【帰省】

空川陽樹

第1話 「我が家」

「次は、福井〜」

車内に静かに響いたアナウンスで、僕らは電車を降りた。

短くて、長い一旅を終えた僕らは、これから待つさらに長い旅の中で、再びそれぞれの旅路が交錯するまでの別れを告げた。駅から見える街は、暑い闇に包まれていた。

そして僕は、昔しばしば乗ったローカル線に乗り換えた。

それに揺られていると、通学に使っていたわけではなく、駅前に行く時ぐらいしか使っていなかったが、なぜか帰省の実感が湧いてきた。そして、旅の疲れも。おそらく独りになったという事実が、重くのしかかっているのだろう。

しばらくして、故郷の駅に着いた。降りたのは、改札へ向かう階段から1番遠い所だった。振り向くと、ゆっくりと過ぎ去っていく電車が、夜に溶けていった。重いキャリーバッグを抱えて、一歩一歩、階段を登って、そして下る。改札を抜けると、父の車があった。ガラガラガラと地面を転がるキャリーバッグは、重力が無いかのように滑らかに動いた。


半年ぶりの我が家。久しぶりだ、というほどでもない。が、シャワーヘッドの大きさは帰省するたびに違和感を感じる。そして、旅の疲れを流した後、僕は深い眠りについた。

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