第3話 「両親とのデート」

朝の6時、まだ眠りたい欲望と、訪れてみたい欲望が葛藤する中、なんとか準備を済ませて、車に乗った。運転はもちろん母である。僕も免許証は持っているものの、運転するには同乗者全員のヘルメットと胸部プロテクターを準備することから始めなければならない。

目的地は、平泉寺。苔の寺だ。学生が好んで行くにはなかなか渋い。自分でも思っている。ただ、もう精神的にかなり歳なので、もはや違和感はない。そして、身体的にも少し歳を感じる僕にはキツイ階段を少し登ると、神聖な空気に包まれた神社がそこに佇んでいた。また、敷地内の木々はどれもが高く、苔と大樹の調和が、一層神秘性を引き立たせていた。


朝早いこともあり、人が少ないうちに堪能した後、道の駅でラムネを買った。小さい頃よく近所のお祭りに行っていたが、ラムネは見たことがなく、人生で初めてだった。そのため、あんなに吹きこぼれるものだとは知る由もなかった。母よ、車の中で開けてしまって申し訳ない。


その後、家に戻った僕は仮眠を取った。この後、父と打ちっぱなしに行くためだ。僕は言うまでもなく下手くそだが、たまに飛ぶと気持ちいい。ダジャレと少し似ている気がする。


そして、時間になり、父と向かった。しかし案の定、今日も微妙な飛び具合だった。もしかして、力みすぎているのでは?ダジャレも受けようと思って言うよりも、さりげなく言った方がウケる時が多々あるし。そう思って脱力して打つと、今までとは異なり綺麗な曲線を描いた。

「おお。さっきよりよくなったやんけ。」

僕は満足気にクラブを置いて、ベンチに座った。

ゴルフ練習場から出た時、夕陽に照らされる稲穂がそよいだ。黄金色こがねいろに輝くそれは、よく登下校で通った通学路を彷彿とさせた。


ちょうどその日は花火大会があったようで、お目当てのラーメン屋は休日だったので、小さい頃によく行った天丼屋に入った。かき揚げ丼を頼んだが、途中で胃もたれして、最後の方は味覚が消えていた。かき揚げじゃなくて、お手上げだ。もう、いろんな意味でジジくさい。

また、この頃から少し、お腹が主張し始めた。


そんなこんなで二日目は幕を閉じた。

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