僕は不安になりたくない!

@amagaeru36

第一章 君に会いたい

第1話 僕と不安

この世には遺伝子という物が存在する。

皆同じように親から生まれ、同じように育ち、同じように子孫を残し、皆同じように散っていく。そう、これが我々人間が繰り返してきたサイクルなのだ。


しかし同じように見えて皆一人ひとり違う要素を持って生まれてきている。

子は親から生まれ、その際にDNAを介して所々親の要素を持って生まれる。

ある人は人並外れた天才的な頭脳を持って生まれたり、ある人は高身長に生まれたり、またある人は他人と関わることを好み高いコミュニケーション力を持って生まれたりする。


これらは長所だが、もちろん短所だって遺伝する。

例えば、人よりも危機回避能力が高い代わりに日ごろから強い不安に襲われたり。他人から些細な悪口を言われただけで打ちのめされたり、世の中のきな臭い話に絶望し一日中恐怖に陥ったり。

そんな短所をすべて背負う少年がここにいる、そんな少年の物語だ。



僕は猫田秀樹、16歳。来月で高校1年生だ。

僕はいつも思っていることがある、いつになったらこの不安はなくなるのだろうと。

日常的に不安を感じる僕は些細な心配事にも大きく打ちのめされてしまう、俗にいう繊細さんと不安症が重なり合ってできた人間だ。

日常的にというのは、日常生活で色々な細かいことに不安になっているわけではなく、同じ不安が長期にわたってずっと続くことを言っているのだ。


僕が毎月通う精神科医によると僕は反芻思考を持っているらしく、同じ物事を脳の中でずっとぐるぐる考えすぎてしまう脳の特性だという。

半数志向の影響で大きな不安の場合、ゲームをしていても、本を読んでいても、アニメを見ていても、ずっとそのことが頭から離れない。


例えば自分の子供が行方不明になったとしよう。そうしたら親は「きっといつか見つかるだろう」と楽観的な見方が出来るだろうか?殆どの親にとっては不可能だ。

きっと不安で落ち着かなくなり、ゲームや映画で気を紛らわそうとしても無駄だろう。

僕はそれが日常なのだ、日々大きな不安が頭を離れず、寝ているときでさえストレスを感じ浅い眠りに悩まされる。日常的な不安とはそういう事だ。

「はぁ~、どうしてこんな体に生まれたんだろう、人生やり直したいな。今日はもう寝よう」


春先。

少し明るくなってくる時間帯、午前4時ごろ自分の部屋のベットに横たわる一人の少年はすでに目を覚ましていた、というか、眠れなかった。


「なんで朝まで眠れないんだよ!!!今日に限って、どうして今日なんだ!!」


何を隠そう、今日は人生初高校の入学式。彼はコミュ障のため中学時代の友達はゼロ、所々で学校を休むしまいだ。そんな少年が「高校では友達なんてできないだろうな」や「高校ではいじめにあって鬱になるかも」とか「そもそも新しい環境が怖い」とかを考えずにいられるとでも思うだろうか?


