第2話「恩師との飲み」

今日は、夕方から恩師と飲みにいく。だが、僕は酒に弱く、疲れた体ではほろ酔い一缶で潰れるほどだ。急速な休息が必要だ。ほら、こんなくだらないことしか言えない。

朝ごはんを食べて寝て、昼ごはんを食べて寝て。気づけば15時になっていた。17時からの予定なので、時間がない。しかも、さすが田舎。1時間に一本だけしかないのだ。そして、先生を待たせるわけにはいかないので、16時頃発に乗って、1時間ほど駅前で時間を潰そうと考える。もう家を出るまで1時間もない。寝ぼけた頭で、最高速度で準備する。原動力は、恩師の笑顔。

なんとか間に合い、無事に着いた。しかし流石、田舎。特に時間を潰す場所もないので、懐かしい街をぶらついた。見慣れないビルが、建設途中らしく、街の中央で工事の音がする。町から街へ。ガコォン。僕の望んでいない改革の音が響いた。

しばらく歩いた後、よく行った本屋があったのでそこで時間を潰した。

そして、約束の10分前、店へ向かうと、見慣れた後ろ姿の人物がタバコを咥えている。

「先生、お久しぶりです。めちゃくちゃ早いですね。」

「おう、先に入ってればいいぞ。」

タバコは体に良くないのになぁ。そう思った後、はっと気づいた。もしかして一度もその店に入ったことのない僕への配慮で、待っていてくれたのではないか、と。

しかし、よく校舎の窓から、朝まだ誰もいない時間に「先生、またタバコ休憩ですか?」と呼びかけていたあの頃を思うと、真偽はどちらなのか不明だ。

そんなことを考えていると、すぐに先生も入って来た。

僕は、先生をご飯に誘ったものの、一対一できちんと話せるのだろうか。少しだけ、だがずっと不安だった。しかし、それと同じ、いや、それ以上の期待感があったことも否定できない。

そして、最初、話は空気があまり入っていないバスケットボールみたいな感じだった。そう、あまり弾まない。気まずいというより、なんだか夢見心地みたいな、そんな感覚だった。けれど、次第に酒が入ったこともあり、普通のバスケットボールくらいには弾むようになっていった。

そして、僕は先生の甘い誘惑に乗り、3%ででろでろになるのに、15%近い日本酒に人生初めて挑戦した。

「これ、喉に結構くるでな笑」

「マジっすか笑」

この忠告がなければ、今頃この文章は書けていなかっただろう。流石、先生。ありがたや。

いつも甘い酒ばかり好む僕にとって、それは未知の味だったが、先生の前だからだろう。

「あんまり無理すんなよ笑」

「意外に上手いっすね笑」

気づけば格好つけていた。時がたち、次第にグラスの中が減っていった。それは、先生との残り時間でもある。グラスを回して余韻に浸ってみる。なんだか、大人の仲間になった気がした。

「三杯目頼むけど、なんか飲むけ?」

「僕は大丈夫です。」

そう真っ赤な顔で答えた。

「じゃあ、シャインマスカット(酒)頼むかな。」

「僕はまだアルバイトですけどね笑」

「・・・お前、もっと面白いこと言えま笑」

僕の放ったバスケットボールは、ネットにかすることすらなく、堕ちていった。しかし、僕はめげずにリバウンドを取りに行く。

「先生はこれで、三杯。ぼくは惨敗。なんつって笑」

「出直してこい笑」

高校生の頃を思い出す、このやりとりが、空気感がやっぱり好きだ。

最後に少し残っている日本酒を飲み干した。

〆に越前おろしそばを食べて、福井に浸った後、店を出た。お会計は、先生の財力に甘えてしまった。(ごちそうさまです、先生。)

「先生、今日はありがとうございました!来年は、Aくんと3人で飲みましょう!」

さらっと来年の予約をしてみる。

「おう。楽しみにしとくわ!」

僕はスキップでもして帰ろうかと思った。


その日は帰った後、シャワーを浴びて妹とWiiをして寝た。次の日に予定があったが、久しぶりなので少し長めに楽しんだ。

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