すえわたりとあかつかさ

狐照

仲良しな、ふたり*

赤司がぼそっと某チェーン店のファミレスに行って気晴らしがしたいと言った。

ファミレスがどう気晴らしになるのか不明だったけど、ここ最近なんだか気落ちしていたようだから、俺はふたつ返事で駅前に向かうバスに乗った。


車内では赤司は相変わらずの無言だ。

元々口数の多い方ではないけれど極端すぎる。

不気味で、でも俺からは何も聞けなかった。


一般的な部類分けをするんなら、俺は所謂優等生。

成績上位見た目そこそこ眼鏡草食男子風だ。

スカしてて嫌な奴、が定番の陰口だ。

好きに言え。


そして俺の隣で寝たふりを始めた不良は、赤司。

誰がどう見ても不良だ。

短く切り揃えた髪はオレンジに近い茶髪。

眉毛がほとんどなく目付きかなり悪し。

つねに不機嫌な面構えで、制服なんかはだらしなく着る。

学校に一人や二人いる、ワルの頭みたいなポジションに居る。


予報通り雨が降り出したようで、バスの車内が急に寒くなった。

開けすぎた襟をそっと正してやると、口元が恥ずかしがるように綻んだ。


そうそう、見た目はこんなんだけど、赤司の中身は照れ屋で甘えたがり。

ついでに寂しがりで嫉妬深い。

クラスが違う俺を赤司はいつも探している。

うろうろ校内。

見つければ早足、でも表情はぶすっとを崩さない。

二人っきりになれる場所まで俺を誘導しようと、ブレザーの端をとちょいっと引っ張る。

その行為が何度やられても可愛くて。


「…かーいーなぁ…」


昨日も今日もされたそれを思い出し、俺は思わず本音を洩らしてしまった。

三白眼がちょろっと空いて、ぎろっと威嚇してくる。

照れ隠しだ、こんなとこでそんなこと言うなっていう。

ほらね寝たふり。

一緒にバスや電車に乗ると何をしていいのか分からなくなって、赤司は寝たふりに逃げてしまう。

人がいると逃げるけど、二人っきりだと大胆に抱きついてくる。

恥ずかしくってどうしようもなくって、顔も耳の真っ赤にして好きだって告白してくれた赤司。

本当に可愛い生き物だ。

男でゴツゴツしてるけど可愛くって仕方がない。


しみじみして笑い返すと、小さい舌打ち照れ隠し。

深く寝入るふりするために赤司が椅子に座り直す。

俺と膝が当たりびくっとされる。

でも猫みたいにそっと擦り寄られ、目的地まで俺ははにかみが消せなかった。


駅に着くと雨足は強くなっていた。

俺の折りたたみ傘に赤司を入れると、恥ずかしいことすんなと拒絶される。

誰も変なんて思わないからおいでと囁いてみる。

赤司は耳を真っ赤にしてから辺りを見回し。

男同士で傘に入っている連中を何組か発見し、何を思ったのか腕をからめてきた。

なにこの愛らしい生き物。

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