第5話 「地元の友人とご飯」

そして次の日、今度は地元の友達(僕を含めて4人)と夜にご飯を食べに行く約束をしていた。しかし、その前に母方の祖父母の所へ挨拶に行き、談笑した。

夕方になり、準備をして家を出た。地元の友達とは、焼肉へ行った。みんな、変わっていなかった。もちろん、いい意味で。僕がダジャレを言うと隣の友人が腕で遮り、対角に座る友人がすっと話題を変えるという見事な連携プレーを見せた。ただ、僕の前に座る友人は、ダジャレの内容がよく分からなかったようでポカンとしていた。

そして何度かダジャレを繰り返すうち、対角に座る友人が分かっていない友人に対してダジャレの解説を始めたのだ。それは僕にとって苦痛だった。これほど虚しいことは無い。

その後も酒というガソリンが入った暴走車ぼくは止まらなかった。いや、たまに解説で鎮火された。

そしてしばらく経って、二件目の居酒屋へ向かった。ここでは友人がオススメだという日本酒、獺祭だっさいを飲んだ。フルーティな味わいで、飲みやすかった。しかし、トイレで鏡に映る顔は熟したリンゴのように真っ赤だった。ダッサイなぁ。

そして、トイレから戻り、お会計の際、みんなから集めたのだが、

「お金ちょうだい。投げたりするなよ。おっかねぇから笑」

「・・・」

「変なマネーもするなよ笑」

「おお〜」

僕はこいつらの融点がわからない。沸点では無く、融点でしかない所に虚しさを感じるが、それでもあのリアクションは融点としか言いようがない。


僕らは店を出た後、なんとなく歩き出し、カラオケでも行くか、という流れになった。僕らは取り留めも無い話をダラダラしつつ歩き続けた。

「いいな〜、彼女。」

そんな話をしてた時、友人が闇の中へ突如消えた。下を覗くと、道の横にある田んぼへ友人が落ちていた。

あまりの急展開に、驚いたものの、彼が無事だと分かると、僕ともう一人の友人は笑いが込み上げてきた。しかし、あとの一人は真剣に心配する眼差しを向けていたのが妙に印象に残っている。きっと、変わっていないように見えて、みんな着実に大人の階段を登っているのは確かな事実なのだろう。小さな風が吹いて、闇に沈む稲穂が微笑んだ気がした。


結局、僕らはカラオケまであと一歩の所で、今回は帰ることにした。


その日、帰った後はソファに寝そべり、ずっと吐き気と格闘していた。いや、乱闘と言った方が正しいだろう。

一番変わっていないのは、僕なのかもしれない。昔と変わらず限度を超えてしまうのは、まだ大人になりきれていない何よりの証に違いない。

気づけばソファの上で眠りに落ちていた。

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