「うぅぅぅぅぅぅ(泣)」


時は立ち午前7時。

少年は一晩中不安にさいなまれ疲れ果てた為、気づけば眠りについていた。


「....ゃん、.......ーちゃん、ひーちゃん!!」


母親に起こされ少年はよだれを垂らしながら目を開けた。


「ぅえ?」


母は大声で怒鳴った。


「もう7時って言ってるでしょう!!!!!」

「ひ~!!ごめんなさい!!」

「何時まで寝てるの!?今日は入学式でしょ!ご飯は帰ってから!早くいくわよ!!」


秀樹は疲れ果てた声で返事をした。


「はい。。」


秀樹は新しい制服に着替えながら考える。


「どうしよう、入学式当日に寝坊とか脳機能してんのか僕!?」


勿論機能している、機能しているからこそ不安なのだ。


「でもひょっとして睡眠不足の影響で脳がマヒしてれば、不安も軽減されるのでは!?」


しかしそうもいかないのが人生である。

冨杏市(ふあんし)立高校体育館では新入生を迎える拍手が始まろうとしていた。

秀樹は体育館入口でならんでいる最中不安のあまり3度胃液を吐いた。


「新入生、入場」


司会のアナウンスが流れ体育館の扉が開く。秀樹は小声で言った。


「き、きたぞ....俺の墓場だ。」


そうして一人ずつ自分の席に向けて歩いてく。

秀樹は猛烈な不安と眠気に襲われながらもなんとか入学式を終え無事学校を出た。

入学式後午前12時30分。

母は車の前で秀樹に聞いた。


「それじゃあひーちゃん、私は買い物に寄るけどどうする?」

「その格好でか?僕は早く帰りたいから歩いて帰るよ」

「そう、それじゃあ気をつけなさい」

「うん」


そういって秀樹は一人で家まで帰り始めた。


「あぁ、入学式の不安は乗り越えたけどまた将来の不安が返ってきた」


そう、秀樹は不安が目の前に来ると一時的に他の不安は気にならなくなるがピークが過ぎると再び今までの不安にも襲われるのだ。


「寝むからコンビニによってエナドリを買おう」


秀樹は近くのコンビニによってエナジードリンクを買いに寄った。


「お会計230円です。」


店員に230円を渡して会計を終えてコンビニを出た。


「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ぱぁ~」


秀樹は喉が渇いていたためエナジードリンクを半分くらいまで一気に飲んだ。

それから家に向けて20分歩いていると秀樹の体調は徐々に悪化してきた。


「はぁ....はぁ.....はぁ.....どうしたんだろう、いつもよりなんか体が震える、それになんか、苦しい...」


それから家の近くまで来ているところで秀樹は嘔吐した。そのうえめまいまでしてくるようになりついには地面に座り込んだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、なんで、、」


走ったわけでもないのに秀樹の息は荒れていた。左腕につけていたスマートウォッチで心拍数を測った。


「168bpm!?!?!?」


平常時の平均BPMは60~90だ。秀樹はめまいと嘔吐を繰り返しその場で倒れこんで気を失った。


その後秀樹は目を覚ましたがさっき倒れていたところと違うことに気づいた。

その直後、やさしそうな若い女性の声が聞こえてきた。


「起きた?」

「えっ?、あの、僕、」

「ここは病院だよ」

「病院?」


そうしてちょっと怒っていった。


「君、カフェインの取りすぎだよ!!」

「ごめんなさい!って、どうして?....」

「君が倒れてた横に空になったエナジードリンクの缶が落ちてたのと、君の体が痙攣してる上拍脈がすごかったから急性カフェイン中毒になったんだって分かったの」

「あの、すいません、ご迷惑おかけして、、」

「ちょっと、そんなのいいからまず自分の心配は?」

「あ、えっと、僕は大丈夫なんでしょうか?」

「一応心拍は7、80あたりで安定してるし、まだ少し高いけど水を多く飲んでカフェインの排出を速めればおそらく大丈夫だと思うけど一応まだ安静にしててよね、また倒れられたら息が続かないよ...」

「息?」

「だって君一時不整脈で心配停止してたんだよ!本当にあぶなかったんだから!!」

「え、えええええええええええ!?それってつまり、死ぬかもってこと!?!?!?」

「そうだよ、私が見つけて心肺蘇生して救急に電話しなかったら大変だったんだから!。それからここに水筒おいておくからこれを定期的に飲むこと。」

「..................」

「これかは量に気を付けて、って、どうしたの?もしかして、また息が荒れてきた?」

「死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、」

「ちょっと、いや、もう大丈夫だっていって、ちょ、えっ!?」


秀樹は不安のあまりその場で倒れた。次に目を覚ますとまた同じ病室にいた。


「ひーちゃん、起きた?」

「ん......ん、えっ、母さん?」

「ひーちゃんカフェインの取りすぎで倒れたんだって?」

「う、うん、ごめん、心配かけて」

「本当よ!病院あなたが寝てるときどれだけ心配したか!」

「あっ、あの、僕を助けてくれた、金髪の子は?」

「金髪の子?」

「そう、ツインテールの」

「そんな子居なかったわよ?」

「えっ!?さっき僕のところにいたんだよ、それにその子が僕の事を助けてくれたんだよ」

「そうはいってもね、お医者さんは救急車を呼んだのは通りすがりの医者だって言ってたしきっと気を失って夢でも見てたのよ。」

「でも、」

「きっと疲れてるのよ、明日退院出来るから今日はゆっくり休みなさい。それにひーちゃん入学式も頑張っていったし、夜も寝れてなかったんでしょう?」

「う、うん」

「そんな中カフェインを沢山取ったら体調も崩すわよ。」

「そうだね。」

「それじゃあ私は帰るから、何かあったらいつでも連絡しなさい」

「うん。心配かけてごめん」


そうして秀樹の母はほっとして病室を去った。その後秀樹は寝ながら考えた。


「なんだったんだろう、あの子、本当に夢だったのか?そ、そうだよな。

夢だよね。僕があんな可愛い子に助けられるわけないか。」


すると秀樹の寝てるベットの横に何かあるのに気付いた。


「こ、これ、僕が気を失う前にあの子が置いてくれた水筒だ!でも母さんが老いてくれたのかもしれない、一応確認しておこう。」


秀樹は慌てて母に連絡した。


「もしもし、かあさん?」

「どうしたのひーちゃん?具合でも悪い?」

「病室の机に水筒おいてくれたのかあさん?」

「水筒?そんなのおいてないわよ、っていうかうち水筒なんてもってたかしら?」

「ありがとそれじゃあ」

「えっ?ひーちゃんそれだk....」


電話を切った。




「あの子は確かに居たんだ、僕の横に.......探さないと。」




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