第4話 「金沢へ」

三日目は朝遅くに起きて、父方の祖父母の家に行き、談笑した。

僕の創作と苔や庭園を好むのは、爺ちゃんの血なんだなと分かった。拾ってきた立派な木の根っこを、枯れた木に見立ててミニチュアサイズの庭園を造って、『晩秋』と名付けてあった作品はそれの根拠として申し分ないだろう。


そして四日目、朝早起きをして、金沢へ向かった。またしても母と二人でのデートである。母と出かけるのはよく親孝行だと言うが、一生彼女を紹介できそうにないことも踏まえると果たして本当に親孝行なのだろうかとたびたび疑問に思う。

金沢駅に着いて、立派な鼓門を眺めた後、まだ涼しいうちに兼六園を回ってしまおうと考えた。しかし、猛暑はそんな希望を打ち砕いた。僕は扇子を一時も放さず、ひたすら仰いでいた。今どきの子は片手扇風機らしいが、僕は扇子の方が好きだ。だって、センスあるじゃん。

少し涼しくなった気もするが、まだまだ猛暑は容赦ない。兼六園内の茶屋で一息ついて、小豆金時かき氷を頬張った。今まであまりかき氷を食べてこなかったが、今年はよく食べる機会もあり、ハマってきた。

そして、体内を十分に冷やした後、すぐそばにある21世紀美術館に向かった。正直、美術のことはよく分からない。そう思っていた。しかし見てみるといろいろ、自己解釈が浮かんでくる。解説の紙と照らし合わせてみると全く的外れなことを得意気に語った時もあったが、それで良い。人生もそんなもんだから。

その後、バスに乗ってひがし茶屋街へ向かい、昼食を食べた。僕の一番の好物はフグなのだが、まさかそれも乗った海鮮丼を食べられるとは、非常に幸せだった。フグは、なかなか回転寿司では見ないので、”不遇”な扱いを受けているようだが、私は愛そう。

ひがし茶屋街の風情ある街並みに満足した後、帰り際に金箔アイスを買った。何故か食べでみたくなったからだ。金箔は特に味はしなかった。無味無臭。思い出の中では少し甘かったような気もしたが、勝手に補正していたらしい。そんなことを考えていると、猛暑にやられ、溶けてきた。次々と溶けてゆくアイスは、油断をすると服にこぼれ落ちそうだった。なるほど。これこそ緊迫アイスだ。食べ終わった後、少し寒い気がした。

そして、僕と母のプチ旅行は終わりを告げた。


これが四日目。

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