと安静にね!」

「うん、ありがとうお義姉ちゃん」

「それじゃあ今日はもう帰るね」

「うん、今日もありがとうお義姉ちゃん」

「それじゃあ僕も。」

「うん、秀樹君もありがとう!」

「そうだ!」


カレンは何かを思いついた。


「しえが退院したら、祝いにどこか遊びに行かない!?」

「えー!うんいくいく!」


秀樹が病室を出ようとしたその時だった。


「秀樹君も行かない?」

「えっ?ぼ、僕が!?」

「うん!」

「えっ、でも、僕は赤の他人だしそれに僕なんかお邪魔になるだろうし」

「そんなことないよ!それに赤の他人って、秀樹君はお義姉ちゃんに助けられ、私は秀樹君に助けられた。これはも運命の出会いとしか言えないよ!」


秀樹とカレンはそろえて言った。


「えっ、運命の出会い?....」


志絵里は自分が誤解を生む発言をしたことに気づいて慌てて言った。


「あっ!!変な意味じゃないからね!!!!」


カレンは答えた。


「しえの発言はともかく、普通に遊ぶくらいなら私は全然いいけど」

「ね?お義姉ちゃんもそう言ってることだし!」


秀樹は少し黙った後言った。


「そ、そのお二人がいいのでしたら...是非。」






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