仲良しな、ふたり**
「ホントにファミレスでいいの?」
気を取り直して聞けば、腹減った。
ぼそっとそれだけ主張して腕をきゅっと絡め直してくる。
別のとこ連れ込んでしまいたくなったが、俺も腹は減っていたので、当初の予定通りファミレスに入った。
席に座っても相変わらずのぶすっと表情。
注文もおざなりで、ドリンクバーに立つ気配もない。
変わりにオレンジジュースを持ってきてあげると、嬉しそうに目を輝かせる。
とって来て欲しかったんだね、甘えん坊さん。
それから二言三言会話して、無言。
食事中も無言で美味くも不味くもないハンバーグをもぐもぐと。
行きたいと言った口が、お仕事のように物を食う。
何に思い悩んでいるのか。
ドリアを口に運びつつ、俺も無言の咀嚼を続ける。
熱くて美味いけど味気ない。
カチリ、わざとスプーンを噛みしめる。
苦い味がする、歯も痛い。
赤司の様子がおかしいなって思ったのは一週間位前。
放課後、何の約束もなくたまたま偶然廊下で会った時。
目が合っていつもみたく軽い感じで声を掛けたら、目をそらされ逃げられたんだっけか。
あの時はへこんだな。
その後すぐ『気分悪くて無視して悪かった』っていう反省してますメールが来たから良かったけど。
でもあの日から変だ。
何があったんだろ。
触れば喜ぶしキスもさせてくれる、そいう関係だ。
勿論、その先も…そう言えば最近おあずけ食らってるな。
なんで?
俺のこと大好きで泣いちゃうくせに。
合コン行ったってばれた時泣いて暴れて物に当たり散らして、もっの凄い嫉妬心見せてくれたのに。
可愛いからもっかい見たいな、なんて俺思ってるのに。
考え事をしながら食事を済ませ会計を終える。
外は大雨で、人通りは少なくなっていた。
赤司の表情は変わらない。
考え事に答えは出ず、大雨で恋人はぶすくれ。
何か悪いことをしたのか俺が?
日頃の行いは良いはずなのに。
思わず今まで我慢していた溜息を吐く。
白い息が流れ出た。
温度そこまで下がってたのか。
なんだろ、なんか虚しい。
水溜まりを車が刎ねていった。
「末渡…」
低い枯れた声で久し振りに名前を呼ばれた。
振り向くと赤司が神妙な面持ちだった。
もの凄く気落ちしてて辛くて泣いちゃいそうな。
そんな顔をされたのは初めてで言葉に詰まった。
赤司は何を思ったのか俺の腕を引っ掴み、無言で歩き出す。
背は俺より少し小さいんだけど、すっごい腕力だ。
そういえば喧嘩強いだっけか。
パンチ力は握力に比例するとかなんとか。
本格的な不良だったことに今更気付く。
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