第3話 無事でよかった
バスに乗って約2時間。秀樹が家の近くのバス停を通り過ごしたことに気づいたのはそれから26駅も通り過ぎた後だった。
その後秀樹は電子マネー残高不足を危惧して次の駅で降りた。気が付けば東京まで来ていた。
秀樹の住む猫田家は神奈川の多摩川近くのマンションであるため、東京には近い。
秀樹は電話で母に向かいに来てもらった。
母は車を運転しながら秀樹に話しかけていた。
「ひーちゃん?どうしてここまで来ちゃったの??」
落ち着いた表情で母は秀樹に問いかけたが秀樹は答える気分になれなかった。
「・・・・・」
「ひーちゃん、どうしちゃったの?
病院をやっと退院したと思ったら、今度は東京までバスで行って残高不足で迎えに来てほしいって。」
秀樹はぐうの音も出なかった。
「・・・・・」
「そういう年ごろなのよね。私もね、ひーちゃんくらいの頃は家でもしたことあったわね。それでよく親に怒られてたわ、私だってそういう時くらいあるわよー!って思ってた。でも親になって分かったわ。親が子心配するななんて、絶対に無理よ。
私はひーちゃんにもしもの事があったらって、ずっと考えてた。心配で心配で不安だった。」
母には秀樹にこの言葉が理解できることを期待していったわけではない。でも、秀樹には伝わっていた。なぜなら秀樹こそが常に不安を経験している。
「ごめんなさい。」
秀樹はカレンに言われたことで頭がいっぱいだったが、それでも母への申し訳なさは感じていた。
その後家に到着し、食事を済ませ風呂につかりながらまた考えていた。
秀樹はカレンを見つけられた事は嬉しかった。しかしカレンに言われたことが頭から離れてくれなかった。
「あの子は僕の事を忘れてしまったのかな、それとも。わざと、知らないふりをしてるのか?」
秀樹は同じことを考えながら反芻思考に陥っていた。
「そうだよな、勝手にカフェイン中毒になって、助けられて目が覚めたと思ったら、また気を失って、それで後からのこのこきてお礼を言ったって、そんなの自分勝手にもほどがあるよな」
一週間後
秀樹が自分の部屋でナインクラフトをやっていると母が部屋まで来ていった。
「ひーちゃん、病院から電話が。」冨
「えっ?」
秀樹は一階に降りてリビングにある受話器を耳に当てた。
「もしもし、」
すると、電話に出たのはこの前カレンの名前を教えてくれたあの医者だった。
「もしもし、冨杏市立総合病院、医師の石田と申します。先日はどうもありがとうございました。」
「あっ、その、いえたまたま居合せたというか、全然そんなこと。
あの、それで一体?」
「患者様が無事意識を取り戻して、患者様が是非猫田様に直接会ってお礼がしたいとおっしゃっていおりますので。」
「あ、そうなんですか、、いつ行けばいいでしょうか?」
「患者様は回復されたばかりなのであまり長時間面会するわけにはいきませんが、もしご都合がよろしければ、明日の午前中にでもいらしていただければと思いますがどうでしょう?」
「あ、はい。わかりました。」
翌日、秀樹は患者さんに会うために病院へ一人で向かった。
病院へ入るとき少しカレンの事を思い出した。
「あの子は僕の目が覚めるまで居てくれたのに、僕はこうして目が覚めてからだなんて。」
そう悲観しながらも病室へ入った。
「こ、こんにちは、猫田と申します。」
そうすると、患者さんは答えた。
「か、かぁんわいいいいいい!!!////」
秀樹は思いもよらぬ反応に驚きつつも、ちゃんと回復してよかったと感じていた。
「あ、あのー。」
「私は、有賀埼 志絵里!この度は助けていただいてありがとう!!」
「い、いえいえそんな、」
「それで君の名前は?」
「ぼ、僕は、猫田、秀樹って言います」
「秀樹君ってよんでいい?」
「は、はい」
「それにしても秀樹君って凄いよねー」
「えっ?」
「だって、私が倒れてるの見てとっさに心肺蘇生してくれたんでしょ?」
「えっ、あぁ~はい、まぁ」
秀樹は止むを得ないとは言え、公共の場で胸骨圧迫を行ったことを思い出し少し焦った。
「へぇ~、じゃあ触ったんだ~?」
「あっ、すいません!!で、でもしえりさんの命には代えられませんから。」
「ごめんごめん、冗談だよw」
「えぇー、、」
「でも本当にありがとう。」
「い、いえ、助けられて本当に良かったです。」
秀樹は一安心した。
「実は私、YouTuberなんだ。」
「えっ!?そ、そうなんですか?」
「うん。ピリアっていうチャンネル知ってる?」
「す、すいません、分からないです。」
「あーそっかそっかー、じゃあURL送るからNINE交換しよう!」
秀樹は初めて女子とのNINE交換に緊張するのであった。
「は、はい、、いいですよ、、」
秀樹は初女子とNINEを交換した。秀樹は志絵里のNINEのプロフィールの生年月日を見て驚いた。
「えっ?、あの、志絵里さん、中二なの!?」
「うん、そうだよー、秀樹君は?」
「ぼ、僕は高一」
「えっ?てっきり同い年かと思った....」
「僕背が低めだからね。」
「それじゃあお互いにタメ口で呼ぼうよ!年も近いことだし!」
「二年も違う気がするけど」
「いーの!」
秀樹は少し志絵里との会話が楽しく感じた。
「それじゃあ今日はありがとう!秀樹君。」
「うん、元気になってよかったよ。」
「ところで秀樹君はどうして病院にいたの?」
「えっ?」
「だって、秀樹君はもう退院したって聞いたし、どうしてあの日病院に居たのかなーって」
秀樹は少し黙った後に俯きながら答えた。
「僕も助けられたんだ、人に。」
「それって、秀樹君が入院した時?」
「うん。でも僕が目を覚ました時にはもういなくて、もう一度お礼がしくてずっと探してたんだ。その時に君が倒れてるのを見つけて。」
「そうなんだ。なんか運命感じるね、」
「ん?」
「それで、その人は見つかったの?」
「う、うん。一応見つけられたんだけど。よくわからないけど話しかけたら、」
一連の事を話した。
「そっか。それは悲しかったね。」
「僕嫌われちゃったのかも」
「そんなことないよ!ちゃんと話会えば分かるよ。」
「そうかな....」
「うん!だって、秀樹君凄く優しいよ!」
「えっ!?僕が!?ないないないよ!そんなこと!」
「うんん。優しいよ、だって私秀樹君のお蔭で今生きてるんだよ。秀樹君のお蔭でこうしてまだお話出来るんだよ。こんな可愛い子を助けられるのは優しい人だけだよ!」
「あ、あははは...。
いや、でも僕が心肺蘇生が出来たのは、僕が助けられたからなんだ。僕も同じような状況に出くわしたらカレンさんのように助けたいなって思って勉強したんだ。」
「カレン??」
「あっ、うん。僕を助けてくれた人。名前はわかったんだ。」
「フルネームは?」
「溝呂木カレンって言うんだって。」
志絵里は驚いて言った。
「溝呂木....カレン......。
もしかして、金髪のハーフ!?」
秀樹は目を丸くして言った。
「えっ!!?そうだけど、知ってるの!?」
志絵里は笑いながら言った。
「その子、私のお義姉ちゃん!」
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