第2話 夢か現実
「あの子を探さないと、まだお礼ちゃんと言えてなかったし、それにこの水筒も返さないと。」
そうして秀樹は退院をした。その後病院を去る前に勇気を出して自分の担当の医者に少女の事を尋ねたが、全く情報は得られなかった。
その翌日家に帰宅した秀樹は早速学校に行くことになった。
「それじゃあ行ってきます。」
秀樹の母は笑顔で送り迎えた。
「いってらっしゃーい!ファイト!!!」
秀樹は通学途中も緊張と不安を胸に学校まで向かった。
学校につくと担任の先生が秀樹の事を紹介した。
「えーそれでは、昨日猫田君は体調不調で来れなかったので今日は授業を休んでクラス全体で自己紹介だ」
クラス中が喜んだ。
「よっしゃー数学潰れたぜ!」とか「猫田サンキュー☆」って声が聞こえてきた。
秀樹は自分の為に取ってくれた自己紹介の時間もずっと少女の事を考えてた。
「見た感じまだ中学生くらい?それに多分外国の人。でも日本語が上手だったからハーフなのかも。そういえば倒れられたら息が続かないって言ってたような。。息っていえば心肺蘇生って具体的に何するんだ?」
秀樹はスマホで調べた。
「えっと、心肺蘇生は主に心臓マッサージや人工呼吸等が有効な手法である
・・・・・・・
心臓マッサージと人工呼吸、人工呼吸!?、息が続かないってまさか!?」
「こら猫田!授業中にスマホをいじるな!没収だ!!」
「はい..」
秀樹は先生にスマホを没収された。その後休み時間。
「ちょっとまてまて、人工呼吸って、、すれってつまり、それって、き、、、き、、、、キィッ!」
「すわってくださーい」
先生が休み時間の終わりを告げる。
さらに時は立ち昼休みになると体調が悪いと言って秀樹は早退した。少女を探すのが待ちきれなかったのだ。そうして秀樹は早速入院してた病院へ向かった。
「ついた....きっと見つける。」
秀樹は担当してくれた医者、看護師、同じ病室の患者に話を聞いた。
「すいません、金髪でツインテールで外国の女の子を見ませんでしたか?年は中学生くらいで...」
看護師さんは答えた。
「君、カフェインで倒れて入院してた子よね?ごめんだけど私には分からないわ」
秀樹は残念そうに答えた。
「は、はい。分かりました、ありがとうございます。」
その後秀樹は2時間聞き込みを続けた。中には見たかもしれないと答える人も一定数居たが、彼女を探す手掛かりとなる情報を手に入れることが出来なかった。
秀樹は病院のガーデンのベンチに座りながら独り言をしゃべっていた。
「どうして居なくなっちゃったんだろう、やっぱり僕が赤の他人だからか。一般的に人が命の危機にさらされていれば普通の人は誰でも助けるだろう。でも救急車が到着してしまえば、もうその人についていく必要はなくなる。でもあの子は赤の他人を助けるだけでなく、目が覚めるまで僕のそばにいてくれた。それに、この水筒。見るからに新しい、買ったばかりなのだろう。赤の他人の僕なんかの為にどうしてここまでしてくれるのかは分からないけど、僕は彼女にもう一度会って話したい。だって僕の命を救ってくれたのだから、このまま合わずじまいなんて後味が悪すぎる。」
秀樹が独り言を言っていると、ガーデンの中央に生えている白樺の木の下に倒れている人がいた。それは良く見ると同い年くらいのくらいの女の子だった。
秀樹は慌てて女の子の様子を確認した。
「えっと、こういう時は、、えーっと、、。落ち着け。大丈夫。こういう時はまず意識の確認。」
秀樹は女の子の肩をたたき意識があるかどうかを確認した。
「聞こえますか!?聞こえますか!?脈は、、、無いみたいだ。」
秀樹は大声で叫んで助けを呼んだ。
「すいません!!誰かいませんか!?人が倒れています!!」
その声を聞きつけた人が医者を呼びに行った、秀樹はその後心肺蘇生を試した。
「まずは胸骨圧迫、、でもこんなところで.....いや言ってる場合か!すいません失礼します!」
秀樹が胸骨圧迫を行っているうちに、看護師と医者がストレッチャーを走らせてくる
音が聞こえた。
「君!そこから離れて!」
医者にそう言われると秀樹はその場を離れた。そうして女の子がストレッチャーに乗ると医者たちは緊急事態だと判断し集中治療室へ運んだ。
その後秀樹は緊急治療室の前でじっと座って待ってた。秀樹は女の子がただ無事であることを願っていた。そして約40分後彼女の者が秀樹の前に現れて言った。
「君が彼女を助けてくれたのかい?」
「は、はい。それでその子は?」
「無事一命を取り留めました。」
それを聞いて秀樹は猛烈な不安から解放され、一息ついた。
「しかし一命は取り留めたもののまだ回復途中で油断はできないのでもう少しここに
いることにはなるかと思います。」
「そうですか。あの、本当に大丈夫でしょうか?」
「安心してください。出来る限りを尽くします。」
秀樹は自分が倒れた時の事を考えながら彼女への感謝の気持ちと彼女にもう一度会いたいと感じていた。
「あの、すいません?変なことを聞きますが。今人を探していて、この病院に最近来たはずなんです。」
医者の人は答えた。
「どんな特徴かな?」
「金髪のツインテールで多分外国の人で、年は中学生くらいだと、」
「あぁ..もしかして溝呂木さんかな?」
「えっ!知ってるんですか?」
「知ってるも何も昔ここで清掃のバイトをしてたんだよ、僕の医局前の廊下をよく掃除してたから覚えてるよ。」
「その人、どこにいるか分かりますか!?」
「いや、もうその子一か月前に辞めちゃったしどこに住んでるかまでは...」
「そうですか、」
「でもフルネームなら、確か、溝呂木、カレンって言ったかなー?」
「溝呂木、カレン.....?ありがとうございます!!!」
そういって秀樹はダッシュで帰った。
「やった!名前が分かった!!」
秀樹は居場所はわからなかったものの、名前を知れたことに大きな喜びを得た。
「溝呂木、カレンさん、か....。やっぱりハーフなのかも。でもどうやって探せばいいんだろう」
時刻は日没に近くなってきた。
「そろそろ帰らないとな。」
秀樹は疲れているためバスで帰ることにした。秀樹はバス停で待っていた、やがてバスが到着した。秀樹は疲れ果てながらもバスに乗った。
秀樹は席に座りながらずっと考えていた。
「あの子にまた会えるだろうか?、、明日は、見つかるといいな。」
そうして秀樹の家から2番目に近いバス停で降りる人がいた為バスが停車した。支払いが終わったのかバスの扉が開くと秀樹は声を上げた。
「あ、あの!!ちょっとまって!!!」
バスを降りようとしていたのはなんと、探していたあの子だった。
そうしてカレンは言った。
「えっ?あなたは、、誰?」
その言葉に動揺しつつも秀樹は答えた。
「僕はカフェイン中毒で倒れ君に助けられた、あの時は、その、本当にありがt..」
そう言いかけた時だった。
「ごめんなさい、ちょっと何言ってるのか分かりません。」
そういって彼女はバスを降りてしまった。
「ちょっとまっ!」
バスは再び走行した。秀樹はその言葉を受け入れられず、しばらくの間バスを乗り過ごした事に気づかなかった。
「やっぱり、夢、だったのか.....?いや、でも間違いなくあの子だった。特徴は間違いなく一致している。それなのにどうしてあんなことを、、僕は一体何のためにあの子を探しているんだ。」
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